怒りを抑えて
「じゃあ・・・・花お前何を頼むよ?」
「あたしはホットコーヒーの無糖でいいよ。そっちのお兄さんはなにがいい?」
「同じのでいい・・・・・・です」ギロ・・・
涼風さんの前いたライブハウスのオーナーの縦宮と偶然再会した俺は、奴に誘われ最寄りのファミレスでなぜか付き添いの金髪の派手な女友達と三人で話すことになった。
その女性の人は、見るからに遊んでそうな身なりをしていて、初対面の俺に対してならなしくスマホを片手に髪をいじりながら暇そうにしていた。
これは明らかに縦宮の愛人と思われる女性だ。全く婚約者もいるのになんてやつだ。こんなのが以前涼風さんにちょっかいかけたと思うと腹立ってしょうがない。
「ん?どうしたんだよ。あ・・・・・・もしかしてあの時のことで俺はまだ怒ってると思ってるのか?生憎俺はそれくらいの事は気にしてないぞ。勿論朱里のこともな・・・」
「ねぇ、朱里って誰・・・・・・縦ちゃん」
「あとで教えるから黙ってくれないか」
「感じ悪いね・・・・今日の縦ちゃん」
くそ・・・・こいつと・・・・・・その隣の女が喋る度にイライラするな・・・・
冷静だ。クールになれ久東祐輔。
怒りたい気持ちはあるが現状なんの証拠もない相手を疑ってはダメだ。
それに相手は空手の経験者らしいから怒らすのはまずい。
とりあえず、情報が執拗だから、縦宮に涼風さんと付き合ってる事と今日涼風さんの机にいたずらされたことを説明する。
女の方は興味ない話なのでスマホをいじってたが縦宮の方は意外にも静かに聞いてくれた。
「は・・・嘘だろ・・・・・朱里がか。ちっ・・・マジかよ!!!!一体どこの野郎がやりやがったんだよ!!!」
「ちょ・・・・!!!縦ちゃんなんなの?ちょっと静かにしなよ」
「わりぃわりぃ。気にすんな」
意外にも本人は驚いた顔をし、テーブルを音を立てて腹を立たせていた。
あれ?アンタじゃないのかよ・・・・
「ん?どうしたんだよお前。なんでそんなに驚いてるんだよ?」
「い・・・・・・いや、俺的にはアンタがやったんじゃないかな・・・と思ってさ」
「は!!!!!馬鹿かよ。なんで俺がそんなことするんだよ。頭湧いてるんじゃないのかよ!!!」
「いや・・・・・だってアンタ・・・何度も涼風さんを口説いて玉砕されたし、それに涼風さんのバンドのWitchWigがライブハウスに離れたから根に持ってるのではないかと思ってさ・・・」
「あのな・・・・俺はな・・・・親父の後を継ぐエリート街道まっしぐらの次期社長なんだぞ。なんで俺がそんな小さいことで報復しなきゃならねぇんだよ。俺をそこらの脳筋チンピラに見えるのかよ!!!アァ!!!!!」
その荒々しい言動と態度がまさしくそれなんですけど・・・・
完全に失言した。宥めないと・・・・
「ちょ・・・・・縦ちゃん!!!」
「す・・・・・すみません。初対面がどうも印象が悪かったので・・・」
「そうだな・・・・お互い初対面が悪かったからな許す。それとレイミもな・・・後でいいブランド買ってやるから勘弁してくれ・・・」
「ホント♡縦ちゃん好き・・・」キャピ
俺の必至な誤りとレイミと呼ばれる女の方のあざといぶりっ子ポーズの効果もあってか縦宮は落ち着きを取り戻した。
個人的には抱き着いて完全に陥落させて洗いざらい吐いた方が理想的だけどな。
おまたせしましたーーーーーー
ようやくきてくれたブラックコーヒーの深い苦みを感じながら縦宮のアリバイを聞いた。
どうやら犯行時刻があったらしい昨日の夕方から深夜にかけては、ライブハウスの手伝いがあり、その後は縦宮の友人とレイミを加えて友人宅で焼肉パーティーをして、それ以降は深酒を飲んで友人宅で熟睡してたようだ。
その証拠にその光景の写真をいくつか見せてくれて、レイミさんにも証言してくれたようだ。縦宮の顔を見るからに顔は赤くなって完全に酔っぱらっていて、加えてレイミさんも証言してくれた。
それでもちょっと疑ってしまうが、これ以上の確証はないから認めるしかないだろう。
というかこの人婚約者いんのに、それをほったらかしにしてウハウハライフを送ってたのかよ。非リアがそれを聞いたらぶち殺し案件だ。許すまじ!!!
