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WitchWigの真実

「・・・・・WitchWigの真実ってなんなんですか?」

「まぁ、落ち着けよ。これから話すからな」

しまった。興奮のあまり無意識に立ってしまった。

落ち着きを取り戻しコーヒーを飲み落ち着くことにした。




「その反応を見るからにどうやら朱里やマキ達は教えていないようだな。まったくあいつら、あれほど警戒しろと言ったのに・・・」

縦宮はそう言いながら煙草をふかし、そしてスマホでとあるの音楽グループの画像を見せる。それはどこかの男女の四人組バンドグループだった。少しファンキーな出で立ちの外国の集団だが、中には日本人らしいメンバーもいた。


俺はバンドというジャンルは疎くてそのグループは有名なのかどうか分からなかったが画像越しだが、そのグループにはなんとなく貫禄というものがあった。



「なんなんですか。この音楽グループは?」

「なんだ。知らないのか。Greatthebadグレイト・ザ・バッドというデスメタルバンドだ。米国でここ最近急激な成長を見せるグループだ。まぁ名前変える前の日本にいたころはそこそこ有名だったけどな」

縦宮はケラケラと笑うと次に、縦宮は財布を取り出し、一枚の写真を見せる。そこに映るのは、腕を組んだ縦宮とその隣には、さっきの四人組のバンドグループと見知らぬ短髪な金髪髪の女性が肩を組んでにこやかに笑っている集合写真だった。

その金髪の女性はそのメンバーと同じ衣装を着ていたので元メンバーだと思っていいのか・・・・

アレ?この女性どこかで見たような・・・

ふと縦宮に目を合わせると軽く頷いた。




「さすがに気がついたか。そこに映る女は、WitchWigのリーダーのマキで、こいつらの元メンバーなんだよ」

「なんだって・・・・・」

言われるとマキさんそのものだった。

けれどそれがなんの関係があるんだ?




「朱里か楓から聞いてるかも知れんが、朱里達が以前俺のライブハウスにいた頃、アンチが乱入して大騒ぎになった事件があるって聞いたことあるよな?」

「あ・・・・・ああ、さっき明日ヶ原から聞きましたよ。確かWitchWigのアンチってのがいるんですね。それが・・・・」

「そのアンチってのは、Greatthebadの・・・・・・というよりマキの過激なファンなんだよ」

「なんだって・・・」

衝撃の事実で震えが止まらなかった。

話によるとマキさんは幼少の頃から歌が上手いのだが、当時は人見知りのため人の前に出るのが苦手の内気の子だったらしいが、マキさんの両親と縦宮の父は仕事上での知り合いのようで自身が経営するあのライブハウスを紹介し、当時そこでは人気があまりなかったメンツ・・・・・つまりGreatthebadのメンバーを集めて活動したらしい。

無論当初のマキさんは人見知りが激しい為・・・・・・というより普通の小さい女の子でも近寄りがたい強面の集団にどう会話していいか分からなかったようだが、メンバーの温かさに触れて、徐々に打ち付けていてなんとか人前に出れるほど歌えるようになったという。しかも、縦宮父が事業の為客寄せした結果、当時のGreatthebadは他と比べて上手ではなかったがマキさんの可愛さと歌唱力に惚れ根強いファンが数年で徐々に増えたようだ。

だが、やはりファンが増えても現実はそれほどあまくなく、ヒット作は生まれなかった。

そんな時メンバーの一人が一度本場のアメリカに拠点を移し、一から技術を学ぼうと提案をしたが、マキさんはその誘いを断りグループを抜けたようだ。






「断った・・・・・なんでですか」

「朱里だよ・・・・当時中学生だったスカモンファンだった朱里が偶然マキと出会いセッションを組むようになったんだよ。共通する好みのアーティストがいたお陰であいつと時間が増え、他のメンツを増やしマキはもう一つのバンドを作ってしまったんだ。それがWitchWigだ。この界隈では別々のバンドに入って活動するのはよくあることだが、マキは朱里のなにかに惚れ自分の為に作ってくれたバンドグループよりも朱里がいたグループを優先してしまったんだ。その結果、なにも知らない当時のGreatthebadのファンからは期待から朱里と裏切ったマキへの憎しみへと変わったんだ。それがあの乱入事件の正体だ」

その真実を聞いて空いた口が塞がらなかった。俺が知らない間にそんなことが起こってるなんて・・・




「いやいやいや、ちょっと待ってくれよ・・・・確か聞いた話だと涼風さんのグループを作ったのは、アンタだったはずだ。なんでそれが涼風さんに矛先を向けるんだよ」

「それは朱里が言ったのか。ならそれは勘違いだな。確かに俺があいつらを集めたのだが、グループ作りを提案しマキを引き抜いたのは紛れもない朱里だ」

涼風さんがマキさんを引き抜いただと?何を言ってるんだこの男は・・・

それに、一人のバンドマンが別のグループに移っただけで怒るものなのか・・・・





「なんだ?たかがそれだけのことで恨まれることはないと思ってるだろう?それは大きな勘違いだ。歌や音楽には人を勇気付ける不思議な力があるんだ。確かにマキのファンになった人間は殆ど俺の親父が呼び寄せたものだ。だが、中には生きるのを絶望し死を望んでる人間がいたりする。けど、マキの美声とGreatthebadの音楽性が持つ力によって生きる気力を取り戻した人間がいる。それくらい音楽は素晴らしいんだ。その経験はお前さんにもあるだろう」

