女たらしの弱点
この後も明日ヶ原に尋問・・・・・もとい拷問に近い質問をしてきた。
あいつは片手でメモを取りながらもう片方の手で刀を俺に向ける。
完全に殺し屋のような顔をしてるので、俺はありのままを答えて見返した。今朝涼風さんと一緒に朝食と食べたと聞くと、明日ヶ原の顔は異様に青ざめていて、手を出そうとしてたが、それでも感情を抑制していたが、それでも空気が重く、早く保健室の先生を来てくれと願ったが、結局は来なかった。
そして明日ヶ原の質問責めが終わったようで、ホッと息をついたけど・・・・・・
この後先生に質問責めされると思うと憂鬱な気分になってしまう。
そう落ち込むと明日ヶ原は再び俺を見る。どうやらまだ質問することがあるようだ。
「ところでクドウ・・・・今回の事お前はどう思うんだぃ?」
冗談はここまでと言わんばかりに明日ヶ原はようやく本題を出し、不本意ながら俺に協力を仰いだ。
あの・・・・・・手を貸すのはいいけどその刀はしまって貰える?
「どう思うって・・・単純に考えたら涼風さんに恨みを抱く人だよな・・・・・・それって多いのか」
「どうだろうねぇ。うちの学校に朱里にルックスとかカリスマ性に嫉妬を抱くのは知ってる限りではそこまで大胆な事はしないねぇ。唯一やりそうなゴリ本も昨日アリバイがあったし、お前も昨日お前のお母さんに聞くと帰ってからずっと家にいたらしいから容疑を外すねぇ」
ちょっと待て!!!!何勝手にうちの母親と連絡とってんだよ。いつの間にかラブコメでいそうな幼馴染キャラ風な立ち位置にいるんだよ。
本人は自覚してないと思うけど、頼むからうちの家族に関わるの止めてくれ。
その先には変な誤解を生むだけだから。
ヤバいな・・・・・このまま犯人探しが長くなるとこいつが暴走して俺の秘密も暴きそうになる。別にやましいことはないがこいつにだけはバレたくないだ・・・・・
あ・・・・そうだ。一人いるじゃないか。バンド関係で怪しいやつが約一人・・・・・
「あ!!!!あいつならやりそうだ。ほら、縦宮だよ。前に涼風さんがいたライブハウスのオーナーで、何度も涼風さんにちょっかいをかけたチビだよ。お前は何度もそいつを撃退したことがあるから見覚えあるだろ?」
「あーーーーーーあいつかぃ。いたなーーーー」
あれ、なんでノーリアクションなんだ?いつもみたいに処す感じで飛び出そうな勢いを予想したけど意外だ・・・・
「どうしたんだよ」
「確かにやりかねなぃけどねぇ・・・ゴリ本と比べたら容疑者とは思えないんだぃ」
「なんでだよ・・・」
「確かに縦宮はゴリ本と同じく朱里にちょっかいをかけそのたびにわたしが絞めてやったけど、あれはただうぬぼれてるだけだと思ってるんだぃ。別にこいつの事は推してるわけではないが・・・・・それには理由がある」
そう言いながら明日ヶ原は説明する。明日ヶ原が知ってる限りでは以前涼風さんがやってるバンドのライブ中に少々気が荒いアンチが乱入してきたけど、その縦宮がそれを追っ払たそうだ。どうやら縦宮は空手の経験があるようで、暴漢を払う力を持って、ライブハウスで危険行為をする客を次々と追っ払った用心棒でもあるようだ。
それに加え勘違いしやすい性格で涼風さんが惚れてると勘違いし、ちょっかいをかけたから明日ヶ原はそれをぶちのめしたという事だ。
え・・・・・・あいつ、傍から見たら声だけでかいチンピラかと思ったら空手やってたのかよ。俺、普通に喧嘩腰の態度をとってしまったよ。
よくやられなかったな。俺・・・・
ん?なんか引っかかるぞ。
「ちょとまて!!!涼風さんが知ってるならまだしも、敵役のお前がなんでそこまで知ってるんだよ。これも自分で調査したのかよ?」
「いいやしてないねぇ」
「だったらなんで・・・・」
「わたしの姉の婚約者だからだ」
へ・・・・・・・・・聞き間違いかな?今なんて言ったんだ。
「だから縦宮はわたしの姉の婚約者と言ってるんだぃ。だから姉を通して色々聞かされているんだぃ。こっちは全く認めたくはないがねぇ」
「ええーーーーーー!!!」
なんだよそれ・・・・・・全然聞いてないぞ。後付けにも程があるぞ。そう思ってると明日ヶ原はスマホを取り出し姉の写真をみせてくれた。
その顔は無愛想な妹と違って元気で明るそうな音野の女性じゃないか。
しかしなんでまたその女性と浮気野郎が婚約を・・・・
