これは絶対に譲れない
その日の翌日、俺は昨日渡されたチケットをポケットに入れ学校に登校し自分の教室に入る。
「おはようみんな!!」
「おう、クドウおはよう」
「クドーーーークラス委員おはよーーーー」
うんうん、相変わらず俺の名前を間違えていて不愉快な朝だ・・・・
さて、涼風さんの席を見ると・・・・・・まだ来てないな。
もしかしたら、後から来る可能性があるから待つか・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
だ結局涼風さんは、この日の朝は来なかった。
HRが始まり山口先生によると、涼風さんはまだ熱が治らないという相も変わらずの報告があった。
はぁ。この日もダメか・・・・
いつになったら涼風さんが、来てくれるんだよ。
このチケット明日までなのに意味ないじゃないか。
「クドウちょっといいかぃ?」
「ん!!!明日ヶ原」
そんなとある休み時間時間俺は、机に伏しチケットを片手に眺めながらやり過ごすと、明日ヶ原に声をかけられたので、瞬時にチケットをポケットに隠した。
「なんだぃ。そんなに驚くことではないだろぃ」
「そうだけど・・・急に声をかけてくるなよ」
「こっちだって声はかけたくはない。少し話がある」
なんだよと思いながら、明日ヶ原に連れられ、教室前の廊下に連れて行かれる。
ん?明日ヶ原の様子なんかおかしいぞ。あいつも俺と同様涼風さんがいないから、落ち込んでる雰囲気してるのに、なんか顔のツヤがいいのは気のせいかな?
「で、なんだよ・・・・・話って・・・・・・・」
「その前に、クドウは、あれから朱里と出会ったことはあるのかぃ?」
「ん?全然、あれからまったく連絡はないけど・・・・それがどうしたんだよ?」
「・・・・・・・」ニタァ
ゾクッ!!!
な・・・・・・・なんだ。今背筋が凍る感覚は?
さっきの魔性の笑みとはいい、顔のツヤ具合といいまさか・・・
「明日ヶ原・・・・・・まさか、お前涼風さんと会ったのか?」
「そうだねぇ。結論から言うとその通りだぃ。実は、昨日から仲間内で朱里と連絡をとれて面会ができたんだぃ。その顔、まったく知らなかった感じをしてたけど、朱里から知らされなかったのかぃ?だったら朱里の優先順位は、お前よりわたしたちの方が優先だったんだねぇ」
完全に勝ち誇った様子で明日ヶ原はべらべらと喋っていた。
お前が昨日の内涼風さんを襲いセクハラしたことなんて想像しただけで、興奮を覚えるがそんなのは後だ。
それよりも連絡が取れるのならなぜ俺にメールをしなかったんだ?
もしかして俺のことを友達だったと言う言葉は、嘘だったのか・・・
「確かにそんなことは知らない。けど、お前は墓穴を掘った。今そのことを話して俺は、涼風さんの家にお邪魔しないと思ったのか?」
「別にいいじゃないかぃ?お前が今日朱里の家に行こうが構わない。それよりもわたしはあれが欲しいからお前を呼んだんだぃ。なにも言わず温水プールのチケットを渡してここから立ち去りなぁ」
「は?チケットぉ!!!!な・・・・・なんのことだ?」
右手をこっちに向けて招いてる仕草で要求する。な・・・なぜチケットの事をこっちが知ってるんだ?
盗聴器か?あの野郎。涼風さんを我が物にしたいが為に、敵である俺の家に仕込みやがったのか?
正義感ぶってる癖してなんて卑劣なやつだ。
「とぼけないでくれぃ。今朝お前のお母様からその情報を貰ったんだぃ」
「はぃ?母さんが?」
明日ヶ原は、自身の携帯を取り出しメール内容を見せる。
後、俺の母さんに様とつけるの止めて。
それはさておき内容は・・・・・・
『件名 息子からプレゼントがあります。
楓ちゃん、家に出向くたびにマグロ丸のお世話をしてありがとう。それよりも、今日
息子が隣町にある温水プールのチケットを学校に持っていくから、良かったら明日一緒に温水プールデートを楽しんでください。 母より』
・・・・・・・・・・・・・・・
何余計なことしてるんだぁ!!!!あのクソ婆!!!!
