店長のファン
体育祭が終わり、それを頃合いに衣替えの時期に入っている。
季節は10月となり、俺がこの二周目の世界を体感すること一か月が経っていた。
それまでの経過状況と言えばこの一か月は、俺の頑張りのお陰で一周目の世界と比べればマシになり、あの涼風さんと話す機会が増え友達にも慣れた。
これだけでも良いのだが、体育祭以降あのレズの明日ヶ原にも変化があり、あの後、一回だけ休日に俺の家に来ていた。
どうやら目的はマグロ丸と遊びたいようで、俺は仕方なくそれを受け入れることになった。
そして俺がいない場所で涼風さんがやったような強引なスキンシップをしていた。
その姿を一瞬だけ見たが、それは、言葉では説明しがたい接近の仕方で、それを終えると、明日ヶ原は満足な姿で帰り、その代わりマグロ丸は、養分を吸われたかのように、干からびていた。 どうやらマグロ丸も明日ヶ原の怖さを理解してあいつの話をするたびに、マグロ丸は怯えていて、トラウマになっていたようだ。
後、勘違いしてるようだが、俺は、明日ヶ原の事は嫌いだ。それは、あいつも俺の印象は、以前とは変わらないだろう。その証拠に俺の名前は変わらず間違ってるからな。
あいつが好きなのは、可愛いもので、それ以外は興味はない。
けど、それでも変わったことはあった。
それは、涼風さんとはある程度話していいという許可が下りた。 マグロ丸には悪いが、そのおかげで休み時間にも、あいつがいる前で涼風さんと話ができて万々歳だ。
この調子で俺は、涼風さんには印象を与えなければいけない。
高校生活は残り一年と半月・・・・・・
これだけの期間なら意志は変わってくれるだろう。
多分・・・・・・
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「遅くなりましたーーーーーーー」
「祐輔君、お疲れだったね。じゃあさっそく仕事を取り掛かってくれるかな?」
「はい、分かりました」
夕方6時過ぎ俺は今しがた、授業中の居眠りのバツで山口先生の熱~い特別授業を終え、脳みそがパンク状態のままバイト先に向かい、すぐに着替え仕事をすることになった。
「あの恵さん店長は?」
「今しがた店長個人に会いに来たお客さんが来たようで、向こうの席でお話してるわよ。祐輔君悪いけど、注文聞いてくれるかな?」
「はい」
俺は伝票を片手に持ちさっそく店長がいる奥の席に向かう。
それにしても店長にお客さんかぁ。もしかしてあっち系の人かな。なんかいろいろ
気になってしまうぞ。
「だから何度も言ったじゃないの。もう、私はもうその界隈から足を洗ったからアドバイスはできないのよ」
「そこをなんとかお願いします。レンさん」
俺はさっそく店長のいる席に向かうと、店長とその話してる若い女性がなにか重要な話をしてるようで一方的に店長に頭を下げてお願いしてるようだ
加えてそのお客さんも少し歪で、年齢はおよそ20の前半くらいで、見た目的にピアスジャラジャラしてグラサンをしてるから、どこかのチンピラかバンドマンかと思われるかのようなヒール的な容姿だった。
っというかこの人どこかで見たような・・・・
とりあえず注文を聞くことにするか。
「いらっしゃいませーーーーお客様そろそろご注文をお願いします」
「あら、坊や来たのね。ちゃんと仕事頑張りなさいよ」
「は、はい」
「それで、アンタなにか注文しなさいよ?」
「では、このA定食とコーヒーのホットでお願いします」
「かしこまりました」
「あの・・・・レンさん。彼ってもしかして例のあの子ですか?」ジロジロ
「ええ、そうよ」
あれ、なんかこの人チラチラと俺の事を見てるぞ。俺の顔に何かついてるのかな?
「あの、店長この人って?」
「申し遅れました。私はこういうものです」
そういうとそのお姉さんは、少しファンキーというか中二病感がある黒いの名刺を差し出す。えーと名前は、マキという名前で・・・・・
え・・・・・・・まじかよ。
驚きのあまり唾を飲み込んだ。
「しかもWitchWigのリーダーですか・・・」
「イエス、アカリからいつも聞いてますよ」
そうニッコリと笑ってグットポーズをする。
なるほどどこかで見たと思ったらあの時ライブで見た女性ボーカルさんか。
正直涼風さん以外のメンバーは言い方は悪いが眼中になかったわ。
というか見た目に反して口調も、あの時聞いたバンド紹介と同様に丁寧口調で明るい感じがしており、そんなに悪い人には見えないな。
「差し支えなければ今どんな話をしてたか気になるのですけど」
「今勤務中よ。後でなさい」
「いえ、レンさん大丈夫ですよ」
その問いに、マキという人は快く受け入れ、先ほど話した内容を大まかに説明する。
「私は、レンさんもといスカモンの熱狂的なファンでね。スカモンの現役時代はよくCDやグッズを大量買いをし、ライブも欠かさずに行くことを欠かさずその中で自分も音楽の世界に興味を持ちなけなしのお金で中古のギターを買いましたよ」
なるほど、それでバンドの道に入ったのか・・・・けど、そのチンピラてきな見た目はどう考えてもそのバンドの影響ではないでしょう。
「で、アカリからレンさんの話を聞いて、なんとかアドバイスを貰おうとしても全然頷いてくれないんですよ」
「当たり前よ。私はもうその世界から洗ったのよ」
「そうですか・・・それは残念です」
「ただし、こっちの条件に乗るなら考えておくわ。この子に貴方のバンドの練習を見学させてくれないかしら?」
「ええ!!!」
はぁ~~~~~~~~なに言ってんだこのオカマ?
めんどくさい事をバイトに押し付けるなんて、いい人間がやるはずがないよ。
このオカマを善人と思ってた俺が馬鹿だったわ。
そんな条件で向こうが手を打つわけないでしょ。
「まぁしょうがないですね・・・では仕事が終わった後でいいですか?」
「ええ、それで構わないわ」
なぜ向こうもその条件で決めるの?いくら憧れのバンドマンのお願いだからって、素人に秘密を漏らしていいのか?
しかもなんで店長が勝手に返答するの?
抗議の為店長に耳打ちする。
「ちょっと店長どういうことですか。こっちはただでさえクタクタで家に帰ると宿題があるんですよ?」ヒソヒソ
「あら?なんで不機嫌になってるのかしら?助け船を出してるのにそんな言葉はないんじゃない?」ヒソヒソ
「なにを・・・」
「朱里ちゃんのことよ・・・貴方まだあの子に告白してないんでしょ。向こうも貴方の事を知ってるから、わざわざ貴方にチャンスを与えてるのよ。それとも私の方がお好みだったかしら」ヒソヒソ
「いえ、ありがとうございます」ヒソヒソ
「決まりね」ヒソヒソ
店長・・・・まさか俺の事を思ってこんな計らいをしてくれるなんて・・・・
そこだけは惚れてしまうわ。
「では、申し訳ありませんが名刺を少し貸してください」
「あ・・・・・はい」
マキさんは、その名刺に速筆でどこかの住所を書き示していた。どうやらその場所が、彼女たちバンドが練習してる場所のようだ。
「それでは、心待ちしてますね?王子様君」
最後の言葉が気になりながらも気を取り直して、バイトに精を出すことにした。
そして勤務時間を終えると早速その場所に向かうことにする。




