勉強タイム その1
「ぐぅぐぅ・・・・・・」
「ニャーーーーーーーー!!!!」
「ぐふっ」
寝てる最中に俺は腹部に激痛を食らい、飛び上がるように起きた。
その正体は、布団前にぴょこっと顔を出しているマグロ丸だった。
「いてててててててて、おはよマグロ丸。起こしてくれたのか」
「ニャン!!!」
「起こすのはいいが、もっと手柔らかに頼むぞ」
「ニャーーーー」
マグロ丸は理解しうなずくと鈴の音を響かせ部屋から出て行った。
ん?俺なんでこんな時間に起きてるんだっけ?たしか今日は土曜日だから学校は休みだったはず・・・・・
あ・・・・・そうだ思い出した。今日は涼風さんとデート・・・もとい勉強をする予定だった。
いっけね。完全に忘れてた。時計を見ると9時3分・・・・やばい確か約束の日は9時30分だった。
俺はすぐさまに着替え、愛用の自転車を使い、全速力で待ち合わせ場所の『忠犬玉三郎』前に全速力でかけた。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・間に合った」
全速力でこいだ結果、何とか5分前で着くことができ、自転車を駐輪場に置き銅像前に待つのだけど約束の時間になっても来ないんだけど・・・
確か時間も場所も間違いなく、俺以外にもこの場所に待ち合わせをしてる人やここを通り過ぎている人はいるのだが一向にそれらしい人はいなかった。
少し不安を持ちながらも俺はガラケーを眺め待つことにする。
それから約束時間を20分過ぎてもくる気配はなかった。
「あれ~~~~~~~~~おかしいぞ~~~~~~」
いや、待て待て、確か指定された場所と時間ってここだよね。それなのにこないってどういうこと・・・・・・俺軽くすっぽかされた?
「おまたせ~~~~~~~~久東君」
そんな時涼風さんがバタバタと全速力で走りながらこっちに向かい息を思いっきり切らしておりしかも彼女はなぜか休日なのに制服を着ていた。
まぁ・・・・女子高生内では制服も私服の一種と思ってるから、特に違和感はないが、個人的に私服が見たかったな。
「はぁっはぁっ・・・・・はぁっ・・・・はあっマジでごめん。ちょっと寝坊してた。随分待ったよね」
「いやそうでもない・・・・・・・・俺も結構ギリギリで来たよ。なんせ昨日は自分なりで、なんとか努力して勉強を復習してたよ」
確かに勉強したが半分以上は思い出すことができたがもう片方は本当にこれ学生時代でやったのかと思うくらいわけが分からなかったけどな。
「そういう涼風さんは・・・・」
「うっ・・・・そこツッコんじゃう?勿論勉強した・・・・ヨ」
なんか声に覇気がなく目が泳いでるな・・・この感じだとやってないな。
「そ・・・・・・そんなことより、ほら勉強しに行こうよ」
「う・・・・・・・うん」
話を無理に切り上げ俺は自転車を回収した後彼女と歩き、昨日打ち合わせした、あの喫茶店に向かった。
「へぇ・・・・ここが久東君がバイトをするとこなんだ」
「まぁ、予定だけどね・・」
「結構オシャレじゃん!!!」
よし印象はいいぞ。そう思いながら俺は扉を開ける。
「いらっしゃいませーーーーーーー。あ、えーーーーーーと昨日バイトした人ですね?」
「はい、そうですけど」
「私同じバイトのめぐみでこの後君の先輩になるんだけどよろしくね」
「はい、よろしくお願いします。それと今日は・・・・」
「あ・・・・・・そのことなんだけど、今店長呼ぶね?」
「え・・・・・」
なんで店長呼ぶの?昨日みたいに普通に中に案内した方が良くないか。
そう思った時、店長がオネエ走りで音なく歩いてきた。
「あら、いらっしゃい坊や。まさか昨日の今日で来てくれるなんて嬉しいわ。よほど私に会いたかったのね」
「いや・・・・・そう言うわけじゃ・・・」
「あーーーーーーーーーーーーあ・・・・・・あなたは・・・」
