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三日月の王子様

『ねぇ、あかりちゃんが好きな男の子って誰なの?』

『え?なになに突然?』



それは、遠い記憶の風景・・・・・



背景を見るに、俺がかつて通ってた小学校の風景だ。



その映像には、女友達の中心にいる一人の女の子がいる。幼くなって、髪も長くなっているが、見覚えがある顔だった。間違いないこの女の子は涼風さんだ。

てことは、これは小学生の頃の思い出なのか?


小学時代の俺と涼風さんは、小3のクラス替えから小6まで同じクラスだ。なおかつ彼女の成長具合をみると恐らく小5あたりの記憶だろう。

それでも記憶が曖昧な為正確な季節や日時などは分からない。



けど、周囲には同じクラスメイトが、ほぼそろって無邪気に教室中をワイワイ騒いでるのだからおそらく何時間目の休み時間なのだろう。



その空間の中、俺はまるで幽霊になった感じでここにいる。どうやら俺は夢を見ているようだ。

そしてその中で、一人机に伏して寝ている男の子がいる。あれは間違いない。 あの頃の俺だ。




その当時、俺は絶賛ボッチを満喫して、同級生の友人とは話そうとせず、いつものように寝たふりをして次の授業までやり過ごしていた。

しかしみんなが集まってる涼風さんの席と俺の席とは、二席間の空間にいるので彼女らの話は丸聞こえで、一連の話を聞いていた。


『聞いてたでしょ?ゆっこが、近所の幼馴染に告白された話?』

『うんうん。聞いたけど、振ったんだよね』

『そうなの。相手が中学生だったから年の差が結構あるから勢いで振ったんだよ。それでコイバナの話題になったんだよ』

『えーーーーーでもそれって修学旅行で話すんじゃないの?ここ男子の前だよ』

そんな中もう一人のお友達が声を出す。



『別にいいじゃない。コイバナってのはいつ話してもいいんだよ。それに、ここにいるクラスのガキンチョは恋愛に興味ないから好きに話してもいいでしょ』

聞いてた当時どうでもいい会話だったが、今思えば毒舌な同級生だな。




『もうみんな話したから後朱里ちゃんだけだよ。ほら早くしないと授業が始まるよ・・・』

『う~~~~~~ん・・・・・・・』

ずいずいと接近する友達に、当時の涼風さんは、言おうかどうか迷いの顔を見せ、時計をチラチラとみていた。



『駄目だよ。ここで逃げてたら絶交するよ!!』

『そーーーーだ。そーーーーーだ。逃げるの反対!!!』

ぶーーーーーぶーーーーー



『分かったよ。言えばいいんでしょ』

『分かったならよろしい』

友達が、一斉に迫ったので、なにも返せなく渋々告白することになったようだ。そして、『こほん』とせき込みをした後、恥ずかしそうに言った。




『あたしが好きなのは・・・・・・三日月の王子様だよ』

『はい?王子様?』

その意外過ぎる言葉に、一斉に固まった。



『そうだよ・・・・あたしが好きなのは、三日月の王子様。その人は月に住んでて、すごく頼りがいがあって勇敢で、困ってる時に助けてくれる私だけのヒーロー・・・・・それがあたしの好きな人』

涼風さんは胸に手を当て浸るように語っていたが、みんなは、苦笑いをしていた。




『ねぇ・・・・それ童話の話だよね』

『え・・・・・え?そういう話じゃないの?』

『あのね、誰が空想の話をしろって言ったのよ。現実の話だよ。現実の・・・・・』

『現実?あ、あはははははは?そうなの?聞いてなかった。あははははは』

『もう、人の話最後に聞いてよ~~~~~あかりちゃん』

『ごめんごめん。けど、あたしには好きな人は、今はいないよ』

『そう、なら仕方ないか・・・・』

そう言いながら涼風さんは、後ろ髪をポリポリとかきながら笑っていた。




キーンコーンカーンコーン

『・・・・・・・・・』

そしてチャイムの音がなったところで声が遠のき意識がもうろうとする。

なんだ・・・・これは・・・・




久東・・・・・・・・おい、久東・・・・・・・




ん・・・・・・誰かの声が聞こえる。この感じ前にも似たようなことがったような?もしかしてこれ夢から目を覚める現象なのか?



「おい、久東起きないか」コツン


「痛っ!!!」

後頭部に痛みを感じ俺は、すぐに目を覚め起きる。

ここは、教室の中で・・・・・目の前には、眉間に顔を寄せ、見た感じご立腹の山口先生が片手に教科書を握り俺の前に突っ立ていた。 どうやらその教科書で俺をコツンと軽く叩いたようだ。

俺が起きると周囲のクラスメイトはすでに何人かクスクスと笑っていた。




「久東お前なにか言いたいことはあるか・・・」

リクエストがあったので髪をたくし上げ華麗に返答する。



「サイクロン☆ジョーカー・・・・・デデンデンデン☆・・・さぁ、お前の罪を数えろ」

「罪を数えるのはお前だ!!!放課後特別授業と宿題倍の刑だ」

『ぷぷぷぷぷぷぷぷ』



このやりとりも二回目・・・・

余計な事を言って火に油を注ぎ、山口先生特有の特別授業コースとみんなに笑われることになっていた。

なんで同じことを二回も繰り返すんだよ俺は・・・・




その授業終了後、クラスメイトにまたまた一日中いじられることになり、余計に疲れてしまった。




それにしてもなんで急にこんな夢を見てしまうんだ?

もしかしてこの前の体育祭の影響で疲れたのか・・・・ けど、どうでもいい。たるんでる俺が悪いのだから、正直に認め受け入れるしかない。

そう思いながらふと、クスクスと笑ってる涼風さんを一瞬だけ見つめた。




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