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決着!!!

「やめろーーーーーーーーーーーーー」

「なにっ」

あのヒントを頼りに俺は全速力でビルにたどり着いた。中に入り、さっそく無人の中を探そうとした途端に上から男の怒気が響き渡った。その声を聞くと警戒よりも駆けつけることを優先し、気づいたときには、涼風さんを痛めつけている黒幕んの縦宮をタックルし、吹っ飛ばしていた。なにが起こったか分からない縦宮はしばらく動きを止めたのでそれよりも涼風さんを見る。





「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・ようやくたどり着いた」

思いっ切り息を吐き整える。さっきまで全力ダッシュで肺はぶち破れそうだがそんなのは涼風さんの現状に比べればマシだ。

涼風さんは顔中土埃まみれで頭部から血がポタポタと流れているが、彼女は俺を見るとから元気の状態で身体を震わせ、涙腺を流しながら俺の名前を呼んだ。







「久東君・・・・・どうしてここに」

「それはこっちのセリフだよ。なんでまどろっこしいクイズなんて考えたんだよ。アレがなきゃこんなに傷を負わなかったのに・・・」

「ははっ・・・・・どうやらヒントを出し過ぎたようだね。こうも軽く答えられたのならもっと難しい問題を考えればよかったよ。アタシらの業界の問題なら流石に答えられないよね?」

「ははっその時はマキさん達に協力してもらうよ・・・」

ズタボロながらもいつもの明るくちょいSな口調でからかってくる。とても危険な状態だけどこの関係がとても安心する。

ああ・・・・これが戻ってきたって感覚なのか。

ふと、無意識に涼風さんの手を握りる。その手は、さっきまでの恐怖のせいか異様に冷たく震えていた。

さらに、俺の突然な行動でに涼風さんは戸惑いを見せていた。俺も恥ずかしい気持ちでいっぱいだが今は逃げるのが優先だ。



「ちょっと、久東君!?」

「ごめん・・・・今はここに離れよう。ここに来る前に一応店長に内緒で明日ヶ原に連絡してあいつ単独でここに来るはずだ。明日ヶ原と一緒に君を連れて警察に向かうんだ。それで縦宮は終わりだ」

「終わりって・・・アッスーだけじゃだめだよ。レンさんは・・・」

「・・・・もちろん来る。俺の説教を添えてな」

当たり前だ。明日ヶ原だけじゃ無理だから店長にも連絡入れた。

ただ、恵さんのいいつけを無視して、さらに店長からの電話メールを無視したから、後で店長の鉄拳が来るのは間違いない。

でも、涼風さんを助けれるのは俺しかいないんだ。それで店長に殴られても安いもんだ。そう思いながら立ち去ると縦宮が憤怒を浮かべ起き上がり叫び、狂ったように身体をひねりながらこちらを睨む。







「この野郎。てめぇなに俺の邪魔してんだよ」

「なにが邪魔だよ。涼風さんはやっと自分の道を進んでんのにその道を断とうしてるやつに言われたくない。さぁ涼風さん行こう」

「させるかよぉぉ!!!」

速い。フラフラした動きは急に全速力で突っ走り俺・・・・・・いや涼風さんの手をかけようとする。そうはさせないように俺は身体を張って防御をする。



「邪魔だぁ!!!」

「ぐぁっ」

「久東君!!!!!」

縦宮の肘蹴りが俺の左わき腹に入る感触が走り横に転がった。幸い今朝の店長の特訓?の賜物なのかなんとか受け身を取ることができ早々立ち上がることができたが、縦宮は、相当苛立って頭に血を登りすぎたか目的の涼風さんをスルーし俺に迫った。

どうやらメインデッシュをたいあげる手始めに俺をいたぶる

怖い・・・・・怖い・・・・けど、今この場であいつを止められるのは俺だけなんだ。

縦宮は背が低いが、空手経験がある。無論なにも教わってない俺が勝てるはずなんてない。けど、俺に出来ることは、店長や明日ヶ原が来るまでこいつを足止めすることだ。覚悟を決し拳を握る。




