明日ヶ原楓⑥
スーパーでポン酢を買い帰宅するとすでに父さんが帰ってきていて夕食になったのだが・・・・
「へえ・・・・この子が祐輔のお友達かぁ~~~~~~」
「そうなのよお父さん、楓ちゃんって言うのよ」
「よ、よろしくお願いします」ズズ・・・
なんで夕食までいるんだよぉ~~~~~~
明日ヶ原は、味噌汁をすすり、黙々と天ぷらを食べていた。
どうやら本人も申し訳なさそうにしているように見えた。
そりゃ母さんに無理に薦められたから断りにくいのは分かるけど、なんか気まずいんだよなぁ。
「ニャーーーーー!!!」
「おや、これが食べたいのかい?」
「ニャーーーー!!」
俺が普通にエビの天ぷらを食べていると、マグロ丸がクイクイとそれを食べたそうにしてたので、エビを小さく分けマグロ丸に食べさした。
「ニャーーーーーーニャニャ」
「おっ、マグロ丸珍しく上機嫌なんだな。よっぽどこの子の事気に入ってんだな」
「でしょーーーーおまけに楓ちゃんから祐輔の事色々聞いちゃったのよ」プププ
母さんはそうニヤケ、含み笑いをしていた。
おい、買い物中にあの二人は何の話をしてたんだ?そこが一番気になるのだが・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
食事中母さんは、俺が女のクラスメイトを連れてきてテンションが上がったか、上機嫌で俺の過去の事を明日ヶ原に話していた。
母は空気を読まずに俺の黒歴史を話すので、とても恥ずかしく、なにも言えなかった。家族、親戚内で言うのはいいのだが、クラスメイトに・・・・・しかも天敵に言われるのがとても嫌だ。
母さんはどうやら俺と明日ヶ原は相性がいいように見えるという節穴な目をしているのだ。だからこんなにペラペラと話している。
最悪だ・・・・もしそれがきっかけで弱みを付け込まれたら、今後涼風さんと関わることができなくなってしまう。
食事を終え、俺は今リビングで父さんと共に、プロ野球中継を見ている一方キッチンでは明日ヶ原は母さんと共に食事の後片付けをしており、俺はテレビを見ながらその光景を監視していた。
「ありがとう。楓ちゃん別に皿洗いなんてしなくていいのに。のんびりしてもいいのよ」
「いえ・・・・そう言うわけにも行けませんねぇ。わたしに出来ることはこれくらいなので、恩を返させてくだせぇ」
「なになに、楓ちゃんその言葉使い、すっごく面白いね」
「そ、そうですかぃ」
しかも、言葉もさっきまでの緊張気味の敬語が一変、普段使う明日ヶ原語に敬語をアレンジしてるぞ。
おいおい、見てる限り意外にも息が合ってるじゃないか。
どうやら俺がいない間に変な絆が芽生えたようで、その仲は完全に友人の域だった。
「おいおい、息子よ。なに世界が滅んだように絶望な顔をしてるんだ」
「んあ?父さん」
同じく俺と同じくテレビを見ながらあの二人の光景を見た父さんが俺に気をかけて話しかける。
「はははははっ。それにしてもあの人見知りの祐輔が女の子を連れてくるなんて父さん、嬉しすぎて逆に逝っちゃいそうだよ。」
「心配するな。父さんは10年後も健在だ」
「おかしなことをいうな。その口ぶりだとまるで未来の事を予測した風に聞こえるぞ?」
「それくらい健康ってことだよ」
「ほぅ、お前中々言うようになったじゃないか。今まであんま口を聞いてくれないのがだったのがまるで嘘みたいじゃないか?」
「そうか?」
そう言うと親父は、フフッと笑いながら俺に耳打ちする。
「ところでお前、朱里ちゃんの事はもう諦めたのか」ボソッ
「--------------」かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
突然の事で俺は顔を赤くなって取り乱してしまう。
「な・・・・・・なななななななななななな何言ってんだクソ親父!!!!何突然涼風さんの事ぶっこんでんだ?」
