プール内でまさかの再会
あれから数えられないくらいの絶叫アトラクションに連れられ、涼風さんはご満悦になってるが、対する俺は、根っからの絶叫系が苦手なので体力及び心身的に疲労してしまった。どんだけ絶叫系が好きなんだよ。もう俺のライフは尽きそうだ。
「はぁ~~~~~~楽しかった。けど、そろそろお腹すいたな~~~~なにか食べとく?」
「うん・・・・そうだね」
俺も小腹が空いたので、ここらでプール内の売店に向かおうとする。
だが、今はお昼ランチ真っ只中で、プール内の売店は勿論の事、座席は他の客で混雑してるので、涼風さんと相談して、彼女は席を探す役割で、俺は売店で買って来ることに分担することにし、買うものを相談した後並ぶことにした。
並ぶ頃には前のお客は15人ほどの長蛇の列になっており、はるか先の売店には店員の忙しい対応の声がこっちまで聞こえてきた。
この感じ・・・・予想以上にかかるな。
憂鬱になりながらも俺は地道に並ぶことにする。
「次のお客様どうぞーーーー」
「はい。えーーーーと」
しばらく並ぶとようやく注文ができるくらいに回ってきた。ふぅ~~~~~やっと俺の出番か。今までずっと立ちっぱで足に限界に来たけどなんとか間に合ったな。あれから10分以上は待たされたから、涼風さん側も席は見つかってるはずだ。
さて、注文を・・・・
「おっと、すまない。失礼するぞ」ドン
「うわっ!!!」
俺が注文を言おうとした瞬間後ろから、長身のやや露出がある水着を着た大人の女性が急に割り込んできてその人の尻が俺にぶつかってしまった。
そしてその人は、一言声をかけると注文番号の札を店員に見せ、その人が注文してたであろうカレーうどんを受け取っていた。
たく、どこ見て歩いてるんだよこのおば・・・・・・・え・・・・・・
「先輩?」
「ん?私の知り合いか?」
その女性を見て固まる。前と比べて若返っていているが、目つきの鋭さとこの男勝りの口調に無駄にナイスバディの女性・・・・・間違いない。一周目の社会人時代で、俺をさんざん指導いや、いびっていた鬼上司だ。
なんで、こんなところに・・・・いや、それよりも挨拶を・・・
「こ・・・・・・こんにちわ先輩こんなところで奇遇ですね」
会社でいた時と同じく背筋正しくニッコリと笑い一礼をする。
が・・・・・その先輩はポカーンとした顔をし、しばらく固まっていた。
「ん?誰なんだ?君は・・・・どこかであったのか?」
「え・・・・・あの、俺です。久東ですよ。いつも貴方にパワハラしているあの後輩です。お忘れですか?」
「いや、君のような人間は知り合いではないな。人違いをしているのではないのか?」
あ・・・・・・そっか。この世界の時間軸は俺が高2の秋の時だから、その時はまだ先輩と出会ってなかったな。
あの人に植え付けられたパワハラのせいで情景反射で動いてしまったよ。
それにしても、改めて先輩の身体を見るといいプロモーションをしてるんだよなぁ。
新入社員の時は、礼儀が正しく近況してる俺達新入社員を元気つけて、的確に仕事内容を教えてくれたんだよな。ほんの一瞬だけどな。
本格的に正体を明かしたのはその二日後で、同じ失敗した俺を後ろから足蹴りしたり、部署のみんなに聞こえるくらいに罵倒したりと挙句の果てには、仕事が終わると愚痴を聞かせるために無理やり飲みに連れて行かれたな。
それでも全部が全部性格が悪いってわけがなく、中には、誕生日の日に高いプレゼントをくれたり、金欠の給料日前には、よく奢ってくれたりと良い部分はあるが、悪い印象の方が目立ってしまう。
それくらいあの人は俺の事がお気に入りなんだろう。
あの人が寿退社していなくなった当時、清々して居心地が良かったのだが、今思えば、当時コミュ障で誰とも群れたがらない俺を社会人として向き合う為の荒療治だったと思う。いなくなってなんとなくそう思えて来たのだ。
まぁどっちにしても下手すれば俺が裁判で勝てるくらい度が過ぎてるけどな。
「あの~~~~~~後ろのお客様のご迷惑になりますので、ご注文をお願いします」
「なぁ、次君の番じゃないのか?」
「あ・・・・・そうだった。すみません先輩!!!」
「・・・・・・・・」
