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ルートB幻想世界

B,断る

・・・・・・・・・・・・・・




「ちょっと待ってよ。逃げ出すってどこに逃げるんだよ?」

「ただ好きな人が一緒ならどこでもいいよ。知り合いがまったく知らない遥か田舎町・・・・・・・ううん島でも、誰もいない未開の土地だっていい。久東君が一緒なら苦労はしないよ」

「・・・・・・・・・」

逃げだすか・・・・・現実的に考えれば計画性がなく、経済的にも安定しない。この先苦労するのは間違いないだろう。

そんなデメリットだらけの道はは絶対に成功しない。

虫のしらせかどうか分からないが、そんな後先のない未来に人生の帆を上げる訳にはいかない。







「・・・・・・・・・・ダメだよ」

「え?」

その発言に涼風さんはキョトンと間の抜けた顔をしている。予想外の発言をしてると思ってるのらしい。無論一周目以降の自分ならその茨の道を共存するつもりが、社会を知った俺には、例え愛する人の願いでも断る権利があるはずだ。



「逃げちゃだめだよ涼風さん。君は俺よりも優秀で出来る人なんだ。こんな低スペックな俺と付き合うよりもっと自分を磨いた方がいい。正直その方が未来は安泰だ」

「はぁ?何言ってんの久東君・・・・パパになにか言われたの?」

「言われてないよ。これは自分の意志だ」

「意志って・・・・なんなの?祐輔はアタシの事が嫌いなの!!!」

嫌いなわけがない。大好きだ。本当は君と一緒に歩みたい。

けど、俺達は大人なんだ。ロミオとジュリエットのようなドラマチックな逃避行は出来ないんだ。そんなので未来は潰したくない。

王道ではないラブストーリーだがこれが現実。俺達の恋愛はビターエンドがふさわしい。

今までこぼした涙を拭い、この気持ちをぶつける。




「君はなにも不自由がなく生きてるんだ。それだけで幸運だと思っていい。俺が知ってる人で過去二人、利き腕を壊して夢を断念した人がいるんだ。二人共夢は異なるが、まっすぐとそれを掴もうとしたが、とある悲劇によって利き腕が不随になって夢を諦めたんだ。その一人はご存じだよね?」

「レンさん・・・・」

それに俺は頷く。

ちなみにもう一人は一周目の時の涼風さん。君自身だ。




「そうだ。二人共不運な事に音楽人生は潰えたが今は別の目標を立てて楽しくやってるんだ。だから君はその分頑張らなくちゃいけないんだ」

といっても一周目の涼風さんは別の夢について聞いたことはなかったが絶対その涼風さんは幸せに暮らしてるはずだ。俺の事を忘れて・・・・






「がんばるって何を・・・・・アタシ達また会える保証なんてないんだよ」

「あるさ、涼風さんには音楽があるじゃないか。それでその方面で有名になればいい。君には音楽が最高に似合うからそれで世を輝かせてくれ」

「でも、ギターはパパに・・・・」

「ならどんな手を使っても取り戻してくれ。俺は君のその明るい笑顔と心地よい音楽に魅了されたんだ。もしそんな勇気がないのなら、俺が直接君に会いに行って無理やりギターを差し出すよ!!!!」

涼風さんの言葉をかき消すかのように俺は、思ったことを口にした。

その勢いで力をすべて使い果たしたか肩で息をするかのように思いっきり息を吐いた。

それを見たか涼風さんはポカーンとした顔をした後に口元を緩ませた。





「あはははははははは、なにそれ!!!!!会いに行くってそんなの遠回しに告白してるみたいじゃん」

「・・・・・・・・・ごめん」

恥ずかしくなり自然と彼女の目を逸らしてしまった。そのせいか涼風さんは自然にさっきのような不安な気持ちが消えていたように見えた。




「ふぅ・・・・・・そこまで言われちゃしょうがないな~~~~~一緒に逃げるのは諦めるよ。その代わりさっきの言葉は忘れないでね♪」

「うん・・・・・忘れないよ」

納得したか涼風さんは俺に手を差し伸べる。

どうやら彼女自身も逃避行よりも大事な目標を得たようだ。そんな彼女に少しでも支えるように手を掴もうとする。

しばらくの別れに、寂しくないように少しでも彼女の肌を合わせるかのように・・・・




ドクン!!!

