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買い物 2

「ラケル、こんなところまで男を連れて俺を追いかけて来ないでくれ」


ハロルド様の頭の中で私はどういう立ち位置なんだろう。

一度も追いかけたこともないのに、何故か婚約破棄され、ハロルド様にいつまでも縋る女という構図なのだろうか。


メイベルを見ると、顔を赤らめてポーッとクロード様を見ている。


「君はハロルドといったな。ラケルは君を追いかけて来たのではない。俺がラケルにドレスを買いに来たのだ。勘違いしないでくれないか」


クロード様は不快感を表し、ハロルド様を睨んでいた。

ちょっと怖い。


「たかが平民の騎士にこの店のドレスが買えるわけがないだろう。冷やかしは店の迷惑だぞ」


当たり前だ!

平民がこんな老舗の高級オートクチュールに来るわけがないでしょ!

メイベルと婚約してから益々残念さに磨きがかかってきているように見えるわ!


「何故俺が冷やかしに来なければならんのだ」


クロード様は頭を抑えるように冷たい顔のまま呆れていた。

フフンと鼻を鳴らすハロルド様を見ると婚約破棄されて心の底から良かったと思った。

こんな歪な傲慢な男は私には無理だ。


「クロード様、お名前をおっしゃった方がよろしいかと。私がご紹介しましょうか?」

「いや、自分で名乗ろう」


ハァーとクロード様も呆れるようなため息を吐いた。


「俺は平民ではなく、アラステア公爵家のクロード・アラステアだ。この店は我が家が以前から世話になっている店だ。冷やかしではない」

「冗談でも公爵家を騙るなんて笑えないぞ。ハハハ」

「ハロルド様、冗談ではありませんわ」


笑えないと言いながら、ハハハと笑うハロルド様はおかしな人そのものに見えた。


ハロルド様をチラリと見ながら、マダムはクロード様にシャンパンの準備が出来ましたのでゲストルームへどうぞ、と案内に来た。


「ゲストルーム?」


ハロルド様の笑い声が止まった。

おそらくハロルド様は奥のゲストルームに案内されたことがないのだろう。


「こちらのクロード様は公爵様のご嫡男様です。さぁ、クロード様、いつものゲストルームへ」


マダムは、今までの会話をしっかり聞いていたように、ハロルド様にそう言った。


「そ、そんなはずはっ!嘘だ!」

「何故俺が嘘をつく必要がある」


予想通りハロルド様は狼狽えていた。

さすがに公爵家と揉めることは不味いとわかっているようだ。

そして、クロード様が公爵家の方と何故すぐに信用しないのか。

もし万が一公爵家を騙れば、犯罪になるのに。


そして、ポーッとしていたメイベルがこの空気をかき消すように口を開いた。



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