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明日ヶ原楓④

次の日の放課後のグラウンドにて涼風さんの中心の元、うちのクラスがすでに何人か集まって練習をしている中、ほんの数分後遅れて明日ヶ原が体操服姿で登場し、仏頂面で腕を組みながらやってきた。



「約束通り来てくれたんだな」

「まぁ・・・・・約束は約束だからねぇ。 仕方ないから付き合ってやるかぃ」

仕方ない感じで頭を掻きむしりながら俺と一緒に歩くと涼風さんがこっちに向かってくる。



「アッスーやっと来てくれたんだ。良かったぁ。最後まで来ないと思って心配したんだよ」

「ふっ、心配してくれたのかぃ。朱里ぃ。なら、今宵は燃えるほど激しい運動をしようかねぇ・・・」じゅるり

「ちょっ、アッスーそんな目で見ないでよ」

明日ヶ原は、相変わらずのレズ度全開で涎をたらし恍惚な表情で涼風さんに近づこうとするが、涼風さんはサラリと躱していた。




「おっと・・・・危ない危ない。それじゃアタシちょっとリレーの練習していくから二人共仲良くね」

「あっ!!!つまんないねぇ」

そう言いながら涼風さんは逃げるかのようにこの場を立ち去っていた。

そしてこの場には俺達だけが残り、とりあえず一緒に持ってきた飲料水やタオルは、グラウンドの隅に設置しているベンチに置き、さっそく種目練習をする。





二人三脚のメンバーは男女混合の競技なので、思春期男女にとっては好きでもない相手と組まれると気まずくなり、一回だけ練習するとそれ以降参加しないようで、今いる二人三脚のメンバーは俺達のペアしかいなかった。




「じゃあ・・・やるか」

「はぁ・・・・めんどくさいねぇ・・・あんまベタベタ触らないでくれるかぃ。気持ち悪いから」

「うるさいよ。せっかく来たんだから文句を言わないでくれ」

そう呟きながらも俺達は密着し内側の足をタスキで強く結び互いにお互いの肩を持つ。明日ヶ原は、女子の中では高身長の170センチ近くあり、俺とほぼ同じ高さなので負荷などなく姿勢が良く組むことができた。



カシャカシャ

「・・・・・・・・」

組んだのはいいのだが、明日ヶ原は練習にも関わらずイヤホンをしており、その雑音がこちらの耳に丸聞こえだ。



っていうかよくよく聞いてみるとこの音楽涼風さん達バンドの曲じゃないか・・・・

どんだけ涼風さんの事が好きなんだよ。




「さて、いくかねぇ」

「その前に、イヤホンはポケットに閉まってくれ邪魔だから」

「ちっ、いちいちうるさい男だねぇ」

ネチネチっていうより正論をかましただけなんだけど・・・

明日ヶ原は、しぶしぶイヤホンをしまい改めて声をかけて歩を進める。




『せーーーーーーの、一、二・・・一、二・・・一、二・・・』

ゆっくりとだが、俺達は一歩一歩タイミングよく進めることとなり、徐々にスピードを上げようとする。




「あ・・・・・すまん。タイミングがズレた」

「気にしないでくれぇ。次は、もっとゆっくりとテンポよくやろうかねぇ」

「分かった」

最初はいやいやだったものの、明日ヶ原は一緒に練習するたびに熱心になって付き合ってくれている。


普段は、のんびりとして何を考えてるか分からないけど、こいつ授業とか行事は真面目にこなしてるんだったな。


うろ覚えだが、確か一周目の記憶での聞いた情報だと、高校後は医者を目指すために医療大学に進学し、どこかの大学病院で研修医をしてるって聞いたことがあるな。

涼風さんもそうだが、こいつも見た目で判断できないな。



「うっ・・・・」

しまった。よそ事を考えたせいでつまずいてお互いの膝が付いてしまった。




「なにをやってるんだぃ。まったく」

「ごめん・・・・」

「まぁいい休憩だ」

ある程度いい経験を得たので一度休憩をとることになりあのベンチに向かい水分摂取をし、汗を拭きとる。携帯を見ると練習をしてから30分は立っていた。


今の時期は九月の下旬なのでそれほど熱くなく、逆に風がひんやりとしたので気持ちいい気温となっていた。





「明日ヶ原、膝大丈夫か・・・」

「気にしないでくれぃ。つばつけたら治る。っていうかそれはお互い様だろう」

「ははっ・・・・そうだよな」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

う・・・・・せっかくペアになったのに会話が続かない。気まずい。



明日ヶ原は、沈黙の間、遠くからリレー種目をこなしてる涼風さんをうっとりとした表情で見とれていた。

いやいやここから100メートルほど離れてるのになんでその姿が鮮明に見えるわけ?視力2,0を明らかに超えてるだろ?