「・・・・・・・・・」

ぐ・・・・・確かに俺も、一周目の世界では今まで辛かったことは何度かあった。けど、頭の中に眠る涼風さんの演奏と歌をカセットのように思い出しながら脳内に響かせた。そのお陰かもしれないが俺は何度も救われた。縦宮の言ってることはあながち間違ってなかったんだ。




「話を戻していいですか。こんなの憶測じゃないですか。そんな証拠はないはずだ」

「ああ、憶測だ。実際あれ以降あいつらの目立った動きはない」

「なら・・・・」

「けど、陰でなにかされ、それが今も続いてるとしたら・・・・」

その一言になにか引っかかって寒気がした。なんだ・・・・・俺はなにか見落としてるのか・・・・今まで怒った出来事を振り返ってても数時間前に気絶しあの悪夢がトラウマになった影響か記憶が混濁しなかなか思いだせない。

俺は強く頭を抱えた。




「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・」

「どうした・・・・・大丈夫か」

「いや・・・・・平気だ。それよりも続きを・・・」

「ああそうだな。実はマキは数か月前に自転車にぶつかりそうになって軽い怪我をしたんだ」

な・・・・・・・なんだって、あのマキさんが事故に・・・・

見た感じそんな風に見えなかったけど。




「犯人は勿論かつてのグループのファンだ。まぁそいつはこの後警察に傷害の罪で御用になったんだよ。知り合いの警察官のつてで聞いた話だとその犯行動機がなんでも今いるグループとのセッションが非常にイライラしたってのが理由だそうだ。まぁマキは軽傷で仕事にもバンドにも一切の支障がなかってけどな」

「それが、涼風さんにもあるってのか?」

「無論だ。朱里の性格ならなりやすいと思う。あいつはムードメーカーで好きでもない人間でさえ積極的に話しかけるお人よしだ。そういうタイプは、大嫌いな人間がいるんだよ」


ここで涼風さんでの学校の評判を思い出す。彼女は周囲から慕われているが、中にはそういう積極的な行動を嫌い陰で悪口を言う人もいた。

それくらい好き嫌いが分かれるタイプなんだ。




「なぁ、お前彼氏なら、少しなにか手掛かりはないのかよ」

「そ・・・・・そんなこと言ったて付き合ってまだ期間が短いし、仮になにかあったて涼風さんなにも言ってくれな・・・・・・・・」

「本当か?見落としたりしてないだろうな・・・」

こっちに迫ろうと言わんバリに縦宮の顔は真剣だ。そう言われても今までの涼風さんに違和感なんて・・・・・・・・





そう思ったけど心の内にどことなく違和感があった。今朝の涼風さんの右手に包帯が巻かれてるとこだ。本人はお湯での火傷と言ってたけど包帯を外してないから分からない。

他にもある。涼風さんの下駄箱によくバンド関係のファンレターが送られているけど実はその中にもし脅迫文が紛れていたら・・・・・・・・考えただけでゾッとする。

俺の焦った顔を見て縦宮はなにかを察したようにさらに新しいタバコをふかしていた。

その様子はとても冷静だった。一見他人ごとのような態度に見えるけど、目は真剣な眼差しだ。冷静に事を考えてるんだ。





「・・・・・・・・その顔を見るからに気掛かりがあるようだな」

「あ・・・・・・・ああ涼風さんに電話しなきゃ・・・」

「やめとけ。今まではぐかされたんだから今回も同じ態度をとってくる。少し落ち着け」

そうだ・・・・・涼風さんは常に明るくて落ち込むところなんて見せない。けどそれが仇となったんだ。その笑顔の内側はきっと傷付いてるはずだ。

くそっ彼氏なのになんでそんなこと気づかないんだよ。間抜け!!!!!







「はぁ・・・・朱里がバンドを辞めればあいつら納得するのかな・・・」

「は?」

「いや・・・・・・なんでもない忘れてくれ。ただの妄想だ。ほら、よく考えろ。あいつらはマキを引き抜いた朱里を憎んでる。なら朱里が一度バンドから足を洗えばマキは居場所がなくなりGreatthebadに戻るかもしれないなんて・・・・・・・なんで怒ってるんだよ」

当たり前だ。そんなご都合主義で戻るわけないだろ!!!こんな時になに言ってんだ。この浮気下種野郎。



「冗談だって、機嫌を戻せよ~~~~~代わりにいい女紹介してやるからよ相棒~~~~」

「誰が相棒だ!!!!言っとくけどアンタの疑いは晴れてないし、涼風さんにちょっかい出すことは許さないからな!!」

こいつの空気を読めない態度で俺はコーヒー代をテーブルに置き帰った。



けど、店に出る前に縦宮に無理やり捕まえられ、名刺を強引に受け取ってしまった。

改めてだけどこの男苦手だわ~~~~~~~~

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