秘密の会話
HRを終え、一時間目は担任の山口先生の現国の授業が始まった。
先生は真面目に片手に教科書を持ちカリカリと黒板に書いており、俺を含め大概の生徒はノートを書き写しており、眠たそうな明日ヶ原でさえ真面目にノートを書き写してるのだ。
それもそのはず山口先生は黒板に字を書くスピードが早くすぐに黒板に消すので、一瞬でもボーッとしてると途中から授業をついて行くのは不可能なようだ。
まぁその反面情熱的で授業が分からない生徒には放課後丁寧に教えてくれるのだが、それがまためんどくさいのだ。
なので俺は、それをついて行くのに必死だった。
ブブブブブブブブ
「ん?」
今しがたポケットにしまった携帯からメールのバイブ音が流れたな。
俺は友達少ないから今の時間来るのは迷惑メールくらいだろ?こんなの無視無視。
ちょいちょい
しばらくすると俺の脇腹になにかが触れた音がし、振り向くと涼風さんが俺のポケットに紙の切れ端を入れていた。一体授業中に何やってんのこの人?
とりあえず俺はその紙をこっそりと開く。内容は・・・・・
『おい、なんでさっきからメールしてんのになんで開かないの(怒り)』
メール?なにそれ・・・・・・
先生と隣の明日ヶ原に見えないように死角を駆使して携帯を開く。すると、この授業だけで涼風さんから8件くらい同じ内容が送られていた。
『久東君、せっかく友達になったのに、アッスー達との輪に入らないの?悲しいよーーーーーー』
すぐに涼風さんの方に振り向くと授業中にも関わらずメールを打ち込んでいて、
ブブブブブ
ほら、今9件目の同じメールが来ました。見た感じ授業を受ける気はないようだ。
てか、そんな理由だけで授業中にメール打ってんの?授業舐めるな!!!
と思っても一向に止めずに、また、メールが来てるんだけど・・・・・
はぁ・・・・・後でノートは佐々波に書き写すとして、仕方ない付き合うことにするか。
『何やってんの涼風さん。授業中だよ?』
『あ!!!!やっと返信してくれた。完全に無視られたかと思った。』
『授業とかだるいじゃん。そんなの聞くより脳内でギター演奏するの楽しいし・・・勉強とか中間テスト2週間前でいいじゃん』
その結果小テストで数学補修受けたのは、どこの誰ですかね?
『分かったよ。しょうがない付き合うよ?で、なんで涼風さんのグループの輪に入らないかって?』
『そう☆今の久東君ならいつでもウェルカムだよ』
『その気持ちありがたいけど、俺が涼風さんのグループに加わると迷惑がかかるから』
『なんで?もしかして、この前のアッスーのこと気にしてる訳?そんなの気にしなくていいじゃん。いつもの事だよ』
『そうだけど・・・・俺のような根暗がリア充グループを受け入れるはずはない。そんなことしたら涼風さんに恥をかくだけだ。大体今まで話したことない相手にどうやって話しかければいいと思うの?』
『もういい。聞くんじゃなかった』
「しまったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「おい、久東?なにがしまったって?」
ざわざわ
はっ。つい本音を大声で叫んでしまい反射的に立ち上がってしまった。
クラスメイトは俺のことを見上げ注目の的になった。
くそ・・・・メールでつい本心が出てしまい、涼風さんに嫌われてしまいその反動で感情が爆発してしまった。
いや、そんなことよりもこの状況どうやって打破すればいいんだ?
「いえ、先生の黒板を消すスピードが早すぎて間に合いませんでした」
「そうか、では片手に持ってるそれはなんだね?」
示された方向に向けると俺は携帯を強く握っていて、授業中に携帯をいじったことがばれてしまった。
「これはその・・・・・・えーーーーーと、番号を5・5・5と押して変身☆せーーーの仮面〇イダーになりましたーーーーー」
何やってんだ俺・・・・無意識に火にガソリンまいて大惨事になってしまった。
なんでこの状況でクソ寒いギャグ言うんだよ。いくら慌てる状況だからって、これはないだろ?
あまりにもショック過ぎて暴走してしまった。
『ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ』
おっクラスでは結構ウけてるぞ?俺お笑いのセンスあるかも・・・・
「わはははははははははは。いいセンスだ。結構面白いぞ。久東」
しかも先生までウケてるぞ。もしかしたらなんとか・・・・
「はい。没収」
なりませんでした。その後俺は授業後に職員室に連れられ、先生からの熱い~~~~放課後の特別授業をうけることになった。
そしてその三時間目の休み時間、前の休み時間が取れなかったのでその分机にしがみつくことにした。
「最悪だぁ~~~~~~」
「お前の自業自得だろ?」
「そりゃそうだけどさぁ・・・・でも寂しい時に誰かからメールが来てしまったら、嬉しくてつい返信したくなるだろ?」
「ならねぇわ。お前寂しがりやにも程があるぞ。困った時には俺に相談乗れ。愚痴ぐらい聞いてやる」
佐々波ありがとう。だが、今の俺にとってはその気遣いは、うっとおしいことこの上ないのだ。
それよりも今は、涼風さんに謝ることが先決だろうけど・・・メール返信してくれるかな?
ブブブブブブ
ちょうどいいタイミングで涼風さんからメールが来たぞ。内容は・・・と
『あははははははははは仮面〇イダー君、災難だね・・・・・さっきの状況ウケ過ぎてお腹が壊れそうになったよ』
メール越しにも涼風さんに笑われてしまった。
『それはそれとして、笑わしてもらったお礼に一緒に学食に食べに行かない?』
え・・・・・まさかの逆転?この状況で二人で学食?この急展開なんてラブコメ?
『わ、分かった。俺弁当だけど一緒に付き合うよ』
『良かったーーーーーありがとうでは、またね』
しゃあ!!!!なんだか分からないけど好印象与えたぞ。二人で学食イベントなんて、ラブコメにはありがちな展開だぞ。
正直学食なんて言ったことはないが、涼風さんのそばについて行けば大丈夫だろう。
いやーーーー昼休み早くならないかなーーーーー
そして待望の昼休み。俺は涼風さんの誘いで学食に向かい、席に座ろうとする・・・・・が・・・
「よぉ、仮面〇イダー君、こっち空いてるぜ・・・・いいから座れよ」
「ね、ね、さっきの変身シーンやってよ?今度は、写真とっておくから」
「仮面〇イダー君、メロンパンいる?」
「なんだぃ、みんなそんな寒いギャグがおもしろぃのかい?それのどこがおもしろいんだか?」
「いやいや、アッスー。あの久東君が堂々と授業中でギャグやってくれたじゃん?こんな勇者滅多にいないよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
気づくと俺は涼風さん達リア充グループと昼飯を食べることになった。
なんでこんなことになったんだ?俺はこいつらと関わりたくないのに・・・・
あ・・・・・・・・そういや、メールではどこも『二人で』って文字はなかったな。
まんまと涼風さんの術中にはめられた俺であった。