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「しゃらくせぇ!!!」

「ぐっ」

殴ろうと瞬間、カウンターが入りうずくまる。さらに絶え間なくアッパーが来る。

立ち上がろうとしても縦宮の蹴りが入り、ボコボコにされていた。





「オラオラ最初の威勢はどうしたよ!!!クソ野郎が!!!」

「いやぁもう、止めてーーーーーーーーーー久東君死んじゃうよ!!!」

涼風さんの悲鳴がダメージを受けながらも耳に入る。駄目だ!!!こんなとこで立ち止まったら・・・・・早く逃げるんだ。

その為、声を出さなきゃ・・・・




「すず・・・・かぜさんはやく・・・・にげ・・・」

「うるせぇ!!!」

「ぐっ」

その最後の渾身の声も虚しく、無情な蹴りによって遮られ、意識がくらくらとする。

もう全身が針を刺すくらい痛いから立ち上がることができない・・・・

いや、立ち上がらなきゃいけないんだ。

ここであいつを止めなければ一周目と同じ末路になったしまう。

それはダメだ。この身が死に絶えようと君を護る。





「はやっ、もうくたばったか。まぁいい。好き勝手に叫んだから時期に誰か来るだろ。その前に朱里を拉致しなきゃな・・・おい、朱里行くぞ。裏に止めてある車まで来い!!!」

「ひぃぃ・・・・・・いや!!!久東君、久東君・・・・」

「うぜぇな。その男はもう虫の息だよ」

「待て・・・・・」

渾身の力で立ち上がる。その姿を見た縦宮は、若干驚きをみせたが、次第にめんどくさそうにしていた。

確かにあいつの視点では俺はウザそうに見えるだろう。

そうさ・・・・俺はしつこいんだ。好きな子と幸せな世界を過ごすために、この幻想的な世界を作った生粋の陰キャなんだから!!!!





「しつこんだよ。この虫けらぁ!!!!」

「久東君!!!!」

やつの拳が俺の前に来る。けど、いつもよりとても遅い。

そうか、これが走馬灯か・・・・なるほどこの世界での俺の役割は、涼風さんがバンド生活を断たれることを止めることなんだな。


そしてこの役割はもうすぐ達成する。俺の死で・・・・・



これから俺は無残な目に合い死ぬ覚悟を決した。・・・・・・・・・けど、痛みはない。

代りに見慣れた後ろ姿と、その周囲から漏れるイヤホン越しの音楽によって正気に戻った。

なんと間一髪、明日ヶ原が来て、俺の攻撃を防いでくれた。






「よく、粘ったくれたなぁ。クドウ後はまかせろぅ」

「遅いんだよ明日ヶ原」

まるでヒーロー番組の主人公みたいな登場。明日ヶ原は周囲を見渡すとすぐ理解し、相手の攻撃を次々とはじく。




「アッスー!!!!!」

「くっ・・・・テメェなんで!!!」

「せい!!!」

「くはっ!!!」

登場して刹那。縦宮の絶え間ない攻撃に隙ができると、縦宮に蹴りが入る。

縦宮はよろめき吐いていた。今の明日ヶ原は涼風さんの件で機嫌があまりにもよろしくなく、容赦なく痛めつけていた。

すげぇ。同じ空手の経験者なのにここまで差があるなんて・・・・・

明日ヶ原楓、やっぱり敵にしたら恐ろしい相手だ。

さっきまでイキった縦宮は徐々に弱みを見せる。




「ひぃ・・・・・・・もうやめろ楓。俺はこれから義兄になるんだぞ。それを板ぶっていいのかよ」

「悪いが、お前のようなカス野郎を兄と思ったことは無い。くたばれ!!!」

ガスッ!!!