いくら下世話でも限度があるだろうが・・・・・
アンタ放任主義な癖なのに、なんでここだけは過保護なんだよ。
「さぁそう言うわけだぃ。さっさとよこしなぁ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
おいおい、このメールを見せたとたんに、不思議と明日ヶ原の様子は殺意で高ぶってるように感じるんだけど、これ間違いなくこのメールを見てイラついているな。コレ・・・・
どんだけ俺と行きたくないんだよ。俺もお前とデートするのは無理だけどぉ!!!!
「どうせ、お前は朱里としかプールに行くことしか考えてないだろぅ。お前と行くのならわたしと言った方が安全だぃ。さぁよこしなぁ」
まるでどこかのチンピラのごとくチケットを要求し、逃げないように壁際にジリジリと詰め寄ってきている。
まずい。これだけはなんとしても死守しないといけないぞ。
このチケットは、俺と涼風さんとの絆を紡ぐためのカギだ。今の現状これをうまく彼女に渡し、それを了承するなんて無理かもしれない。
だけど、こいつに渡して涼風さんとレズレズデートをしてるのを、家に籠って陰キャ丸出しで妄想するのは嫌だ。
今の俺の力では、この百合の化身を跳ね返すことができない。
頼む・・・・・俺に今一度チャンスを来てくれ。
「ん?おい、お前らもうすぐ授業が始まるぞ」
「佐々波・・・・」
チケットが、明日ヶ原に奪われそうなところで間一髪佐々波が教室から飛び出し俺を呼んできてくれた。
よし・・・・・こいつがいればあとは何とかなる。
「ちょっと待てよ。明日ヶ原・・・・悪いが俺は一度も涼風さんとプールを行くつもりはないぞ」
「は・・・・・なにを言ってるんだぃ?朱里じゃなければ誰と行くんだぃ?見え透いた嘘は止めてくれぃ・・・・・・・ってしまったぁ」
しめた・・・・・・あいつがホンの一瞬動揺し隙ができたぞ。
俺は、なんとか明日ヶ原という壁を潜り抜け佐々波に駆け寄り肩を組むことにする。
「残念だったなぁ。俺明日こいつとプール行くんだわ。なぁ佐々波?」チラッ
「は?何言ってんだおま・・・・」
佐々波は突然の事で訳が分からない状態で、白けていたが、佐々波の協力が欲しいのでチケットをやつにかざしながら目で訴えることにする。
頼む通じてくれ・・・・
「ああ・・・・・・なるほどな。分かった。今度なにか奢れよ」ヒソ
流石無二の友人。たったそれだけの仕草ですべてを理解したようで、俺に耳打ちをし肩を組んで奴なりの演技をする。
「ああ、その通りだ。わ・・・・・悪いな。久東の言う通り俺明日こいつとプールい・・・・・行くのを予定してるんだ。だから諦めてくれ」
「・・・・・・・」
演技とは言え俺とプール行くことに若干抵抗があるらしく、ひきつった顔で言葉がぎこちなく大根役者並みの棒読みだ。
これもしかしたらバレるかもな・・・
そうは思わせないと、ダメ押しで俺は、いやいやこいつに強く密着しニッコリと笑う。
「(おい、馬鹿あまり近づくな気持ち悪い)」
佐々波の心の中の悲鳴が聞こえるが俺はお構いなく、ボーイズラブと思わせるかのように演技する。
てか、こいつのわき汗くっさ!!!!もう少しきれいに洗ってくれよ・・・・
「明日ヶ原。お前の言う通り俺は、涼風さんに愛されてない可哀そうな陰キャだ。だが、俺は恋より友情を取るつもりだ!!!せいぜい俺と佐々波のプールライフをエンジョイしてる間に、せいぜい涼風さんから生気を奪うがいいさ。クソが!!!」
うん。我ながら吐き気がするような糞演技だ。
さぁて完全の明日ヶ原の反応はどうだ?