しまった。先輩に目を行き過ぎて後ろの待ちわびてる客に迷惑がかかってしまった。軽く頭を下げ慌てながら早く注文する。
「はぁ~~~~~~やってしまった」
「まぁしょうがないことだ。私に魅了されたらボケっとするのは当然だ。そう落ち込むことはない」
「だれもそんな事を言ってませんよ」
その後、俺はなんとか注文ができ、購入したものをオボンに乗せ涼風さんの席の方に向かおうとする。
のだが、なぜかこの世界では初対面の先輩も一緒について行くことになっていた。
その理由を聞くと、どうやら先輩も当時の彼氏とデートをしてるようで俺が向かってる同じ席に彼氏が待ってるようだ。
しかし二周目では初対面とはいえ天敵の先輩と一緒にいるとすごく緊張するな。
ついジロジロと見てしまう。
「ところでさっきから気になったのだが、私は君の知り合いに似ているのか」
「え?」
「さっきの言い分だとどうも知り合いのような親しみがある口調をして気になっていたんだ。差し支えなければ話してくれればいいのだが」
「・・・・・・・・そうですね」
ふと何かを悟るかのように俺は立ち止まってしまった。
不思議な気分だ。間接的に二周目の先輩が一周目の先輩の事を聞くなんて。
この問いをどう答えても、見ず知らずの俺の言葉を鵜呑みにせずに忘れるかもしれない。
いやそれ以前に、自分が二周目と同じ会社に勤めて再びこの人の部下になる確証はない。
だって一周目ではあれだけいじられたんだ。普通その会社を避けるのは当然なはずだ。
けれど・・・・・・・
「めちゃくちゃ大嫌いなk・・・・・・・・部活の先輩ですよ。それ以上もそれ以下もありません」
一瞬会社の元上司と言いかけてしまったがなんとか言い直せることができた。危なすぎてつい笑いそうになってしまった。
「そうか・・・・・大変だな」
「あの・・・」
先輩は器用にもカレーうどんを乗せたおぼんを片手で持った状態で、今まで見せなかった優しい笑みで俺のおでこをコチンと軽くたたいた。
「いて・・・・」
それはたまに落ち込んでた俺に対し、彼女なりに励ます仕草だ。
あまりにも久々なことなので驚いてしまった。
「がんばれ・・・・少年」
その一言を呟くと先輩は何事もなく奥のテーブルにいる彼氏の方に向って食事をしていた。
小突かれた場所は痛みはないが、とても暖かく感じてしまう。
先輩ありがとうございます。
たぶん見えないだろうが言葉を出さずにその方向に頭を軽く下げた。
そして俺は、その場を切り替えて涼風さんがいるテーブルに向かうのだが、なぜか彼女は顔をじっと俺の顔を睨んで、プクッと膨らませていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」ムスッ
「ん?・・・・・・・・涼風さんどうしたのかな?」
「今、ナイスバディのお姉さんをナンパしてたでしょ。随分といやらしい顔をしてたよ」
まじか。さっきの光景がっつりと見ていたのか。あれはただの誤解なのに・・・
「あれは・・・・・その」
「というか、久東君最近思ってたけど、普段は不愛想なのに年上の女性となると随分関りがあるんだね。とても以外だったよ・・・」
「涼風さん?」
「今ので気分損ねたから久東君の点数はあと、一点だからそこんところよろしく!!!!」ニッコリ
「そんな~~~~~」
満面の笑みで言われてそのまま俺が持ってきたものを手につき食べていた」
「ほら、落ち込まないで久東君も食べなよ。っというか自業自得だからしょうがないか・・・」ニヤニヤ
「そうだね。自業自得だよ。たく、涼風さんの好感度を上げるためにここに来たのに何やってんだ。俺・・・・」
落胆しながらも俺は席に座りすっかり機嫌が悪くなってる涼風さんと一緒に食べることになる。
そしてふと、あの先輩がいたとされる場所に目を向ける。
あの人は先ほど変わらず彼氏と楽しくワイワイしているようだ。まるで一周目の俺と楽しく飲みに行ってるような顔つきだ。
俺はあの人のパワハラ行為のせいで会社を辞めようとなった。
けれど、もう一度あの人の部下になるのなら、キチンとした自分をあの人に見てもらい一緒に仕事がしたい。
これは好意ではない。ただ恩を返したいだけなのだ。
そう思うってしまう自分がいる。