「へ・・・・・涼風さんは・・」
店長を見るとさっきまで大人しくしてた涼風さんがビックリと反応し、店長の手を突然ガッツリと掴んでいた。
「あの・・・・もしかして、ScarletMonstersの元ギターのレンさんですよね。私大ファンなんです」
「ちょ・・・・・・・ちょ・・・・なによ突然手を握しめて気持ち悪いわね。店内であまり騒ぐのは止めてくれるかしら。ほら、坊やも外出るわよ」
な・・・・・・なんだ。涼風さんの興奮的な表情もそうだけど、店長がなに?スカ・・・・・なんとかのギター?どゆこと
疑問を感じるとめぐみさんは耳打ちする。
「不思議そうにしてるけど、君も二人を追ってみたら?」
そう言われ俺は二人に追いかけると、店長は店の裏路地に入り俺達をどこかに連れて行こうとしたのでその道中涼風さんに店長のことに聞くことにした。
「え・・・・・・・もしかしてスカモン知らないの?久東君も結構時代遅れだな~~~~~バンド界隈では結構有名で、夏フェスの常連だよ」
「知りません・・・」
「過去の話よ・・・」
店長がそう呟いた後に、涼風さんはその証拠に携帯で男性バンドが演奏してる画像を見せる。見るとそのスカモンは四人構成の男性グループなのだが、店長がどれなのか分からん。
「この人よ」
「え・・・・・この人?今と全然違うでしょ」
その指した人はというと今の店長とは正反対の金髪で半裸の荒っぽそうな見た目をした姿だった。
「よく見分けられたね・・・俺には別人に見えるけど」
「実はアタシ、一度見た顔は忘れないから・・・・この前、バンドハウスで出会ったホームレスのおじさんだって、うちの小学校時代の担任の先生だったことはマジビックリしたわ・・・」
「え・・・・・あの人ホームレスなの・・・・結構いい先生なのに」
「そこは大人の事情だから人生どうなるか分からないね・・・・・とにかく相手が覚えてなくてもアタシだけはその人がどんな人柄でどんな印象だったかちゃんと覚えれる・・・から」ボソボソ
「涼風さん・・・」
あれ・・・・なんか急に彼女の声のトーンが低く後半なにを言ってるか聞こえなかったぞ・・・
「ほら、なにしてんの二人共もう着いたわよ」
「は・・・・はい」
たどり着いた先は、少し離れた場所にある一軒のボロアパートで、中に入るとちゃぶ台しかない殺風景な部屋だった。
「え・・・・・ここって・・・」
「ここうちというより両親が管理するアパートで、学生時代私が借りた部屋なのよ。店の中で勉強やるのは迷惑だからここを自由に使いなさい。冷蔵庫に食材を置いてるから今日の昼頃恵ちゃんが来るからご飯作って貰いなさい」
「はぁ・・・・」
「それとほら、これカギよ。じゃあ私一度店に戻るから・・・・好きにしなさい。じゃあね」
カギを渡され、店で忙しいため店長はここから出ようとすると涼風さんに呼び止められる。
「あ・・・・・あのレンさん。ちょっといいですか?」
「なによ」
「あの・・・・もうバンド活動はしないのですか・・・もう一度ギターが・・・・聞きたいです」
「ごめんね・・・・私もう音楽には足を洗ったのよ。じゃあね」
そう言い捨てて出て行った。明らかに触れてはいけないことだったけど、それはさておきこの部屋では涼風さんと二人だ・・・・・
う・・・・・緊張するな。
「あははははははは、二人っきりだね」
「う・・・・・うん・・・・・どうしようやるか」
「そうだね・・・」
こうして俺達はそのままちゃぶ台前に座りお互いのカバンから教材を取り出し勉強することになった。
そこからは本格的に始まり俺は実質的に彼女に教わることになった。
「ほら、ここ間違ってるよ・・・・これはこう・・・」
「あ・・・・・・本当だ。ごめん・・・助かるよ」
「いいって、ほら一緒に頑張ろう。ファイト!!!」
このように少しずつであるが俺は励みになり集中でき、気づくと昼の一時になっていた。