久々の友人からの電話
食事を終えた俺達は食器の片づけをし、恵さんは再び仕事場に戻った。涼風さんがここに来るまで一時間ちょい・・・・期待と不安が入れ混じってるが今の現状を見るとどちらかの感情を出そうにも出せなかった。なぜなら・・・・・
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、おもしれーーーーーーー」ゴロゴロ
「ふーーーーーーーん。高2の中間テストはここまでか・・・・なつかしいね」
「・・・・・・・・・・」
残った足内さん達は、ボーーーーっと俺の教材を眺めたり、テレビを見ながらゴロゴロしていた。まるで実家にいる感覚のように・・・・・・
正直いつまでいるんだと聞いたところ、涼風さんが来るギリギリの時間になったら帰ると言ってたんだけど、もし鉢合わせしたらどうするんだよ。
バンドの活動がなければよっぽど暇をしてる大学生なんだんだなとしみじみ思えてしまう。
まぁ俺の一周目の時の大学生活と比べたら大分楽しそうだけどね。
俺なんて大学生時代友達もいないしバイトもしないから半ニートの生活して虚しかったわ。アレ?思い出したら涙が出そうなのはなんでだろ?
「あり?ユウたん泣いてる・・・・・アカたんと別れたことがまた効いてるの?」よしよし
涙を流してるを見て白根さんは小さい手で優しく俺の頭をさすって励ましてくれた。
ふぅ・・・・・・正直他のDTボーイなら白根さんのようなロリ体系のミステリアス属性は間違いなく萌えるけど、生憎俺はその属性圏外だから嬉しい感情はあれど惚れることは無い。
「優しいですね。白根さんは・・・・・・バンド内もこんな立ち位置なんですか?」
「ん?よしよしのこと?・・・・・・・・うんプライベート内では信頼できる人なら良くやってる。スメラなんて、メンタル味噌っかすだからほぼ毎日」
「おい!!!!余計な事言うんじゃねよ!!!は・・・・・・・恥ずかしいだろ!!!」
怒ってる割に嬉しそうな顔をしてるんですけど・・・・もしかして足内さんって絵に描いたようなツンデレ?興味ないけど
「勿論アカたんにもやってる・・・・・ただ最近は会う機会が少ないからやってない。少し寂しい。メールにも電話にもでない。家に向かおうとしてもお手伝いさんに追い払われるし散々」
そうか・・・・ストーカ騒ぎだけではなく謹慎の事もあったからなかなか会えないんだったな。
WitchWigは新しいライブハウスで何回か活動してるけど、それは涼風さんが不在の時で全員揃っての活動は未だにない。だからまだ本領を発揮してないんだ。
「全く世話がかかる後輩だぜ」
「ははははははは、そうですね。ですけど俺がちゃんと涼風さんを元気付けさせますから!!!」
「どう交渉する?アカたんはグループ1すごく強情だよ」
「そんなのは分かってますよ。その為にこれがありますから」
そう言いながら数時間前に渡されたギターケースをちゃぶ台の上に大きく音を響かせ置いた。
「それ・・・・・レンさんのもらい物?」
「レンさんか・・・・・そういやあの人さっき出会ったけどオカマになったのが悲しかったな。まぁ、アタシの推しがオカマにならないよりマシだけどな。ガハハハ!!!」
「その一言、アカたんに聞かれたら絶縁宣言されるから控えて・・・あの子がレンさん好きだから」
「ああ、そうだったな。すまん。とにかくその中開けてみろよ。言っとくが朱里はそこらのギターじゃあんま惚れねぇぞ」
「レンさんの私物だからそんなことないと思う」
WitchWigは、スカモンのファンであって元ギタリストの店長がオカマってだけで苦い顔をしていた。まぁこれが一般的な感覚なんだと思うな。
それはともかく俺は緊張で唾を飲み込みケースを開ける。そこには随分埃が被っていた古めの黒のギターがあり、そのボディには店長が白のチョークで描いたと思われる五芒星のエンブレムが刻まれていた。
なんだ・・・・店長って結構中二臭いと思って鼻で笑ってしまったのだが、他の二人は俺のリアクションの正反対で口を呆然と開き震えていた。
「ちょ・・・・・マジかよ・・・・・これGibusonしかも1960年代の・・・・・」
「これは予想外かも・・・・・・レンさん太っ腹すぎ」
「え・・・・・・え・・・・・なんなんですか?それお高いものなん・・・・・って痛っ!!!」
なんか足内さんに理不尽にシバかれたんだけど!?
このギター相当高価なものなの?
「バ・・・・・・・・馬鹿野郎。これは現役時代にレンさんが使ってたヤツで、カスタムされたとはいえ売ったら50万・・・・・・・いや、蓮さんは界隈では生きる伝説として名をはせた有名人物だからマニアなら600万は取引されるらしいぞ」
「6・・・・・・・・600!!!!!」
そ・・・・・・そんな高価なものを普通の高校生バンドマンに渡していいものなのか。いやいやバイトの俺に頼んだだけで、渡すか?俺どんだけ店長に好かれてんだよ。
その礼に一緒に寝てと言われても一緒に寝ないよ。涼風さんに頼まれたらやるかもしれないけど
「アカたん金持ちだから600万ははした金だと思う」
「そ・・・・・・そういう問題ではないかと・・・」
「とにかくだ。どういう手でレンさんに頼み込んだんだからお前責任は取れよ」
責任ってどんな責任?涼風さんと復縁すること?それとも店長の愛人になること?
どっちなんだ?
ヤバいなんだか腹が痛くなってきた。
「おいどうしたんだお前?顔青いぞ」
いや・・・・・なんでもないです・・・」
プルルルルルルルルルルル
ひっ・・・・・・・
突然俺のポケットから携帯がバイブで震わしていた。えーーーーーーーと誰だ・・・・・・なんだ佐々波か。随分久しぶりだ。
あのプールのチケット以来まったく絡まなかった友人と久々の電話だった。どうしたんだろ?
「もしもし佐々波随分久しぶりだな」
「久東・・・・今暇か。今すぐ校舎裏に来い。結構大事な話だ」
「大事な話?そんなのは今ここでしろよ。こっちは今愛しの涼風さんと仲良くする為の勉強会が・・・・」
「その涼風の机をメチャクチャにした犯人らしいやつを見たという証言があったんだよ」
「なんだって!!!」
涼風さんを襲った犯人だって・・・・・一体誰なんだ。焦りで呼吸が乱れたので整えることにする。
時計を見ると涼風さんが来るまで時間がある。
確か店長はこの20分後に涼風さんを連れてくるんだったな。
なら、恵さん自転車でかっ飛ばしてすぐに戻ればギリ間に合うか。
「分かった。今すぐに行く待ってろ」
「ああ、またな」
電話を切った後、すぐさまに飛び出し部屋に出る。突然の行動で二人は呆然としていた。
「どこに行くつもり?」
「そうだぜ。もうすぐ朱里が来んだと?ならダチの誘いは断れよ」
「すみません。とても大事なことなのですぐに戻ります。だから勝手に帰ってください」
「おい!!!!お前」
足内さんの静止する声を無視をし、喫茶店に店長達にことの顛末を店に説明し、なんとか了承を貰ったのですぐに学校に向かう。




