買い物 3
「公爵様ですか?私、メイベルって言います。今日はお姉様のドレスを買いに来たんですかぁ?」
「そうだが…」
クロード様はメイベルにニコリともしない。
でもメイベルにとったらそんなことは気にならないのだろう。
「では、私の好みをお伝えしなくてはいけませんね」
「何故だ?」
「えっ、だってドレスを買って下さるのでしょう?」
わけがわからないという雰囲気のクロード様といつも通り私のドレスを取る予定に思われるメイベルは話が噛み合っていないようだった。
この場でメイベルの発言の意味がわかるのは私だけだろう。
「ドレスを買うのはラケルにだ。君ではない」
クロード様は私に、とハッキリ言って下さった。
いつも両親なら、私のドレスもメイベルが着ることを前提に買うことが多いからここ1年ほどはメイベルと買いに来ることはなかった。
いつものことと思いつつも、やはり自分のドレスを勝手に持っていかれるのは不愉快だったのだ。
でも、クロード様は私に、と言って下さった。
当たり前のことかもしれないが、私には嬉しい言葉だったのだ。
「メイベル、このドレスだけはあげませんよ。二人とも店で恥ずかしい真似は止めて下さいね」
そう言うとメイベルは、でもぉ、と食いつこうとするが、クロード様は二人を見据えるようにハッキリと言った。
「ラケルとの時間を邪魔しないでもらおう。…ラケル、行こうか」
「はい」
そして、クロード様が私の肩を引き寄せ奥のゲストルームへ連れて行ってくれた。