「うわぁ。お前達、男同士で本当にプール行くのかぃ?気持ち悪・・・・しばらく近づかないでほしいねぇ」
明日ヶ原は本当に野郎二人でプール行くと思っており、汚物を見るような目でめちゃくちゃドン引いていて、顔を青ざめながら教室に逃げていた。
正直明日ヶ原の変態すぎるレズプレイも傍から見ればドン引きなレベルなのだが。それはともかくなんとか明日ヶ原からチケットは死守できたが、さっきの一部始終は周囲には駄々洩れなので、俺らには白い眼が向けられていた。
ヒソヒソヒソヒソ
「すまん・・・・・」
「すまんと思うなら、もうこんな事させるなよ」
佐々波はあまりの恥ずかしさでうつむき無言のまま教室に戻っていた。
その後はクラスメイトから俺らに向けて要らぬ噂が広まっていたが、俺と佐々波は、聞く耳を持たず授業を黙々と受けていた。
この教室の様子だと、佐々波とまた話すと変に誤解する人間がいると思うので、ほとぼりが冷めるまで俺と佐々波は、しばらく学校内で関わることを辞めることにした。
我ながらでかい代償だ。
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そしてその日の放課後、今日はバイトが休みなので颯爽と教室を出て俺は、涼風さんの自宅に向かうことにする。
ちなみに涼風さんの家は、俺の家から歩いて10分ほどの場所なので歩いていけれる場所だ。
なぜその場所を知ってるかというと単純に彼女の家の近くにうちの母方の祖母の家があるので、小さい頃に聞かされただけだ。
「緊張するな・・・・」
ばあちゃんの家に行くとき毎度思うが、相変わらず涼風さんの家は豪勢だなぁ。
彼女の家は、地元では有名と言えるほどの洋風のお屋敷だ。
実は、俺涼風さんが休んでる時に一度ここに、お見舞いに来たけどお手伝いさんに、中に入るの断られたな。正直今回で二回目だが今回は大丈夫か?
手を震わせながら俺はインターホンを押すことにする。
ピンポーン!!!!
「はいはいどちら様ですか」
そのチャイムと同時に中からバタバタと音が聞こえ、中からドアが開く。
そこから、エプロン姿の初老のおばあさんが頭を下げ出てきて来た。
この人は涼風さんの家族ではなくお手伝いさんの人だ。
そのおばあさんは、以前の時と同じ人だったので、俺との面識があり、俺を見ると頭を軽く下げていた。
「あ・・・・・・あの俺、久東と言いますけど、以前と同じくお見舞いに来ました。今日涼風さんの友人に聞いたのですけど、朱里さんと面会できると聞いて出向いたのですけど、中に上がってもよろしいですか?」
「ええ、いいですけど。どうぞ中に入ってくださいな」
明日ヶ原の言う通りどうやら、昨日から面会が可能ならしく、異性の俺だけが来てもなんの疑いもなく家に上がらしてくれたぞ。
あっさりと家に上がらしてもらい、そのお手伝いさんの後をついていく為二階に上がり、突き当り右を向かうと扉があり、その中からどこかの海外のバンドの音楽が漏れていた。間違いないここが涼風さんの部屋だ。
「こちらが朱里さんの部屋です。朱里さん。お友達が来ましたよ」
「いいよーーーーー入ってーーーーー」
中から涼風さんの声が聞こえ、部屋に入ることを許されたようだ。
「ではごゆっくり」
お手伝いさんは俺に頭をさげ、静かに一階に戻っていた。
・・・・・・よし入るか。
唾を飲み込み勇気を出し、扉を開ける。