「ぐぁぁぁぁぁっ」

怒りの籠った拳が空を切り縦宮を直撃しその衝撃で無様な叫び声を出しながら数十メートル吹っ飛ばされ、その場で起き上がる様子はなかった。

やつと比べて俺なんか前座どころか咬ませ犬に過ぎて霞むが、これで脅威は去った。胸をなでおろし、深呼吸する。




「久東君・・・・」

「涼風さん・・・」

状況が状況なのかお互いはボロボロだ。痛みはあるが、今でも彼女に抱き着きたい気分だ。弱った足で進もうとするが、その遥か先、先客は持っていかれた。






「朱里ぃ。大丈夫かぃ!!!!」

「ちょ・・・・・・・ちょっとアッスー。抱き着かないでよ。く・・・・・久東君がいるんだから」

「こんなにボロボロになって可哀そうだねぇ。大丈夫だあっちの虫けらは半越しにしておいた。朱里が望むなら全殺しにするけどねぇ」

「あははは・・・それは気持ちだけ受け取っておくよ。後、久東君もありがとう」

「なんだぃ。クドウもいたのかぃ。正直一緒にくたばっておけば良かったのにねぇ。それじゃ朱里行こうかぃ」

「くそ・・・・」

明日ヶ原は俺を見下した感じで涼風さんを出口に避難する。

涼風さんは俺の方に振る向いてなにか言いたそうだが、それを聞かずに強引に引っ張る。

サッサと縦宮の元から逃げるという気遣いをしてるがなんかモヤモヤするな。






「ふ・・・・・・・ふじゃけんじゃねぇぞ!!!!!」

「縦宮・・・・」

突然の怒号で俺達三人は振り向く。見ると縦宮は明日ヶ原の攻撃で口元が血まみれになてもなお、怒りで顔を真っ赤にさせ片手にどこか取り出したかナイフをとりだしていた。




「もう完全に切れたぜぇぇ。このさきどうなっても知らねぇ。お前らを皆殺しにしてやる」

「呆れたもんだねぇ。そんなんでわたしに勝てるとでも?」

「げへへへへへへへへ。強気はよせよ。確かにおめぇは強いが生身では武器を持った敵は勝てねぇ。それは一番わかってるだろ!!!もし抵抗するならおめぇの血まみれの姿を姉貴にさらしてやろうかぁ!!!」

怒号を混ぜナイフを振り回しながら叫んでいた。狂ってる。もうこいつになにをしても無駄、ただの獣だ。



「・・・・・・・・・・」くぃ

明日ヶ原は、無言で首を逸らしながら逃げろと言う合図を出していた。

ちょっと待て明日ヶ原。お前たった一人でこいつを止めるのかよ。

いくらヘタレの俺でもそれはできない。明日ヶ原に合わせ対等に前に出る。





「お前・・・・」

「勘違いするな。俺は涼風さんの彼氏なんだ。死んでも止める」

「ちょっ久東君?」

俺の言葉で明日ヶ原は呆れたようにため息を吐きながら背中をポンと叩かれた。

この瞬間初めて明日ヶ原に認められた感じがした。

そして明日ヶ原は耳元で『もう終わる』と漏らしていた。




「死ねぇオラァ!!!」

狂人になった縦宮は息をあらげながらこっちに飛び出そうとする・・・・がそれはならなかった。

なんと、縦宮のナイフを持った手は宙に上げられ、片腕はいつの間にか拘束されていた。

そう、いつの間にか店長が背後に忍んでいたのだ。




「店長!!!」

「うふっ待たせたわね。坊や。別に美味しいところを持ってきたわけじゃないわよ。一緒にここに来たら彼女が全速力で来るもんだから。あたしはその前に警察に連絡してから後に来たわよ。そこを勘違いしないで」

そう明日ヶ原に向けていった。まったくうちの知り合いは超人ばかりで嫌になるぜ。なんで日常会話をしながら狂人を止められるんだよ。





「てめぇ!!!なにもんだよ。放しやがれ!!!」

「あたし?あたしは貴方の憧れのギタリストだった人よ。と・・・・言っても今の貴方に名を名乗れないわ。キチンと奇麗な心を持って出直しなさい」

「くそぉ!!!!!!」

無様な雄叫びと共にパトカーのサイレンが響く。

これにてこの事件は幕を閉じた。

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