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偽りの気持ち

その日の放課後俺は、涼風さんから誰もいない屋上に連れられた。

涼風さんはその間無言で顔色を変えずに屋上に俺以外誰もいないと確認すると内側から鍵を閉めていた。

屋上か・・・・・そういや10年前は普通に屋上の解放はあったな。今は・・・・・嫌、正しくは一周目の死ぬ前の世界だと自殺やなんやらで屋上の解放は禁止されてる時代になったよな。



この学校も後数年もすれば屋上の解放がなくなると思えばとても悲しく感じる。

屋上から見える黄昏色に浮かぶ空に移るこの生まれ育った町の風景。この最高の景色を涼風さんと見えるのは最高だ。




「久東君・・・・・」

「あっ。ごめん。外の景色があまりにも奇麗だったからよそ見してしまったよ」

「目の前にあたしがいるのにそんなこと言えるんだね。君は」

「ご・・・・・・ごめんそう言う意味じゃないんだ」

「そう・・・・・」

涼風さんは何となく寂しそうな顔をし顔を俯いていた。やっぱさっきのセリフは失言だったか・・・なんとか励まさないと・・・




「す・・・・涼風さんそんなに落ち込まないでよ。らしくないよ」

「らしくないか・・・・・・・そうさせているのはどこの誰だか・・・・自分が知ってる癖に。なんで知らないふりしてんの。久東君」

「な・・・・・・なにを言ってるんだよ」

かつてないほどの冷たいセリフを出し涼風さんは顔を上げ、見つめる。

その顔はかつてないほどの人を見下すような・・・・軽蔑した顔だった。



「す・・・・・涼風さ・・」

「久東君、アタシの嫌いな性格覚えてる。うじうじしたり暗い人間が嫌いだって・・・・・君のせいでアタシもそれがうつっちゃったよ。ホント気持ち悪い」

「それ・・・・・どういう」

「とぼけないでよ。昨日リーダーのマキから聞いたよ。縦宮を使ってアタシをいろいろ調べようとしてたじゃないの?アレすっごく迷惑なんだけど!!!」

「え?」

「アタシさぁ、中間テストもそうだけどさ、これから新しいライブハウスの向けてのセッションをしてんのにこれ以上余計なことしないでくれる?」

突然の怒気で後ろからこけそうとなった。それくらい涼風さんは本気で怒っていた。

それに・・・・・なんで、迷惑って言ってるんだよ。まったく意味が分からない。




「余計な事?余計な事ってなんだよ」

「そんなの見て分からないの。今まで頭悪いと思ってたのにそこまで馬鹿だと思わなかったよ!!!!」

「な……何をいって・・・・」

今まで涼風さんに何度もちょっかいをかけられたりとかあった。けど、この暴言に近い言葉は心にきてしまう。

それが愛するものであれば余計に神経にくる。




「それもそうだけどさ。さっき、アッスーから聞いたよ。あたしの了承も得ずに勝手にアッスー達と勉強会することになったの?普通アタシに言うべきだよね」

「あ・・・・・あれは、勿論言うつもりだったさ。けど話そうとしたけど話聞いてくれなかったじゃん」

「それなら、アッスーに言う前にアタシに言うべきじゃない?アタシはただ祐輔と一緒にあのアパートで一緒に勉強したかったのに」

「あ・・・・・」

彼女の言う通り。その前に話すべきだった。涼風さんの事を思っての配慮なのに、一番大事な涼風さんの意見を聞かなかった。俺はなんて間抜けなんだ。






「ほかにもあるよ。昨日祐輔が早退して以降何度もメールをしたよ。なんで一度も連絡してくれなかったの!!!こっちは祐輔が倒れたことを誰よりも心配してくれたのに・・・・・学校にいた時も一言しか話してくれなかったじゃん!!!」

「それは・・・・・」

これも迂闊だった。メールを見るよりも自分の事しか考えてなかった。完全にこちらに非がある。





「それくらいなら頭を下げたら許してあげるよ。本当に許せないのは彼女がいる身なのにいろんな女の人と話してことだよ。昨日リーダーに奢ってくれたハンバーガーは美味しかったよね?そりゃアタシより美人に奢っていいムード漂わせたら美味しいに決まってるよね」

「・・・・・・・・・なんで、そんな事を言うんだよ。こっちは涼風さん。君を護る為にやったことなのに。うじうじするのが嫌い?そんなの完全にブーメランだ」

俺が必死に誰よりも考えてるのに・・・・・なんでそんな身勝手な事を言うんだよ。

こんなことは言うべきではないが、散々言わ続けブレーキが壊れた今、それを我慢する余裕がなく、ぶちまけた。




「こっちだって言わせてもらうよ。君だって隠し事みたいなことをして、どっちが陰気な態度を取ってるか分からないよ。今涼風さんが、マキさんのアンチに被害を受けてるのは分かってるんだよ。悩み事があるならせめて恋人の俺に相談してくれよ」

