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涼風さんに振られてあれから二日後の日曜日の早朝経った。

その当初は、何度叩きつけられた頭もそうだが、心身にも疲れる程ズタズタで両親にも心配されるほどの重傷で鏡で自分の顔を見ると、頭の傷と涙の後で顔が赤く染まるくらいの見事な重傷だった。その時は風呂も飯も食べずに二日間も部屋から出ず、テスト勉強もやる気が出ないほど心が空っぽだった。

母さんからドアを何度か叩かれて、多少ウザかったが昨日の夕方くらいからこのままではダメだと自覚するようになりようやく殻を破ることができた。


あの別れ方でいろいろ失うことになったけど、いつまでも塞いだままじゃ運命は変われない。涼風さんがどんな理由で秘密を隠してるかは分からないけど、俺は最後まで彼女を護ることに決めたんだ。

例え涼風さんから何度も軽蔑されてもだ・・・・・・・





そして現在、事前に考えた作戦の準備の為に朝からとある人に頼むことにした。

「どりゃああああ!!!!」

「甘いわよ・・・・坊や・・・・・・せい」

「ぐぇ!!!」

攻撃を仕掛けた時、その一撃を躱され後、いとも簡単に投げ飛ばされピーンボールのように、二、三回は寝た感覚が走り、壁に激突した。そしてその対戦相手である店長は呆れるようにため息を吐いて見下ろしてた。


この場所は、あの喫茶店の地下にある、かつてスカモンがバンドの練習に使っていた秘密の場所だ。その証拠に当時の面影を現すようにスカモンの所持品がそこら中に散らばっていた。

それにここはバンドの練習場であって防音システムも完備して上から聞こえる心配はなく文字通り秘密部屋のところで、店長の技を盗むつもりだった・・・・・なのに





「駄目ね。坊や貴方には戦いのセンスはないわ。これなら以前来てくれた友達の藤本君の方が鍛えがあいがあるわ」

「そんな店長。俺は少しでも強くならなきゃいけないんだ。その為に貴重なテスト勉強を割いてわざわざここに来たのにそれはないだろう」

内なる怒りを抑えながら店長に懇願する。

俺は、涼風さんを救うために、アンチ・・・・・もとい一周目で涼風さんを怪我をさせたと思われる犯人を戦えるように戦闘経験がある店長に頼み込んだ。


以前のように涼風さんと一緒に墓参りは出来ないが待ち伏せはできる。そこで涼風さんに近づいてくる怪しい人が手を加えそうになったら飛び出して戦うつもりだ。

だが、インドア派の俺は勿論戦闘経験がないから教えてが必要だった。




俺が知ってる戦闘センスがあるのは、他に明日ヶ原とゴリ本なのだが、明日ヶ原は涼風さんの警護があるし、あの件が理由で一緒に居る涼風さんは俺を見て不快がるだろう。ゴリ本も学生なので貴重な勉強を削がせるわけないからな。

そこで残った店長は大人で親切に教えてくれそうと思ったのに・・・・・・なんだよこれ基礎練習なんて一切ないし、すべて実践で一方的にやられてるだけじゃないか。

せめて武器を奪えるくらいの技を教えてくれたらいいのにあんまりだ。




「強くなる?馬鹿言ってんじゃないわよ。ワタシがアンタのふざけた頼むを引き受けたのは馬鹿げた考えを目を覚ませるためよ。今アンタテスト期間中でしょ。それなのに頭を怪我させてなにふざけたことしてんのよ!!!」

「いや全身は店長に・・・・」

「ここに来る前の話よ。怪我の理由も教えない。強くなる理由も教えない。それに・・・・・ここに来て朱里ちゃんの間になにがあったかも教えてくれない。そんな隠し事ばっかりする子にワタシの技術なんて教えてやるもんですか!!!!」

「あ・・・・・」

確かに店長の言う通りだ。自力で立ち上がることができたもののその事実を店長はおろか両親にさえ相談しなかったんだ。

今思えば父さんは俺の辛さを察してあえてなにも言わなくて、母さんも、放任主義なのにも関わらず俺にグイグイと接してくれてるんだ。

店長も荒療治だが俺に大切な事を教えてくれる。個性は違うけどみんな俺の事を強く心配してくれたんだ。




「店長・・・・・」グスッ

「ほら泣かないの坊や。なにがあったか詳しく説明しなさい」

・・・・・・・・・何やってんだ俺は。なんでこういうピンチの時は自分ばかり抱えてしまうんだ。一周目の自分なら殻に塞ぎこんでずっと悩んだままだったけど、今は違う。ちゃんと話せられる人がいるんだ。

涙を自力で拭き、二周目の事や悪夢の事を省いて本当の事を打ち明ける。






「・・・・・・・・・・・・・・これが全てです」

「・・・・・・・・・・・坊やこっち来なさい」

「はい?」

ビシッ!!!

