前より弱くてニューゲーム?
HRを終えうちの学校恒例の長期休み明けの1~3時間目恒例の国、数、英の小テストが始まった。
うちは進学校なので、この小テストでも赤点を取ったら一週間の補修と多くの課題を用意されてるから大変だ。
ちなみに俺の場合は学生時代の学力はそこそこなので高校では赤点をとったことがないから大丈夫なはずだが・・・・・・
「う・・・・・・・・・分からん」
答案を配られ楽勝と思いきや答えが頭に出ずに絶する。
記憶は一週目の成人男性までの記憶なので、高校の勉強内容なんてどうだったか全く覚えてなく頭が真っ白だった。
オカシイ・・・・・非常にオカシイぞ。普通の転生もののラノベならば、神様の恩義というもので、チート級の知識や力を貰って人生イージーモードになるはずではないのか・・・・・
も、もしかして俺、生前の低スペックのまま二周目の世界に生きぬくのか、そんなのますます無理だろう。
結局今回の三教科の小テストは、いい成果が出ずに、赤点にならないことを微かに祈るしかなかった。
無論最悪な事はこれだけではなく・・・・
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・疲れた・・・・」ヘロヘロ
「おい!!!!久東なにやってる!?まだちょっとしか走ってないじゃないか!!!」
体育の授業時、準備体操後にグラウンドを走ることになったのだが、これも思ったように動かなく少し走っただけで息が切れそうだった。
あれ?俺運動不足かな?
そういや生前営業マン時代に働いた会社は、遠方に仕事するときは会社の車を借りて他社に向かうのだ。
けど当時いた鬼先輩の自分ルールで『走りながら飛び込み営業しろ』という、無茶な方針を決められてそれ以降走りこみ営業することになり、新人時代はそのストレスとパワハラで、何回も辞めようかなと思ったな。
だけど、このまま辞めても他の職も長く続かないと思ったので死にものぐるいで成果を出して、なんとか一連の職を慣れることができたな。
そして俺が一人前の社会人になった途端にちょうどいいタイミングで、その先輩が寿退社したからそれ以降、仕事内では自走ではなく、楽したいが為に会社の車を使い営業したのが、仇になったな。
こんな目にあうのなら普段から走ればよかった・・・
「おい、休むなぁ!!!!!」
「はぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
先生の叫び声で俺は奮起を出して踏ん張るも途中でガス欠になり後半は見学と言う無断な結果になった。
そしてその放課後、俺は予想通りに3教科すべて赤点・・・・・というよりすべて一桁という最悪な結果になり補習を受けることになった。
勿論肝心の内容と言うものが、記憶の奥底から消失してしまったから分かるはずもなく、半分理解できないまま時間だけが過ぎて行き夕方6時頃にようやく終わった。のだが、
「くそーーーーーーー重いーーーーー」
クラス委員がまだあらようで、先程職員室で担任から明日の為の資料を渡され、貧弱な身体でそれを持っていくのだが、溜まりに溜まった疲労で足腰がかなり来ていてとてもえらい。
あれ?学校生活ってハードだったか?こんなの決算時で残業をやらされたくらいブラックだぞ。
それに加え、補習の影響で課題が増え一週間後には追試と言うものがある。これでまた赤点を取ればまた一週間後に再追試を受けなければいけないという悪循環が続くのだ。
あれ? やり直しして失敗だったかな。
全体的のスペックが前と比べて下がってるぞ。この調子では下手したら進級も危ういぞ。どうしたもんか・・・
トントン
「ねぇ・・・・久東君」
「うわっ・・・・・・・と・・・・と・・・と・・・と・・」
突然横から涼風さんに声をかけられビックリしふらふらしながら壁に衝突した。
耳元から一瞬漂う、甘い匂いと力を脱力させる吐息で心臓が飛び出そうだった。
あ、そういえば涼風さんも赤点(数学のみ)だったからこの時間までクラス委員の仕事をやることになったんだな。
「あははははははははははは声をかけただけでこの驚きよう・・・・・・おっかしぃ!!!」
余程俺のリアクションが面白かったか涼風さんはケラケラと笑っていた。彼女も補習で疲れてるのに元気だなぁ。これが若さか・・・
「そ・・・・・・そんなに笑わないでよ・・・急に声をかけられたら緊張する・・・よ」
俺は普段とは違い丁寧な態度で涼風さんと話をする。
今まで涼風さんと話したことはあまり無いが、今まで俺は彼女のことが好きなんだ。だから二周目の人生は、青春しつつ慎重に好印象を与えなければいけないんだ。
「ところで、気になったんだけど、まず一つ目だけどなんで、クラス委員に入ったの?」
「え・・・・・・似合わないのかな?」
「似合わないというより、そんな行動を取るとは思ってなかったって感じ」
「今日で山ほど聞いたフレーズだ。そんなに頼りないのかな?」
それは本当の事だ。今日、彼女にだけではなく担任や他の教師に同じクラスメイトに同じ質問をさせられた。よっぽど学生時代の俺は頼りなく小さかったんだなと思った。
「俺がクラス委員に入ったのはただ・・・・運命を変えたいってだけだ」
「・・・・・・・・・・ぷっ・・・・・・あははははははははははは。どしたの?久東君、今日とってもおかしいよ。なにか食べた?」
「へ?オカシイってなにが・・・・」
「だってぇ普段は背筋を曲げて歩いてるのに、真っ直ぐで姿勢がいいし、急にクラス委員になりたいって言うし、テストの時もずっとうなされて、とってもうるさかったから結構先生に怒られたよね?」
はい・・・・・・おっしゃる通り難問と戦うたびに、うなされて先生に度々注意されました。
「それだけではなく、他の授業も生気が抜けてたし、体育の授業も・・・」
「もういい。分かったからこれ以上言わないでくれ、マジで黒歴史になるから・・・ヤダァ。人生黒歴史だぁ」
俺は頭を抱え悶絶する。まさか俺の一部始終を彼女に見られたなんて・・・穴があったら入りたい。
「分かった。分かった。随分落ち込んでるの分かったから。でもこれだけは言わせて?」
嫌だ。聞かないぞ。これ以上言ったら俺は今ここから飛び降りて死に戻りするぞ~~~~
「久東君、こんなにお喋りだったっけ?今の瞬間だけで、今まで君と話した数を軽く超えてるよ」
「え・・・・・そうなの?俺そんなに喋ってないの・・・・」
うんうんと頷いていた。マジか、今までの俺はどんだけ喋るの嫌いなんだよ?
