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店長の世間話

その日のバイトが終わり、時間は9時過ぎごろ。

この時間帯はこの店の閉店時間でバイトを含めて従業員は片づけを終えた後帰る支度をしていた。


俺は、閉店直前に恵さんが作ってくれた店のまかない料理を片手に涼風さんがいるあのアパートの一室を持っていき、完成したノートを確認しながら一緒に食べることにした。

「ほい、とりあえず今日はこの分まで参考書作ったからね」

「ありがとう祐輔さん」

「お礼は、結果が終わってから言ってよ。あ、ちなみに数学は苦手だから他の人に教えてもらっていい?」

「そこはなんとかするよ。今日はありがとう」

さっそく、涼風さんが作ってくれた参考書を覗いてみると、今回の中間テストに出るであろう予想範囲内の問題と解説が書き記されていた。

前の追試といい今回といい、涼風さんには助けられてばかりだ。

テストは来週の木曜日からで10間も期間は空いてるが、二周目の高校生活には慣れてるとは言え複雑な問題で答えられなさそうなのが多いから今のうちにちょくちょく学力を上げればいいだろう。



後、バイトも来週の木曜日からテスト期間の間なので今週の木曜から休もうと思う。なぜなら付き合ったばかりの涼風さんとイチャイチャ・・・・・もとい一緒に勉強がしたいからね。




「ふぁぁぁぁぁ祐輔、眠た・・・ここで寝てもいい?」

「えーーーーーーそれは俺に言われても・・・」

その時涼風さんは欠伸をして眠たげだった。それもそのはず今までずっとこの部屋で籠って書いてたからお眠の時間なのだろう。

しかし困ったな。涼風さんの家は両親が不在とはいえあの件以降門限が厳しくなってるはずだ。無論お手伝いさんに無言でお泊りというと絶対あの片淵そうな親に連絡が入るはずだ。まずいな。


「冗談♪さすがにここでいろいろややこしくなるしお手伝いさんの山岡さんの仕事が増えるから一回連絡を入れて帰るから。アハハハハビビった」

「び・・・・・ビビッてなんか・・・」

「ほんとかな~~~~~~」ニヤニヤ

八重歯を光らせ俺の反応を楽しんでいた。その顔を見るとつられて笑ったしまった。

その後部屋内を簡単に掃除した後、アパート前に俺らを待ってたであろう涼風さんと合流し、なんでも夜分が遅いので家に送ってくれることになった。

恵さんは涼風さんを家に送った後、俺も送ってくれると言ったが生憎俺は店長と大事な話があるので断ることにした。



「それじゃ、朱里ちゃん行くよ」

「じゃあね。祐輔」

「うん」

涼風さんはヘルメットをかぶり恵さんの背中を捕まり手をひらひらと振りながら俺と別れた。

さて、俺ももう一つの用事を済ますか・・・・






「こんばんわーーーーーーす店長。約束通り来ました」

「あら、坊や疲れてる時に、ごめんね。ほら、アンタも謝りなさいよ」

「うす・・・・・・久東すまんな」

店に入ると閉店中で、薄暗い部屋の中二人、店長と、先ほどとっ捕まえた不審者ことゴリ本が座り俺が来るのを待っていた。

とりあえず言われた通り席に近づくと、店長はすでに酔っぱらてるようでチューハイ片手に俺を手招きしてさそい、ゴリ本もバツが悪そうに顔を曇らせていた。



実は店長がゴリ本を捕まえたあの後、うまく対応したようで、なんでも親御さんと学校に報告しない代わりに、逃げないように生徒手帳を預け、店が閉まる間、別室の店長の小別部屋で、趣味で置いてあった洋画を見ながら過ごしてたようだ。

それをした理由はただ一つ、俺とこいつに大事な話があるようだ。




それを踏まえ俺は真実が知りたいが為席に座った。



「今日はおごりよ、なんでも注文していいわよ」

「いえ、このままでいいです。それよりもゴリ本、なぜ涼風さんをつきまとったんだ。その理由が知りたい」

「それは・・・」

「おい、なんで黙ってるんだよ。ことと返答次第じゃ許さないぞ」

なんで加害者の癖に被害者風にもったいぶってるんだよ。顔以上にそのねじ曲がって卑劣な行為するのが一番嫌いなんだよ。

例え相手が減益バリバリの柔道部で返り討ち覚悟で俺は胸倉に掴む。

それくらい俺は怒っているんだ!!!!