「わたし達姉妹と縦宮は同じ空手道場で出身でしかも姉とは同年代で近所だから一緒に居る時間が多いんだぃ。姉は人見知りだったため同年代の知り合いの異性はあいつしかいなかったから、縦宮の事が好きになってきたんだが、縦宮の女癖の悪さは昔と変わらず好みの女にちょっかい出すからそのたびわたしは痛めつけたねぇ。なんせ、縦宮はわたしや姉と・・・・・いうより道場の面々の中でかなりへなちょこだったからねぇ。高学年に入ると同時に空手を辞めたヘタレ野郎だからねぇ・・・・」
「へぇ・・・・・そうなんだ」
「というか・・・・・姉の事よりもそもそもわたし好みの女にも手を出すからそれにムカついただけなんだよねぇ。ああ~~~~~こいつの事思い出すとムカつくねぇ。壁に穴を開きたくなってきたよ」
指の骨を鳴らし、壁に向かってスパークリングしてるんだけど・・・・・ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇこいつの同性愛好きは昔とも変わらないのかよぉ。
「簡単に言うとお前は縦宮のせいで男が嫌いになっ・・・・・」
「あ!!!!」
「な・・・・・・・・なんでもないです」
ガンを飛ばして威圧掛けてくるんだけど・・・・・どんだけそいつの事嫌いなんだよ。
「よくそれで、姉の結婚を認めたな・・・」
「姉の頑固は折り紙付きだからねぇ。それを阻害する理由はないねぇ」
舌打ちしながら別の方向に睨んでいた。どうやらまだ婚約を完全には認めてないように見えた。
縦宮の家系は、ドが付くほどのエリートで普通の家庭なら、玉の輿を考えてるようだが、明日ヶ原の家は、それは関係なく娘の意志を尊重し婚約を受け入れたが、その男はいろいろ問題がある為、いろいろ条件をつけたようだ。
その条件とは、結婚前には他女付き合いはいいが、結婚後はきっぱりと縁を切ることに加え、少しでも浮気の兆候があると離婚されるという。ヤリ〇ンにはとても条件が高い契約をされたようだ。
「フッ・・・・やつの性格上破ることは出来んだろう。一年・・・・・・・いや三か月もあれば、やつは浮気する。これだけは分かるねぇ」クククク
「えらい断言してるんだな・・・」
「当たり前だぁ。あいつの糞みたいな性格は嫌程分かってるからねぇ。さてと、帰り際にあいつに一応連絡入れて聞いてみようかねぇ。勿論わたしが知らない間に朱里にちょっかいかけたら絶殺だけどねぇ・・・」クククククククク
怪しく含み笑いしてるけど全然笑ってないんだけど・・・・・・怖っ!!!
とはいえ、その気持ち一応同情するな。家族が女癖悪い最低やろうと結婚とか、俺も人の親なら必ず軽蔑するからな・・・
そう思うと明日ヶ原の親はこれでも寛大すぎるな。
「とにかく縦宮・・・・・・いやこの一件はわたしがなんとかするからお前は、サッサと家に帰ってヘタレてろぃ」
遠回しにお前はこれ以上事件に関わるなとこいつなりの警告を出した後、保健室を出た。
まぁ、涼風さんにいたずらした相手は他にもいるようだから余計な事はしないでくれという事だろう。それは軽くブーメランなんだけど、明日ヶ原はそれを分かった上で調査してるのだろう。
その後俺は教室に戻り、涼風さんに心配をされて抱き着かれた後、先生に此度の一件を質問された後、体調がすぐれない理由で早退した。
身体の調子は、だるい以外は現状それほど悪くないが一応、この近くの駅前の病院に寄り診察を受けた後風邪薬を貰った。時間を見ると今は三時頃だ。
病院から出て、駅前を見渡すと平日なのにカップルが駅前の広場でイチャイチャするのが目に見える。
まぁ、この駅前はこの町では有名なデートスポットで、今から仕事帰りでデートするのが多いのだろう。
「ん?」
「おまたせーーーーーーーいまからどこ行くよ?」
「じゃあブティック行こうよ。欲しいのがあるからさーー」
いつものようにリア充のイチャイチャを素通りすると聞き覚えがあるような声と顔で振り向く。それが仇になったかそのカップルの柄が悪そうな男も俺に目が入ったようだ。
「あ・・・・・・・・おい、そこの学生ちょっと待て!!!」
「え・・・・・・アンタは・・・・」
「誰?縦宮知り合い?」
ホンの数時間、噂をすれば本当に出会ってしまった。かつて涼風さんを口説いたライブハウスのオーナーの縦宮を・・・・・
そいつはほぼ他人の俺に対して馴れ馴れしい態度をとった。
「久しぶり。確かお前朱里の友達だったな。朱里しばらく見てないんだけど今何してるよ?」




