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ラノベ事情にはお任せを

その翌日、俺はいつものように登校し、教室に入るといきなり佐々波が満足気にラノベを返してきてくれた。



「久東、これ面白かったわ。また頼むわ」

「やっと返してくれたか。遅いんだよ」

「部活があんだから仕方ねぇだろ」



やつが借りてたのは、『爆眼のシャカ』という、ラノベもアニメも大成功したラノベで、この時期は絶賛二期が放送中なので、それに合わせて貸したのだ。



内容はザックリ説明すると、ただの高校生の主人公はひょんなことから、一般人の存在を食う敵に襲われ絶体絶命の状況のところ、化物退治専門の傭兵である美少女、シャカに助けられた。

そして主人公は、それまで平和だった日常から一変、殺伐とした戦いに巻き込まれる、バトル系純ラブコメだ。



一周目の世界もこうして奴にラノベを貸していたなぁ。



「どうだ。8巻の内容は?今ちょうどアニメで放送してる回だから、補完としていいだろ?」

「まぁ、確かに良かったけどな・・・・個人的にお色気多くないか?特に、そのシャカのメイドと主人公との混浴とか要らなくね?それにこの世界の男、非戦闘員多すぎて見ててイライラするわ。もっとヒャッハー系の戦闘狂の男キャラ出せよ」



ラノベになにを求めてるんだよ。これが嫌なら、王道のジャ〇プでも読んでろよ。




「そんなに嫌ならもう貸さないぞ」

「分かったよ。今日の休み時間、シャカが好きなカレーでもおごるから勘弁しろ」

「しょうがないな。次のラノベは、これでどうだ?」

「ん?あーーーーこれ見たことある。確か『温村ハルキシリーズ』だな。そういや、シャカと同じイラストレーターで大ヒットだったな」

「しかも、シリーズでもっとも反響があった巨編の『失踪編』だぞ」

「おっしゃー。待ってました!!!最初の『愉悦編』以来の神作来たわコレ」



佐々波の奴ガキのようにはしゃぎやがって。手のひら返しが激しいな。



まぁ、無理もないか。この『温村ハルキシリーズ』は今まで空気だったラノベを流行らせ社会現象を起こしていて、アニメ化はもちろんのことゲーム、映画化も成功し、この十年後にも語り続けられる名作だ。




まぁ正直言ってこの時期がピークだったな。

その3年後に放送した新作アニメでは、ネットの〇ちゃんねるにて震撼させた。 同じ話を12回も行う『エンドレストゥエルブ』事件で、なぜか原作者までとばっちりですごく叩かれていて、これが理由かそれ以降の新作は音沙汰ないんだよな。



正直あの人の作品が好きだったから死ぬ前にもう一度続編見たかったな。



ん?あれ?なんか突然視界が暗くなったぞ。 それに加え後頭部になにか固いものが当たっており、後から聞き覚えがある声が後ろから響いてくる。





「だーれだ!!!」

「す・・・・・・涼風さん?」

「当ったりーーーーーー正解だね」

正解すると彼女はヒョコッと飛び出し笑顔を見せていた。

俺にとってはこの笑顔は保養となるのだが、佐々波の場合は、逆にイライラして舌打ちしてた。






「チッ、何しに来たんだよ。ビ・・・涼風」

今、ビチ子って言いかけたな。処す?処す?



「なんでって、久東君友達なのに、あんまりアタシ達のグループに入らないから、ちょっと理由が聞きたいんだよね。く・と・う君?」

やめて。そんな吸い込まれそうな瞳で俺を見ないでくれ。凝視するだけで照れすぎて顔が出てしまう。




「あーーーーーあいつは、雌ライオンみたいな性格だからな。単体では獲物を襲えれるけど群れると、どう襲えば分からないから遠慮しがちになってしまうんだよ」

「なるほど、久東君も実際どうだったね」

言い方ぁ。間違ってないけど、もっとまともなイメージを言えよ。




「なら今度は、アタシが一人の時は遠慮なく声をかけてね♡」ボソッ

くはっ。突然の耳打ちは止めてくれ・・・・・耳が萌え死んでしまう。

俺はこの変顔を見せないため机に顔をつけ伏っすることにした。




「くっ・・・・・・くっくっ」

「ありゃ、なんか悶えてるみたいだけどもしかしてアタシと同じ耳が性感帯なのかな?」

「気にするな。もともとそういう奴だ」

佐々波後で覚えてろよ・・・・・





しばらくすると落ち着くことができたので、改めて涼風さんと話をする。



「ごめん・・・変なところ見せてもらって」

「いやいやいいよ。久東君の弱点が分かっただけでもいい成果だよ。それよりなにこの本?」

そう言うと涼風さんは、机の上にあるラノベをパラパラと開いていた。



「ラノベだよ。陰キャグループが愛用する娯楽の一種だ」

「へぇーーーーーー小説みたいな感じだけど、え?なにこの挿絵すっごくエロくない?」

「はっ、どうせ、お前らみたいなリア充共は、こんな萌え絵見て陰で見下してるんだろ。別にいいさ。お前ら如きがラノベの素晴らしさなんてカケラも理解できるはずないだろうな。一生イケメン男子の尻でも追いかけろ。ケッ」



「おい、さすがにその言い方はないだろ」

「ムッ・・・・なんかイラっときたな。だったらそのラノベの素晴らしさというヤツをこの場で教えて貰おうかな?」

「よく言った。詳しく知りたければ、そこの久東に聞け。あいつはラノベを腐るほど持ってる愛好家だからな」

「え・・・・俺?」


ん?今なんて言ったんだ?

なんか涼風さんにラノベについて教えるという俺得イベントが発生したのだけど。


ふと、佐々波の方に振り向き目が合うと歯を見せ輝かせていた。


・・・・・・もしかして先ほど悪者ぶってたのも俺と彼女を仲良くさせるための布石かよ。お前は、やっぱり永遠の友人だ。




「分かった・・・俺が涼風さんに、ラノベの事を教えるけど・・・・」チラッ

「大丈夫。アッスー達には秘密にするから・・・それでいい?」

「分かった。じゃあ放課後でいいかな?」

「いいけどバイトは?」

「うん。今日は休み」

「決まりだね。よろしくお願いします先生」

彼女はニッコリと笑い頭を下げた後、上機嫌でリア充グループに戻った。




今日のMVPとして佐々波には今日の昼飯に好物の焼きそばパンに加え、ミックスジュースでもおごるか。


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