「アハハハハハハハハハハハ、そうですか疑ってすみませんでした。縦宮さん」
「ああ、気にしなくていいぜ。もう怒ってないからよ」
「ところで、縦宮さん貴方、確か婚約者がいるのに随分と好き勝手やってらっしゃいますよね?」
「え?お前、それどこから・・・・」
「縦ちゃんそれどういう意味かな?あたし全然聞いてないんだけど」
その声を聞いて今までスマホをいじってたレイミさんとやらは、ピクッと反応する。
どうやら縦宮に婚約者がいることは本当に知らなかったようで、呆れを通り越して声を震わせて怒っているぞ。いや~~~~~~面白いぞ~~~~~~この展開♪
「お前でたらめな事を言うなよ」
「でたらめ?貴方確かさっき、俺と涼風さんは幼馴染で同じ高校に通ってるって言ってますよね?なら、その学校にはあいつがいますよね・・・・・・・明日ヶ原楓」
「楓だと?・・・・・・嘘だろ。あいつ、男嫌いなのになんでお前なんかが・・・」
「縦ちゃん!!!」
明日ヶ原の事を口に出すと、奴は口をガタガタと震わせ、まるでトラウマを思い出すかのように冷や汗がダラダラと垂らしていた。
どうやら明日ヶ原の言う通り、こいつはドがつくほどの最低男でとんだヘタレ野郎だった。
「どういう事!?さんざんやましいことなんてないのに、婚約者がいるってのは、どういう事、あたしが嘘つく人が嫌いなのは知ってるよね」
「ちょっと待てぃ・・・・弁明を・・」
「うるさーーーーーーーーーい!!!!!!」バシャッ!!!
「あっつ!!!!!」
「お客様!!!!」
レイミさんは涙が出ないほど眉間をシワよせ、立ち上がり身体をひねりながらさっきまで飲んでた熱々のコーヒーをぶっかけ、縦宮は二三転転んで、レイミさんは、ざまぁみろと言わんばかりに満足げに鼻息を鳴らしながら店を一足先に出て行った。
ざまぁみろとしか言いようがない。
その後女店員さんがご丁寧におしぼりを持っていて顔を拭くと縦宮は水を一杯飲みほした後顔を俯いていた。
「お前、なにもここでぶっちゃけることはないだろう」
「いやいや、婚約者がいんのに浮気するのアンタが悪いでしょ」
「まぁ、確かに俺が悪い!!!!だが、もっと悪いのは一夫多妻制法を制定しない国家が悪い。さすれば今頃レイミだけではなく、沙也加も乙葉も行きつけのキャバのあいなも・・・・・・・・まとめて嫁に出来るのに・・・俺のような容姿も富も名誉もある男ならいいガキが産まれるのに・・・・・もったいない」
こいつまだ、懲りてないのかよ。ついでに俺もコーヒーぶっかけてやろうかな?
「はぁ・・・・・・まぁいい。それよりお前は朱里を助けたいんだよな?」
「ああ、はいそうですけど・・・・」
「これが事件に繋がるか分からんが朱里達WitchWigの真実を教えてやる」




