誘惑を越えた先に待つのは・・・
「はぁ・・・・・・・・・ぜぇ・・・・ぜぇ・・・」
「あり?久東君へばった?これくらいでへばるなんて情けないね」
俺は彼女に引っ張られ、音楽スタジオから少し離れた場所の繁華街にまで走らされた。
以前も同じことがあったので、体力は前とは変わらず心臓が破裂しそうなほど、しんどく感じてしまい、道の真ん中に止まり休憩する。
その状態で彼女の手を繋いだまま乱れた呼吸を整える為に落ち着き・・・・深呼吸をする。
「前から思ったけど、少し走っただけでへばるなんて、君って体力無いね。 まるでそこらの中年のオッサンみたい」
「う・・・ほっといてくれよ。体力が無いのは自分が一番分かってるんだよ」
「あはははは。悔しがってて相変わらず面白いね」
対する涼風さんはあれだけ走ったのも関わらずあまり息を切らしていなかった。
まったくどんだけ無尽蔵なんだよ。
っていうか、いつまで俺の手を握ってるんだよこの人は・・・・
とても嬉しくて心臓が破裂しそうでやばい。
そろそろ放して欲しいのだけど。
「・・・・・・・・・」ジーーーーーー
「ん?なになになんでこっちを見てるの。もしかして惚れちゃったとか」
「あの、手ずっとつないでるんだけど・・・」
「あーーーーーーそうだった。そうだった。そろそろ放さないといけないね・・・・・・ってうわぁ・・・・久東君手汗すごくね?こっちまでグシャグシャなんだけど」
そう言うと涼風さんはそのグシャグシャの手をポーチからハンカチを取り出し拭いていた。そしてそのハンカチを俺に渡そうとする。
「はい、いる?」
「うん・・・・・ありがとう」
俺は静かにうなずき静かに拭き、綺麗になったところで彼女に返す。
そうだ。 あのことについて聞かないと・・・・
「そ・・・・・そうだ。涼風さんあのことって本当なの?」
「あのことって?」
「いやいやいや、さっき俺にギターを教えるって言ったよね?」
「ああーーーーーーあれね。う・そ♡」
そう激甘ネットリボイスで言われた。
で、ですよねーーーーーどうやら俺はいつものように彼女にからかわらようだ。
「で・・・・・でもそれだったらなんで、あの時他のメンバーから俺を引っ張てくれたの・・・・もしかして嫉妬とか」
「さぁ・・・・・・なんのことかな~~~~~~~べつにあの時助けたのは、久東君がなんだか嫌な顔をしてたから助けただけだけど」
は、はぐらかされた。こっちにとっては重要な事なんだけど・・
なら別の質問をするしかないな。
「じゃあ、マキさん達が言ってた王子様ってのは誰かな?」
「知らな~~~~~~~~~い。てか、その質問どうでもよくない」
これまた軽く流された。
本人は見るからに話したくないような雰囲気をして非常にモヤモヤするが致し方無い。諦めるか。
そう思った時、涼風さんはムフフと笑い声をこぼした後突然俺の腕を抱き着いて密着してきて、明日ヶ原の如く耳元にフッと息を吹きかけてくる。
「アハ、落ち込んでる。久東君可愛いよ。その顔見たかったんだ」
「涼風さん!?なにを・・・・」
「なにって、ただ普通にさっきやってたリーダーの真似事してるんのだけど、ビビりすぎ!!! ねぇ、そんなつまんないこと追求するより家来る?」チラッ
彼女はそう言いながら誘ってるかのようにかがんで黒シャツからチラリと見えるブラを見せていた。
そのブラは、いわゆる勝負下着というものらしく、とても派手な下着で、女性の身体に対してあまり免疫がない俺にとっては、直視できなかった。
「え・・・・・えええ、なんで急に、そんな話になったんだよ?」
「だって、さっきギターを教えるって約束したじゃん。とはいってもアタシ、レフティー専用しかないから右利きの久東君には合わないけど♡」
あれ?貴方さっきその事嘘って言ってませんでしたっけ?
