涼風さんの部屋
「あ、久東君いらっしゃ~~~~い。やっぱり来てたんだね」フリフリ
「やぁ、涼風さん」
部屋に入ると大音量の曲が響き渡り俺は、ふと耳を閉ざす。
見ると涼風さんは、ベットに横になり布団にくるまりポテトチップスを片手にファッション誌を読んでいて俺を見ると元気よく手を振っていた。
涼風さんの部屋を見渡すと流石バンドマンなだけあって部屋中には、海外か国内のバンドか分からないがポスターやらTシャツやらあらゆるグッズが部屋の壁に飾られていて棚の上にはおそらくケースには入れられないほどの大量のCDが積み上げられていた。
この部屋は、一見すると女子高生の部屋ぽくないような感じはするが、俺的には大体こんな感じの部屋だと大いに想像してたから大したリアクションはないのだ。
「さぁ、ずっと突っ立ってないでこっちに座ってよ。アタシもそっちに行くから・・・」
「う・・・・うん」
涼風さんに示されて目の前にある黒と白のクッションが二つあったので俺はとりあえず近くにある黒のクッションに座ることにし、一旦落ち着くことにするが・・・・・・
「ええ!!!」
「なに?どしたの」
彼女は起き上がり、スピーカーの音量を下げた後よいしょと言いながらクッションに座るのだが改めて俺は涼風さんのあられもない姿を見て興奮してしまい変な声が漏れてしまう。
その姿とは、今まで布団にくるまっていた彼女はそこから出るとパジャマ姿で飛び出してきたのだが、それは一切ボタンが止めてなく、パジャマの下になにも着てないので、おへそや彼女の小さな胸元が露出された状態になっており、ほんの少しでも動けば乳房が見えそうなくらいの際どさだった。
「あ・・・・・・・あの、涼風さん・・・・パ、パジャマなの」
「うん、そだけど。だってずっと部屋でいるから着替えるのメンドクサイし・・・て・・・・あれあれ?もしかして久東君興奮してんのかなぁ?」
涼風さんは俺が慌てているのを見て、ニヤニヤしいつものようにエッチないたずらをしようと、四つん這いになり舌なめずりしながらジリジリと俺に接近してきた。
この人なにも変わってないな・・・・
「そうだよね。あの時も家に誘った時も、股間の方もおっきしていてヤル気満々だったよね。それで今日は前の続きでアタシとヤル目的でここに来てたんだね」
「は・・・・・・はいそうです!!この日の為に来ました」
「うわぁ?即答・・・・・こっちは冗談のつもりに迫ってきたんだけど・・・・なんか引くんだけど・・・」
え?え?あれ?なんかドン引きした表情でビデオの巻き戻しのように座布団の方に戻っていてしまった。
もしかして俺地雷踏んだか?
「そこまでドン引きすることなの?」
「いやぁだってぇ、アタシうじうじする人間の他に、性的な目で見られる男も嫌いなんだよね。ちなみにゴリ本と縦宮がその部類に入るから、まさか久東君がそれらと同類と思わなかったなぁ」
嘘だろ。俺があの二人と同類だったなんて・・・屈辱の極みだ。
「いや、今までもずっとアタシのこと変な目で見てたからそれ以上かも・・・・変態大王だね」ニヤニヤ
「涼風さんそれ本気で言ってるの?なんか口元が笑っていてからかってるにしか見えないんだけど」
「ホントホント、というか久東君が今日来ると思ったからわざとこのカッコしてるんだよねぇ。昨日だって友達から連絡を取れたのに久東君に連絡を取らなかったのは、欲求不満の久東君をここに誘う為の作戦だったんだよ。まさか本当に来るとは思ってなかった。マジウケるんだけど」
「そりゃどうも・・・・てかもし俺が本当に変態大王なら今ここで襲ってしまうことを想定しないの?」
「あははははははははははははははははははははそれはないない。だって久東君そういうのできないタイプってのは昔から知ってるから。・・・・・・・・・・・・・・でも・・・・」
「でも?」
「あ!!!!またエッチな事想像してたでしょ!!!!うわぁ~~~~~~引くわ~~~~~」チラチラ
そう言ってる割には、いたずら顔で谷間を見せて誘ってるんですけど!!!!
完全に俺で遊んでいるな・・・・
俺は逃げるかのように部屋から出るようにした。
「涼風さん悪ふざけしてないでいい加減に服着替えてくれよ!!!」
「あ~~~~~~~久東君怒らしちゃったか~~~~~~~しょうがない着替えるから少し待ってよ。もう悪ふざけしないから・・・・・・たぶん」
今たぶんって言った?これ絶対にまたやるパターンだな。
念を入れて再度部屋に入る時は目を手で隠し指の間で覗きながら慎重に進むことを決意する。
数分後涼風さんから許可をもらったので俺は警戒しながら入る。見ると涼風さんは俺の言う通りに真面目に着替えてくれたようでひとまず安心だ。
そしてそのちょうどいいタイミングでお手伝いさんがクッキーを焼いてくれたので、食べながら楽しく話をすることになったのだが、最初は普通に休学中の過ごし方について話していたが段々と、怒りが込みあがっており、いつの間にか涼風さんの父親の愚痴を言うようになった。
「それでさ~~~~~聞いてよ。久東君あの親父むかつくんだよ。『友達と連絡するな』ならバンドマンにとっての命であるギターと歌詞を丸々没収するってありえなくない?これ、普通の父親ならするかね?」バン!!!