店長は真面目に話を聞き言われた通り店長に近づいた。その時頭部からものすごい激痛を感じた。どうやら無言のチョップを食らったようで頭が割れそうだ。





「痛い!!!!!な・・・・・・・なにするんですか?店長!!!!」

「それはこっちのセリフよ!!!!なんでこんな大事な事をもっと早く言わなかったのよ!!!」

店長の今まで以上真剣な眼差しが俺に突き刺す。事件がどうこうよりもそんな大切な事を早く言わない俺に怒っているのだ。




「す・・・・・・・・すみません。もっと早く言うべきでした」

「それもそうだけどアンタ、その得体も知れない相手に挑んで下手して死んだらどうするのよ。たった一つの命をむやみに粗末をしてはいけないわ。それにそいつが確実に墓場に来る保証はあるの?」

「や・・・やっぱこの案は浅はか過ぎでしたか」

「浅はかどころかガバガバよ。今どきの小学生だってもっとまともな案を考えるわ。自分の身体を鏡で見なさい。ガリガリの身体よく犯人を一人で捕まえようと思ったわね」

「うぐ・・・・・・」

確かにこれは的確な正論だ。ぐうの音もでない。

冷静に考えたらよくこんな無鉄砲な策をよく考えたな。この無能な脳みそをかち割りたいくらい悔しい。

そんな不甲斐ない俺に店長は呆れてため息を吐いていた。




「本当なら無難に警察に言った方がと言いたいけど、警察は事件が起こらないのとそれに被害者の被害報告がなければ動かないよね。朱里ちゃんはそのことはなんでもないと言ってたわよね」

「はい。絶対なにか隠してると思います」

「根拠は?」

「・・・・・・・・・・そんなものはないです。俺と涼風さんは幼馴染ですからなんとなくです」

幼馴染と言ってもこの一か月間で接した数と比べたら明らかに後者が多く、その前はずっと涼風さんの後ろを見続けたストーカでしかない。





「分かった。アンタの話に乗るわ。一応後から知り合いの警察官に相談するからそれでいいわね」

「あ・・・・・・・・・ありがとうございます」

流石店長。頼りになる。これで少しはモヤモヤが晴れたわ。







「ただ、その前にやることはあるわ。朱里ちゃんと一度は会いなさい」

「会いなさいって・・・・・急にそんなこと・・・・」

「確かに別れた時にいきなり会う事はお互いは辛いことだわ。けど、仮にその犯人を捕まえて事件が解決してもお互いがすれ違うままになるのよ。それでいいの?」

「それは・・・・・駄目です」

「決まりね・・・・・と言っても坊やが電話を入れても頼りないし朱里ちゃんは会いたがらないからアタシが朱里ちゃんの携帯に電話をするわ。坊や番号とアドレスを教えなさい」

「は・・・・・・・はい」

俺達は一度地下から上がり外に出る。10月の寒気が色んな個所の傷跡にしみるのでとても染みる。

さっそく店長は教えた電話番号をかけ涼風さんと通話をする。





「・・・・・・・・・・・・もしもし朱里ちゃん・・・・・ワタシレンよ。一週間ぶりね・・・・・・・・」

店長は何事もなかったように平然と話して涼風さんと交渉する。店長は近くに俺がいることを悟られないように俺に無言の合図を促した後しばらく離れた場所に移した。

と言っても簡単に応じるであろうか・・・・

涼風さんがいくら店長のファンでも、俺と会うという事に応じてくれるのだろうか・・・・

しばらくすると通話を終え俺の方に向う。




「できたわ坊や。今日の二時ごろに朱里ちゃんがいつものあの部屋に来てくれるわよ」

「早っ!!!まだ五分も経ってないですよ」

俺の問いに店長はチッチッとドヤ顔をしながら指を振っていた。一体どんな魔法を使ったんだよ。




「簡単な事よ。ちょっと要らなくなったギターがあるから、友達との勉強を中断して一緒に行きましょうって言っただけわよ」

え・・・・・・・それだけ・・・・・・勿論俺と会う事も話したうえで涼風さんが自ら会ってくれるのか?




「なにその疑い深い顔は?ちゃんと坊やと会う事を知った上で来てくれるのよ」

「マジでか・・・・」

「そういうわけで、後からそのギターを持って来るから坊やは一度帰って勉強道具を取りに行きなさい」

「は・・・・・・・はい」

「返事はもっと大きく!!!!」

「はい店長!!!!」

「よし」

今までの暗さを晴らすくらいの晴れやかな声量で俺は目覚め大きく返事をし、急いで家に戻った。




なにはともあれ後数時間で涼風さんと会える。

緊張よりも決心が強く早く彼女に会いたくてしょうがなかった。




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