「おいおい、なに赤くなってんだよ。小さい時はよく朱里ちゃん、朱里ちゃんとよく話してくれたじゃないか?あの時は、まったく話したことない相手にこんなに饒舌になるからストーカーになるんじゃないかと母さんと共に心配してたぞ」
「そんなの今関係ないだろ?こんな所でそんな話するな」
「なら、大声で言うお前も大概だぞ」
「はっ・・・・・」
気が付くとキッチンにいた二人はこちらを見ていて今の一連のやり取りは筒抜けだった。
終わった・・・・・
落ち込む俺にマグロ丸は頭を香ばしい肉球でよしよしと撫でてくれるが、もう後の祭りだ。
そしてその後俺はしばらく無言を貫くことにした。
しばらくすると明日ヶ原は帰るというので、母さんに言われ、無理やり明日ヶ原と共に玄関を出て見送ることになり、お供としてマグロ丸を抱えて玄関に出る。
外に出ると明日ヶ原は素の姿に戻りイヤホンをし、WitchWigの曲を流す。
「今日は、ご飯まで食べさせてくれて申し訳ないねぇ。お母さんには後でお礼を言ってくれぃ」
「ああ、分かった」
「どうしたんだい。さっきから口数が少ないじゃないかぃ。もしかして、あの両親から余計な事を言われて、朱里に変な事ができないと思ったのかぃ?」
予想通り明日ヶ原は、にやけ勝ち誇った顔をしていた。
やっぱり脅迫するつもりか・・・・
と思ったが、俺と視線を合わせるとため息をこぼした。
「はぁ、なに変な妄想をしてるんだぃ?生憎わたしは、人の弱みに漬け込むという卑怯な真似をしないねぇ。逆にそういう人間は大嫌いだぁ」ドン!!!
「す・・・・・すまない」
「別にお礼を言われる筋合いはないねぇ。それにわたしとお前は、体育祭まで協力関係があるから、こういう事で亀裂が走ったら、朱里が不機嫌になってしまうからねぇ」
そう言うと明日ヶ原は、目を逸らしていた。
「ニャーニャー」
「マグロ丸?」
「おっと」
突然マグロ丸はジタバタと動き回り、俺の腕をすり抜け明日ヶ原の方にジャンプをし、キャッチをする。
マグロ丸は明日ヶ原の顔を触れプニプニと肉球を転がした。
突然の事で明日ヶ原は、マグロ丸を地面にゆっくりと置き二歩後退し、顔を赤くし頬をこすっていた。
「なにをするんだぃ!!!」
「この仕草。マグロ丸明日ヶ原に抱きしめられたいのか」
「は?」
「いや・・・・・マグロ丸が、上機嫌に顔を触れる時は抱きしめられることを要求してるんだよ。マグロ丸が喜ぶからやらないか?」
「・・・・・・・」じーーーーーー
「ニャーーーーーー」
マグロ丸の潤んだ瞳と明日ヶ原のジト目が睨みを利かせており、しばらくすると明日ヶ原は後ろを向いた。
「今日はいい。また機会があればやってもらおうかねぇ」
「そうか・・・・・残念だなマグロ丸?」
「ニャーニャー」ぴょこ
マグロ丸は俺に向けて飛びつき抱きかかえる。その光景をあいつはチラ見する。
「じゃあクドウ、また学校で・・空いてる時間があれば二人三脚の練習するかい?」
「だから俺はクトウだって・・・あっそうだ。おい、明日ヶ原!!!」
俺の声で振り向きマグロ丸を片手に抱え重いのを我慢し、涼風さんがやったあのおまじないをする為、指を向ける」
「C915」ドヤァ
「はっ?なにをやってるんだぃ。とうとうイかれたのかぃ?」
あれ?なんだこの冷めた表情は?もしかしておまじないのポーズ間違えたか?
「いや涼風さんがやってたおまじないだよ。もしかして知らないのか?」
「さぁ、わたしはなにも?今度朱里に聞いてもらおうかねぇ」
顎に手を置き疑問の表情を浮かんだ明日ヶ原は、それ以降なにも行動を示さずその場を後にした。
そしてその後日俺と明日ヶ原は、涼風さんが体育祭の練習をする度に一緒にグラウンドを出て、二人三脚の練習をすることにし、勝つためにいろいろ戦略を立てた。
そして、いよいよ体育祭当日に迫った。