「!!!!!」

「どしたの。祐輔?」

「いいや・・・・・・なんでもない」

な、なんだ。この感触は。今彼女の手を触れた途端この世のものとは思えない不快感を感じてしまった。

別に彼女に対して嫌いって意味ではない。

ただ、目の前にいる女の子が本当に涼風さんなのかと疑うくらい身体が拒否してしまうのだ。

冷静になれ久東祐輔。

今までいろんなことがあって心も身体も疲弊してるんだ。これも疲れが原因だ。

そう心の中に言い聞かせても結局手を繋がずにこの場を後にした。





その後俺は後片づけをキチンとし、墓地の出口である石段を降りようとする。

もうすぐ彼女と別れるんだなぁ。寂しく感じながらも辛さを見せずに前を向いて降りる、涼風さんはその後ろをついて行ってるが突然足を止める。

同時に急にくしゃみが出るくらい肌寒くなってきた。





「寒!!!そっか・・・・もうすぐ11月だからかもう少し厚着にしたほうが良かったかな?」

「ゆうすけ・・・・・」

「どうしたの涼風さん?」

「覚えてる。この場所」

「この場所ってこの石段の事?」

「うん」

なぜか涼風さんは、顔を俯かせ口調も今までと違ってボソボソと話していて若干聞き取りにくかった。





「この場所ってアタシが・・・・・・いいや朱里ちゃんが落ちた場所だよね。そしてそれを境に二度とギターが弾けなくなった」

「涼風さん。何言ってんだよ」

「実はゆうすけもそれは夢で見たんだよね。一周目の記憶を・・・」

「!!!!!」

何言ってんだよ涼風さん・・・・・・いや、それ以前に目の前にいるのは本当に涼風さんなのか。まるでなにかに乗り移ってるかのように顔を見せずに微動だにしなかった。

ちょっと待て・・・・・・今夢の事って言ったよな。それに一周目のことも。

さっきの手を触れた感触もそうだけど・・・・こいつは一体なんなんだ?





「ちょっと待てお前は一体・・・」

ドン!!!

彼女もとい異形の何かに触れるその前に、俺はそれに突き飛ばされた。

まるであの時の夢の時と同じ一周目の涼風さんが、縦宮に落とされるのを再現するかのように・・・



そしてその直後に世界は一変したかのように狂わしていた。

あれ?どうなってんだ?石段から落ちてったってのにまるで時が止まったかのようにう動かない。ずっとこの落とされたポーズの状態にになったままで動かない。が、なぜか360度周囲は見渡せるようにビジョンが映り出されている。

それだけじゃない。この街の風景や人がが段々と色を奪われたかのように次第にこの街の風景は灰色に染め上がり。この街の形はまるで塗装する前の模型のように形だけ整ったレプリカになっていた。

無論目の前の涼風さんもそう。色を奪われまるで人形のような形ない存在になっていた。




「涼風さん・・・・・・」

それだけでもショッキングなことだが、異変はさらに続き、俺の真後ろには白の世界から空間が捻じれ、そこから猫の目のような模様をした異空間が現れた。

そして俺の脳裏からさっきのぼそぼそ声が脳に伝わる。

だが、その声に俺は聞き覚えがある。




「ゆうすけ・・・・・答えを得たキミを元の世界に返そう」

「え・・・・・・・」

「もう、君は一人じゃない・・・・」

すると目の前の涼風さんの形をした人形からなにかが出てくる・・・・・・それは見間違えるはずがない一匹のデブ猫。一周目では寿命で亡くなったが二周目では健在だった唯一の相棒

その姿を見たせいか自然と涙がこぼれる





「マグロ丸・・・・・」

『ありがとうゆうすけ。短い間だったけど楽しかった。幸せに』

「ちょっ!!!」

まるで好物な刺身の切り身を食べたかのように、嬉しそうな顔をしたデブ猫。

俺は、それに手を差し伸べようとした瞬間異空間に飲まれ意識を失った。


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