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お茶をどうぞ

「ラケル、大丈夫か?」

「は、はい、ありがとうございます…」


ハロルド様に掴まれた腕が痛く手首を擦るように握っていると、クロード様は私の手を掴み、部屋に入って来た。


「あの男は何なんだ?」

「元婚約者ですね」


そう言いながら、私はクロード様に掴まれている手をじっと見ていた。

躊躇なく私の腕を掴んでいる手は、先ほどのハロルド様の乱暴な力と違う力強さがあった。

しかし、いつまで握っているのか…こんな私でも意外と照れるのですよ。


「婚約者がいたのか?まさか、俺のせいで揉めたのか?」


クロード様は、どうしようというような困った顔になってしまった。

全くクロード様のせいではない。


「元ですよ!元!婚約破棄をされましたから」

「…君が破棄をされたのか?」

「そうですよ」


驚くことですかね。

確かに良くあることではありませんが、そういうこともありますよ。


「…あの…座って話しませんか?」


そう言うと、私の腕を握っていることに初めて気付いたようになり、クロード様は慌ててしまった。


「すまないっ!つい!」


顔が耳まで赤くなりパッと手を離すクロード様は意外と可愛いかった。


「大丈夫ですよ。さぁ、座りましょう」


火照った顔を大きな筋ばった手で抑えながらクロード様は座り、ハロルド様の話を続けて聞いてきた。


「あの男はラケルに未練があるのか?」

「あっ、お茶をどうぞ」

「そうじゃない!…お茶は頂くが…」


花模様の陶器のティーポットから、お茶を淹れながら、どこから説明したものか悩んだ。

婚約破棄のことから言おうか、そうするとやはりメイベルのことも話さないといけない。

しかもハロルド様に未練があると思われていた。

浮気者呼ばわりをされたからかしら。

あれにはさすがにビックリですけど。


「何と言いましょうか…さっきの方はハロルド・ハーヴィという方なのですが…一言で言うと私から妹に乗り換えたのです」

「…妹に?」

「はい、妹が良いそうですよ」

「……」


クロード様はあきれたのか、言葉に詰まってしまった。


「あの…お茶をどうぞ。あっ、クッキーもありますよ」

「…頂く」


そして、私は婚約破棄の話をクロード様にゆっくりと話した。

クロード様はお茶をおかわりしながらもちゃんと聞いてくれていた。






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