「まぁまぁカリカリしないの。イライラしたら肌が荒れるわよ。そう思うよね。そっちの坊やも」キラリーン

「ひぃ!!!!」

なんだ?ゴリ本のやつ店長の目を見ると蛇に睨まれるカエルのようにビビッて縮こまっているぞ。あの怯えよう、なんかあるな?




「て・・・・・店長その前にいいですか?あいつになにかしたんですか?というかそもそも、柔道部相手によく捕まえれましたね」ひそひそ

「やっぱり彼柔道の経験者だったわね。どうりで強いわけだわ。でも、それだけでは、戦場帰りのアタシには、勝てるはずないわね」クックック

そう言うと店長は怪しく笑っていた?なんだよ戦場帰りって?ものすっごく気になるんだけど・・・・・



「それよりも、彼がなんでストーカまがいの事だったわね。それが早い話。彼、朱里ちゃんのバンドの一番のファンらしいわよ」

「え?」

「そうだ・・・・」

あれまぁ、重要の理由かと思ったら意外とパッとしない理由だった。

なんかいろいろ安心したな。




「おい、今ホッとしたな?自分は勝者だから余裕噛ましてるんだろ?あのなぁ、知ってると思うが俺の柔道部は、全国クラスの強豪校なんだぞ。そのせいあってか、部活内はスパルタで何度もやめようかと思うくらい疲れたんだぞ」

なら、辞めればいいじゃん。




「辞めようにも、俺は推薦入学だからここで辞めたら男が廃るから辞めることができないんだ。そもそも俺は、強い男になるために柔道の道に入ったんだ。この気持、お前には、分からないな。俺はなぁ、毎日辛すぎて辞めようと決心した時、いつぞやか、涼風が路上演奏した時、心を打たれ、なにもかも吹っ飛んだんだ。それ以降俺はあいつのファンになった。そしていつかあいつの身体を俺のものにしたかったんだ」

前半とてもいい話で、涙がこぼれそうかと思ったら、最後の一文で台無しだわ。

やっぱ性欲ゴリラじゃないか。




「分かる。分かるわ。好きなものにひたすらついてく気持ちアタシには分かるわ?」

はい?店長・・・・・アンタ最後の一文聞いても泣けるの?俺は逆にぶん殴りたいぐらいで腹立たしいわ。



「でもね。藤本君。目標の為に突っ走るのはいいけど、どうしても無理な事は挫折をすることも大事なのよ。そうすれば、一段と大人になれるわ」

「アンタに俺の何が分かるんだよ。俺の生きがいを失った気持ちが・・・・大好きな涼風を寝取られた俺の気持ち分かんのかよ」グス

あの・・・・・・寝取られたとか勝手に彼氏ぶってるの止めてくれない?そもそも君、いつから涼風さんの彼氏になった?涼風さん側だと君の事迷惑この上ないらしいぞ。過度のストーキングのせいで・・・・・




「分かるわ。少なくともアンタ以上に挫折を味わったわ。あのね・・・・ワタシ、昔とあるバンドグループをやってるの知ってるわよね?」

「確か『ScarletMonsters』って有名なプロのバンドですよね?」

「クドウ・・・・スカなんだ?」

「有名なバンドグループだよ。なに?知らないの?」

「知るわけないだろう。俺は涼風一筋だ!!!!」ドン

「よくそれでバンドのファン語れるな」

俺も人の事言えないけど・・・・・・・





「そうよ。ワタシも朱里ちゃんのようにギターがとても好きで、それこそ彼女のように学生時代はテスト期間中にも関わらず握りしめるように大好きだったわ。無論プロで活躍してもいつもの調子でね」

確か涼風さんに聞いた話では、スカモンは高校での仲良しグループで結成し、卒業と同時にプロデビューしたけど、デビューわずか5年で解散したらしく、それ以降メンバーが行方不明だと聞いたことがあるな。




「なぁに、ちょっとしたグループ内の喧嘩よ。最初は大したことない喧嘩だったけど、徐々にエスカレートしてね。気がつくと相手に力強く床に叩きつけられ利き腕を怪我したわ。その結果、あの事故以降アタシの腕は死んだのよ。その後は、いい感じに転落人生を歩み、アタシ達のグループは、事実上の解散・・・・・もっとも、この解散理由はアタシの腕だけではなく、他にも細かいイザコザの連続が積み重なった結果と言えるわね」