「なんでいきなり?」
「なぜ・・・・って久東君もさっきリーダー達に色目仕掛けられてこっちの方もムラムラしてたんじゃない。大丈夫家には誰もいないから♡」ちょいちょい
彼女は大胆にも俺の股間を指していた。
やばい・・・・・さっき彼女に手を触られたせいか俺のエクスカリバーが覚醒してしまっている。
しかもその光景を彼女は、マジマジと見ていて余計に興奮させていた。
「あははははははははデッカ!!!!マジやばくね?ギンギンじゃん。アタシで興奮してたんだね」
「あの・・・・涼風さん人前だからあまりそんなことしない方が・・・」
「え~~~~~~別にいいじゃん。こっちは、アッスーのせいで随分溜まってるんだからその分発散させてよ」
いくらこの時間帯で人目があまりないとはいえ、涼風さんは周囲を構わずにと身体のいたるところをツンツンとつつき蠱惑に笑ってきた。
まるでビッチ丸出しで俺の事を誘ってきたんだけど、これ?夢なのか・・・・
っていうか普段からからかいが好きだからって今日は異様にも積極的にも度が過ぎてるんだけど・・・・もしかして涼風さん女性が一番ムラムラする時期に突入してないかこれ?
「でも、度が過ぎると警察が来るよ」
「ちぇーーーーーしょうがないな。でも続きは家でいいよね♡」
そう言うと涼風さんは、バツを悪くして離れていた。
こっちはいつでもウェルカムなんだけど、制服で、時間も高校生が外を出てはいけない時間帯で、ただでさえ通報されてもおかしくない状態だからさっさと彼女の家に向かうしかないな。
っと、その前に家に、友達の家で泊まると連絡を入れるか・・・・
うちの両親は昔から、基本放任主義だから連絡さえすれば、あまり注意はされないほどのゆるーい家庭だからな。そこが助かる。
ピロリン
おっと、さっそく母さんからメールが返信してきた。内容は・・・
『もしかして、彼女?なら家に向かう前にコンビニでゴム買っておきな!!!』
なに、メール越しで下世話な事言ってんだ。このクソ親は!!!
別に間違ってないけど・・・・・
「ねぇ、いつまでメール打ち込んでるの・・・・さっさと行こっか?」クイクイ
「う・・・・うん。今行くよ」
大分待たせたか涼風さんはクイクイと袖を引っ張ていた。
母さん、父さん・・・・・今まで迷惑かけてごめん。俺この数分後に大人になるよ・・・
できればこの初々しい報告を一周目の時にしたかったけど、その分二周目では、その武勇伝を家族会議で報告をするよ。
俺は、さりげなく彼女を近づきそっと手を握ろうとするその時・・・・・道路側に走っていた前方の車がクラクションと共に勢いよく止まっていた。
てか、この車、よくよく見ると結構な高級車なんだけど・・・・一体どんなボンボンが乗ってんだよ。
「う・・・・・嘘・・・」
「涼風さん?」
彼女はその車の主に面識があるようで身体を震わせていた。そして、その車は、エンジンを止め。ガチャとドアを開けると、見た目的に若々しいのスーツを着た男性がこっちに向かってきた。
「朱里こんなところで何をしてるんだい?」
「パ・・・・・パパ。なんでここに・・・・」
「パパ!?」
涼風さんのお父さん?見た目的に30代にしか見えないくらい若い風貌をしてるんだけど。
「パパ・・・・確かこの期間まだ国外に出張じゃないの?」
「予定に早くなって今、帰ってきたんだよ・・・・それよりも私は、なぜこんな遅くまで、外にいると聞いてるんだ。もしかしてまたいつものバンドというくだらないものをやってるのか?」
「う・・・・・それは・・」
その父親は、冷静な顔をしてるものの、話すたびに彼女はうつむきなにも言えなかった。
「私はお前がどんな趣味をしようと、あまり口を出さないことにした。だが、それはあくまで、学業の成績に影響を受けないという話だ。だが、家政婦さんの話によればロクに家に帰らずに、勉学をおろそかにしてたじゃないか?知ってるぞ。この前の夏休み明けの小テストで、赤点を取って補修を受けたじゃないか。確か、以前の中間テストでもう赤点を取らないと頭を床につけて謝罪したのはどこの誰だね?」
「・・・・・・・・・・」
「もういい。続きは、家で話すことにする。罰はそれからだ」
そういうと、その父は、涼風さんの手を握ろうとするが、彼女は、怯えて身体を抑え込みその腕を払っていた。
そして涼風さんは、自分の秘めた渾身の思いを叫んだ。
「触んな!!!普段海外勤務で家にロクに帰ってない癖に、今さら父親ぽく接してもこっちは、全然許してないからな!!!アンタがそんな性格だから母さんは早く死んだんだ!!」バシッ
「な・・・・」
その言葉を発してる最中その父親は眉一つ動かさずに頬を叩いていて、その拍子で唇が切れ血が流れていた。
このクソ親父なんてことをしやがるんだ!!!