「う・・・・・・うん。分かるよその気持ち・・・」
まるで酔っ払いの親父のようにプンプンと怒りオレンジジュースが入ってたグラスを音を立てて丸テーブルに叩きつけていた。
俺は、彼女の気持ちを共感し話をしっかりと聞くようにする。
「そ・・・・・それで、いつ返してくれるのかな?」
「ん?返すって来週の月曜日までだけど・・・・確か隠してた場所は、パパが管理してる保管庫に管理してるようだからその当日業者が来て返してくれるんだって。あ~~~~~恋しいな」
そう言いながら白のクッションを抱きしめ顔にこすりつけた。うん。なんとも可愛い仕草だ。だけど顔に出すと彼女に変な奴と思われるから平常心だ。
「あの・・・・・さ」
「ん?なに?言いたいことがあるなら言ってよ!!」
多少言うのを躊躇してしまうが、俺は迷わずに気になることをぶちまけるようにする。
「お父さんと仲悪いのかな?」
「別に~~~~~~悪くないかな・・・・っというかうちのパパアタシが小さい頃から海外で働いてからここに戻ってくるのは滅多にないし~~~~今もいざ帰ってみては、すぐに戻っていたから、いろいろ中途半端だよ」
「そうなんだ・・・」
「だから小さい頃、パパとまともに遊んだ記憶がないんだよね。家にいる時はずっとお手伝いさんに遊んでもらうばっかり・・・・・・そんなんだからうちのママは、物心つく頃には死んでしまって・・・・それなのに仕事一筋で家の事は全くのお構いなし・・・・・もうすぐママの命日なのにあの人今年も来ないはずだよ・・」
「え・・・・」
涼風さんは、顔をうつむかせ段々と怒りを震わせテーブルの上に手をおき強く握しめていた。その怒りは今までの愚痴を凌駕するほどこみあげていた。
この雰囲気、想像以上によっぽど家庭環境が悪いんだな。協力したいのだけど、友達未満の俺には涼風さんの渇きを癒すことができるのかな・・・・・・
「は・・・・・・・・ごめんごめん。つい感情的になってしまったよ。今の独り言聞こえちゃった。なら忘れてくれたらありがたいんだけど」
「え・・・・」
正気に戻った涼風さんは、さっきの独り言をうっかりと口を滑らせていたので相当慌てており、どうやら聞いてはいけないものだったようだ。
「あちゃーーーーーーーー。その様子なら完全に聞こえたか。ならエッチな事をして忘れよっか♡」
「涼風さんそれもう完全に飽きたよ・・・」
「あはははははは。もうそれは通用しないか。残念」
「悪いね。俺は今のでラノベや漫画のようなちょいエロなご都合展開は現実にはそう簡単には起きないと確信したからね」
「そう言ってる割には依然のアタシのパンチラで興奮したくせに~~~~」
う・・・・・・俺はせっかく忘れたのに、なんでこうもなんでもかんでも思いだせるのかな・・・・
「あ、そうだ。ラノベで思い出したんだけど、ちょっと待ってて・・・・」
涼風さんは、思い出したかのように急に勉強机に向かってなにかを探していて、それを俺に渡す。
それは以前、彼女と本屋に寄った時に彼女の為に買ったラノベとその感想文だった。
「はいこれ・・・・・以前久東君が買ってくれた本とその感想文。謹慎中退屈な時は読んでたんだよね」
「どれどれ・・・・・」
その感想文を見るとどうやら涼風さんは真面目にその三冊を全部読んでいたようでそれを表すかのようにその文法と内容もきちんとしっかりしていた。
「どう?すごいでしょ?実は、買ってくれたあの日以降毎日欠かさずに読んだんだよね。別にアンタの為に読んだんじゃないからね。勘違いしないでよね」
「はははっ久しぶりに聞いたよ。エセツンデレ」
「もう、からかわないでよ。じゃ今度は久東君がそのラノベのどれか今読んでよ。アタシその姿をずっと眺めておくから」
「それ・・・・・・楽しいの?」
「うん?分かんない。けどおもしろそうじゃん♪やってよ」
唐突に無茶ぶり言うな。・・・・・まぁ読めと言われたら読むしかないか。
そう思いながら適当にラノベを手に取り読むことにする。
正直このラノベ一周目では学生時代何度か読んだから展開は予測できるんだよな。
おまけに・・・・
ジーーーーーーーーーー
こうも無言でニンマリとした笑顔で見られたら集中力が削いでしまう。
これ余計にうっとおしいぞ。
俺は、一旦深呼吸をし、集中力を高めもう一度読むことにする。
その間涼風さんからちょっかいが来ませんように・・・・・・・・