このまま沈黙だと逆に怖いので声をかけることにする。





「なぁ・・・・俺達この調子ならクラスで一番になれるんじゃないか?」

「ん?・・・そうさねぇ、体育祭なんてお遊び競技だから適当にやってる連中が多いから、普通に一位はとれるだろぅ。っというか、お前やる気満々だねぇ」

「当たり前だよ。だって俺これでもクラス委員だから、今まで馬鹿にされた分見返したいと思ったんだよ」

「はっ、見返すもなにも、もともと印象なんてないからどうとも思ってないねぇ」

相変わらずの辛辣な意見だ。



「ま、昨日も言った通りこういうのは嫌いじゃない。あの恩もあるから付き合ってやるよぉ。どうせお前は、この先いい事なんてなさそうだからいい思い出作ろうかねぇ」

口は悪いが、ちゃんと俺の事を最後まで付き合ってくれてるようだ。

大方、あの座布団を取った時の恩返しなんだろうけど、明日ヶ原って意外に世話好きなんだな。



一周目ではこいつの事は全く知らなかったけど、知ることで人の印象は変わるもんだな。

嫌いなのは変わりないが、涼風さんに近づく為に外堀攻略は避けられないので、少しでもいい印象を得るしかないのだ。




「よし、休憩は終わったし、そろそろ行くか」

「しょうがない。付き合ってやるかねぇ」

10分ほど休憩し俺達はさっそく練習を再開する。

この種目練習は、涼風さんと事前に話したところ、キリがいいとこで終了するようだ。

それに加え今日はバイトが休みなので思う存分やれるのだ。



俺達は再び二人三脚をやるためタスキに足を結ぶのだが、より速いタイムを出すために前よりきつく結ぶことにする。




「これ、きつくないかぃ?」

「我慢しろ。これも記録を伸ばすためだ」

「はぁ・・・・この前まで陰キャだったのに、随分ノリノリだねぇ。いいけど」

鼻息で笑いながら再び互いの肩を持ち一歩、一歩歩くのだが、その途中、明日ヶ原には急に立ち止まり危うくこけそうになった。

なんだよもう。





「おい、どうした?急に止まるなよ」

俺の声に反応はなく、わなわなと震えあがり、殺意的な眼光を飛ばしており、その視線に目を向ける。 それは、休憩中の涼風さんの元に、どこからかゴリ本が湧いてきて、声は聞こえないが懲りずに口説こうとしていた。



「ゴリ本・・・・・どうやらきついお灸が必要だねぇ」

あまりにも突然の事で明日ヶ原は我を忘れ、指の骨を流しながらゴリ本の方に向かってくる。

って・・・・おい足にタスキが巻いてること忘れてないか?



「わっ!!!」

そのことを声をかけようとするがすでに遅く、俺は涼風に引きずられバランスを崩し倒れることになった。






「ん・・・・・・いたたたたたたたた」

我に返り俺は起き上がろうとすると、気が付くと俺は明日ヶ原を押し倒すような状況になっており、タスキが結ばれている右膝が明日ヶ原の股間あたりに接触をしてしまった。

その影響かあいつの口元から小さく息がこぼれて吐息が俺の鼻孔に届いた。



「ん?なんだなんだ・・・」

ざわざわ




大胆にもグラウンドのど真ん中でこんな珍しい体勢になって、とても目立つので一瞬にして注目されていた。




この状況の中、明日ヶ原は今置かれている状況を理解し、震え上げながら静かに声を出す。




「なにをしてるんだぃ。お前は・・・」

この状況世間的にはラッキースケベと言われるのだが、二次元も三次元もその現象が起こると変わりなく相手は怒りを見せ・・・・・・・





「死にさらせぃ!!!!!」

「ぐはっ」

迷いなく暴力を受けることになる。




現状俺は、その激しい怒号と共に鼻に向かって右ストレートを食らわされ、一瞬意識を失った。






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