俺は、怒り前を出ようとするが、彼女は、無言で頭を下げていた。
「フン・・・・・まぁいい。話は車の中でしよう。ところで君は朱里のなんなのだね?」
その態度にその父親は納得したが、一変、今度は俺の方に振り向いた。
突然のことなので、俺は、とりあえずなにかを話そうと口を動かすが、この親父から放っている威圧というものが俺にのしかかり緊張してあまり声がでなかった。
「え・・・・・・俺は友人です」
「友人か・・・・その割にはさっきまで随分仲が良かったのだが、もしかして付き合っているのではないのかね?」
「それは・・・ただのクラスメイトです。しかも彼女のバンドのファンなので、練習姿を見て今彼女を家に送ろうとしただけです。はい」
うん、この文章決して間違ってないよな?
『この後娘さんとHするので、今から家に行きます』なんて言ったら確実に首が飛ぶから絶対に言わない。
ってか言えるかそんなこと。
「ふむ、なるほど。ん?」
あれ?なんか疑問を浮かんでるんだけどもしかして俺の本音が読めるとかないだろうな?
「君、前どこかに会わなかったか?」
そう首をかしげながらこちらを凝視する。
てか、前にどこかで会っただと?何をいってんだ?この人・・・・・
俺はその無愛想な顔に全然覚えがないぞ・・・・・
「パパ・・・・・もういいでしょう。話は車の中で聞くから、彼に何もしないで・・・・」
「分かった。愛娘がいうのなら、そうしようか。それじゃあ行こうか朱里」
「はい」
娘の声で気を許したか、これ以上言わずに涼風さんを連れて車に乗り込んでいた。
その表情は悲しげにこっちを向け無言で訴えてきた。
くっ、なんでここで立ち止まってるんだ?
相手が涼風さん父親だろうが関係ない。
俺は、涼風さんを幸せにする為に二周目を生きてきたんだ?
どんな理由だろうが彼女にひどいことはさせない・・・
『助けて・・・・・』
え?
空耳か。ふと、脳裏にその言葉が浮かんでいた。
それは、涼風さんに少し似た幼子の声の悲痛な声が聞こえていた。
それは、今にも彼女が言いそうな感じにマッチしていて、脳内にうるさく響いており、思う通りに身体が動かなかった。
「う・・・」
俺は、その脳内に流れるメッセージか、 それともあの父親の恐怖のせいか分からないが、突然気分が悪くなり、頭を抑えながら地面に膝をついてしまった。
なんだよ。これ、どうなってんだよ?俺の身体。なんで止まってるんだよ。
あの時約束したはずだろ?何があっても彼女を助けるって言ったのに、なんでなにもできないんだよ。
この野郎ぅ・・・
結局彼女が車に乗せられ車が発進する間、なにもできずに傍観することしかできなかった。