「はぁ、アンチ?なにそれ意味わからないんだけど!!!!こっちはそんなことされたこと一度もないんだけど。勝手な憶測を経てるの止めてくれないかな?それすっごくウザいんだけど!!!」

「なら、その右手はなんなんだよ。それ明らかにアンチのやつらにやられ・・・・・」

言おうとした矢先涼風さんは静かに包帯を取ってくれた。その傷は涼風さんが言う通り、火傷の傷だった。



「ほら、これが証拠。アタシの言ったこと信じられないの?最低だね・・・」

「そ・・・・・・・・・そんな。じゃ・・・・じゃああの机のいたずらはどう説明するんだよ」

「そんなの知らないよ。っていうか、さっきのこと普通に謝ることべきだよね?なんで謝らないの?」

「それは・・・・・」

本気で怒ってる姿で、俺はなにも反論もすることができず緊張でこわばってしまい、謝ろうとしても声がまったくでなかった。

恐怖心のあまり視界を下に向いてしまった。






「そのうじうじした姿・・・・・・・またあの時の久東君の戻ったね。あの姿見てるだけで気持ち悪い。というか、今までのシナリオを考えたのは久東君が考えたんじゃないの?

ほら、一ヶ月前のあの時、君は、らしくないのにクラス委員になろうとしたよね?その時、アタシの机にいたずら書きしたことも全て計画的に考えてるでしょ。すべてアタシを独り占めする為に」

まるで今までのことを否定するかのように見下し、鼻で笑いながらペラペラと喋っていた。



「ほら、久東君ってオタクでしょ。そういう漫画みたいなことをやってみれば女は落ちると勘違いしてるでしょ?アタシも実は最初から分かってたけど、傷ついたら申し訳ないと思ってわざと乗ったんだよ。アレ体感して普通にないわと思ったわ。あんなんで女を口説こうとしてるのと思ったら内心腹を抱えて笑ったよ。それくらいダサかった」

あれ?




「しかも、自分が滑ってるくせに、プール帰りにアタシからの嘘の告白をも乗ってくれて、お腹が壊れそうだったよ。あの時、アタシの友達が一緒に乗ってたの覚えてない?」

あれ?あれ?







「しかもさぁ、告白後の学校の日に、家に出向くのありえなくない?朝から見たくない顔を見て本当に最低の気分だった」

あれ?あれ?あれ?





「はっきり言うね。今までお前の悪乗りに付き合ったアタシも悪いけど、あのいたずら書きは許せない。どうせ、被害を受けてるアタシを励まそうとしていい雰囲気にもっていこうとした根端でしょ。それをしようと思ったら緊張しすぎて気絶して自爆してやんの。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。バーーーーーーカ。童貞がいっちょ前にカッコつけてるんじゃねぇよ。こっちはお前の事最初から好きでも何でもないんだよ。ただからかいがいがあるだけで悪乗りに付き合っただけなんだよ」



バチン!!!!

気づくと無意識に涼風さんを引っ叩いていた。馬鹿にされたことじゃない。これ以上見栄を張って嘘をつかせないように止めただけだ。

俺は小心者で今まで人を殴ったことはないけど、偽った感情をぶちまけるのが無性に腹が立ってしまうのだ。



叩かれた涼風さんはなにも反論することなくただ、その場所を押さえていた。








「なんだよ。涼風さんだって勝手な妄想をしてるじゃないか。そんな演技をしてまで俺を突き放して欲しかったのかよ。なにが気持ち悪いだよ?なにが悪ノリに付き合っただよ?人を貶して笑う行為なんてそんなの決して涼風さんらしくない。なら、」

「別れたらいい。そうだよね。それが言いたかったんだよね久東君。その方がお互い幸せになれると思うよ」

叩かれた顔を離し右頬が赤く腫れた状態でクスリと笑い右目から涙腺を流しながら優しく放った。


違う。違うんだ。別れたいって言おうとしたんじゃない。一緒に逃げようと言いかけたんだ。

かつて君が憧れた王子様の様に・・・・

その綺麗な顔を見ると俺も釣られて泣いてしまう。


けれどそれを言おうとしても、涼風さんは俺を通り過ぎ屋上の鍵を開けた。

この失恋が余計に秋風を冷たく痛感する。




「今から他人だね。久東君。今までアタシの彼女になってくれてありがとう」

「あああああああーーーーーー」

そう微笑みながら言い放つと静かに扉を閉めた。それと同時に膝が急激重くなり失意のどん底に叩き落とされ号泣した。




なんで・・・・・・・なんでこうなったんだ。

この二周目の世界でようやく俺のことを愛してくれたのに、なんで真実を言わずに別れるんだよ。

そこまで俺は信頼をしていないのかよ。





戻りたい。三周目があったら戻りたい。

万が一、三周目があると信じて足元のコンクリートに向かって額から血が出るまで何度も頭を打ち込んだ。



 それくらい今の過ちは巻き戻して欲しかった。



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