「ほら、今瞬間だって目を合わせながら話してる!!!今までは俯いて話してて挙動不審だったのに・・・」
そんなの10年もたてばコミュ障なんて、環境と努力と経験だけで変われるよ。
まぁその大半はあの鬼先輩のお陰だけどな。あの人に日々パワハラに近いしごきのお陰で俺は10年遅れでまともになれたんだ。
「アタシは好きかな?今の久東君が・・・・」
ドキッ
今、なんて言った。彼女から好きって言ってくれるなんてこれまさか・・・
「いやいやいやいやいやいやいやいや・・・・・・好きと言っても告白じゃないよ?ただ、人間的に好きなだけ。か・・・・・勘違いしないでよね別にアンタなんてなんともおもってないわよ・・・・・・・・なんちって」
俺らの時代では完全に古いツンデレキャラで冗談をかわしほほ笑んでいた。
かわいい。俺ガチで今からガチで告白しようかな・・・・
「あ・・・・・・・・・あの涼風さん・・・」
「ん?なにーーーーー」
「その・・・・・」
「朱里ーーーーーーー随分と遅かったねぇ!!!!!まず一発のせい!!」
「きゃぁ!!!」
話の途中突然涼風さんの後ろから飛びつきいきなり、男性である俺の目の前で彼女の胸や股というありとあらゆる所を触りセクハラをしてきた。
こ・・・・・この時代違いの独特の遊び人のような口調で飄々とし、授業中以外はiPodを胸ポケットでつなぎイヤホンでなにか音楽を聞いている、ベージュカラーのサラサラ長髪の彼女は、明日ヶ原楓。一言でいうとレズだ。
こうやって同性相手に遠慮なくセクハラしてくる親父系女子だ。
「ちょっとーーーーアッスー。疲れてるのにセクハラはやめて・・・・男子の前なのに」
「よいではないか~~~~~~よいではないか~~~~~~男子の前だろうと、わたしのセクハラは変わらないのだ。さぁ・・・・次は、耳元をハムハムしようかねぇ・・・それが一番の性感帯だから疲れはほぐれるだろぅ」
「いや、それだけはやめてーーーーーー」
う・・・・・・俺の目の前で涼風さんの胸が手のひらに吸い付いて強引に潰して・・・・エロい・・・・やり直し前では、AVを借りる時はレズものは興味なかったがこれをきっかけに興味が湧いてきたぞ・・・・・・
「む・・・・・・お前さんは一体なにをみてるのだぃ。悪いけど見世物じゃないのだが・・・さっさと帰ってくれぃ」
俺と目が会ったとたんに難癖付けられたよ。普段の態度から見て女性と男性の差はまるで違うな。
「てか誰?こんなのクラスにいたのかぃ?」
加えて名前も覚えてない?もう二学期だよ。せめて、苗字だけでも覚えてくれ。
「ほら、今日うちのクラス委員になった久東君だよ」
「あ・・・・・・クドウか・・・・そういえばいたなぁ・・・」
「クトウだ・・・・」
「そうだったかぃ?別にこれでいいんじゃないかぃ? 」
そういや俺、学生時代は空気過ぎて、苗字をクトウじゃなくてクドウとよく間違われたな・・・・
まぁ苗字の久東という字は、クドウが多いらしいけど、我が一家の方は濁点がない方だ。
そん時の俺は、どうでもいいからスルーしたが今回はそうはいかない。なんせクラス委員になったから、無理でも認識させないといけない。
「いいや、久東だ。覚えてくれ」
「いやだぃ。生憎わたしは男の名前を覚えるのは苦手だぃ。簡単に根暗太郎でいいだろぅ」
俺はなろうアニメの主人公か?
「そういや・・・・アンタうろ覚えだが、朱里がクラス委員になったときいの一番に手を挙げたやつかぃ。そういえばその憎たらしい顔だったな一つ忠告する」
「なんだ・・・」
俺はそう答えるといきなり手を伸ばし俺の頬をかすり壁ドンをする。
そしてドスが利いた声で脅してくる。
「どうせアンタも、朱里目的で近づこうとするキモオタなんだろぅ?悪いが委員会以外は接触を避けてくれないかぃ。アンタのような空気なのと居たら腐ってしまう。腐ったミカンの方程式ってのは知ってるだろぅ」
「ちょ・・・・アッスーそれはちょっと・・」
「・・・・・・・・・・・分かった。クラス委員以外では接触を控えるよそれでいいだろ」
「ふん・・・・分かったならそれいい。じゃあ朱里、一緒に帰ろうか・・・」
「久東君・・・・」
これでいいんだ。今の俺は彼女との身分が違うから明日ヶ原が警戒するのは分かる。
今にもとびかかりそうな相手に何をいっても無駄だ。今日は一旦退こう。
その後明日ヶ原は、涼風さんの持った荷物を手伝い一緒に教室に運んで帰っていた。
涼風さんはその帰り際に申し訳なさそうに頭を下げていた。