腕が死んだ?何を言ってるんだ・・・・・店長の右腕バリバリにうごいてるじゃないか・・・・




「ああ、これね?傍から見たら普通に動かせるわ。勿論日常生活でも支障はないわ。けどね。ギターを引くとね。指の震えが止まらなく、引くどころじゃないのよ」

そう言いながら店長は平然と右手クイッと動かしたが、傍から見ては異常があるような手には見えなかった。




「あら?まだ疑ってみるよね。そんなんなら実際引きましょうか」

「いえ、いいですよ。そんなに無理しなくて」

店長は飾られてるギターを指さして披露すると言ってたが、俺は自然と口を出し中断させた、その理由はなんとなくだが、店長の顔つきからして嫌そうな雰囲気を漂わせており、可哀そうと思ったからだ。

この人の目は完全に音楽から足を洗ってる眼だ。




「だったらなぜ、アンタは嫌いなギターを飾ってるんだ?嫌なら捨てればいいのに」

「馬鹿!!ゴリ本!!」

なんで、思ったことを遠慮なく言うのかね?このゴリラは・・・・・・

ちょっと空気を読んでくれよ。そんなんじゃ社会で生き残れないよ。君!!!




「いいのよ。確かに彼の言う通り今のアタシはギターを見るたびに嫌な思い出がフラッシュバックして、吐き気がするわ。けどね、この子ら(ギター)にはなんの罪はないわ。アタシに出来ることはかつての情熱(パッション)を他の人に受け継いでほしいのよ。朱里ちゃん・・・・・ううんアタシの店を出向いてくれたすべてのお客さんにね・・・」

そう言いながら店長はクールに煙草に火をつけ、煙を吹き、天井を見つめていた。




「まぁ簡単な話、あの頃の挫折が無ければ今のアタシは無かったのよ。だからアンタも他の男に好きな子を取られたからって諦めちゃだめよ。人生は長いんだから落ち込んだ分、別の道を探しなさい。けど、アタシはオカマには落ちちゃだめよ。あの道はアンタのような生半可な人間がなっちゃいけない修羅の道だからね☆」

「!!!!ならねぇよ。そんなこと」

「うふっ」

軽く冗談をいい、今まで重い空気を出していたゴリ本に笑みをこぼしていた。

やっぱこの人は人徳がある。





・・・・・・・・・・・・・・

「いろいろすまなかったな。じゃあなクドウまた学校で」

「ああ、」

「元気でね。暇だったらここに寄るのよ」

「分かった。暇ならここに来るぞ」

その後店長は、ゴリ本に生徒手帳を返し、あいつは、いつものようにむさくるしい顔をしながら帰っていたがどことなくスッキリとした感じがしていた。

店長の言う通り、奴はこれから別の道を目指すようだ。



そしてあいつが店から出ると店長は緊張が解かれたのように脱力してため息を思いっきり吐いていた。。


「はぁ~~~~~~~~疲れた~~~~~久々に説教すると答えるわ」

「いやいや、たまに俺の事説教するじゃないですか?」

「アレは注意よ。注意と説教は似てて否になるものよ。坊やの癖に一丁前の事言うんじゃないわよ」バシッ

「痛っ背中叩くなよ」

「うふっ、それはそうと坊やアンタも気をつけなさい」

「は?なにを?」

「朱里ちゃんの事よ。今はアタシがいたおかげで何とかなったけどこの先、アンタにもいろいろ挫折を味わうのよ。アンタは、さっきの子みたいに撃たれ弱いんだからしっかりしなきゃいけないわよ」

「・・・・・・・挫折か・・・・・・そんなのもう経験済みだよ」

「ちょ、ど、ういう事よ。それ?」

そう

一言残し俺は店に出た。





挫折なんて一周目で味わったよ。

俺はヘタレだからなにもできずに暗い人生を歩んでいた。

この二周目の世界だって、何もできない俺を神様が哀れんで作られた仮想の世界だ。

俺は今ズルして、この世界にいると言っても過言ではない。


こんな卑怯な俺が店長のような器の大きい人間になれるわけがないんだ。

それ故に現実の一周目よりこの仮想世界を生きることに向いているんだ。


だから今まで以上に幸せになる。もうすぐ起こるあの悲劇を食い止める為に・・・・・・






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