友達から・・・・・
「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・ちょっと待ってよ涼風さん」
「うん、ここまで・・・・・なら大丈夫かな?」
涼風さんに引っ張られ、俺はライブハウスから少し離れた人気が少ない路地裏に着き、やっと俺の手を放してその後背中から壁にもたれ横になり、俺も大の字になって倒れた。
「ぜーーーーーーはーーーーーーーぜーーーーはーーーーはぁはぁ・・・もう走れない」
「あははははははははは、運動不足だね」
「ほっといてよ。それより、さっきのあれなに?」
「え?なんのこと?」
「とぼけないでよ。さっきの悪そうな兄ちゃん一体なにものなんだよ?」
「・・・・・・どうしても説明しなきゃいけないかな?」
「できればお願いします。どんな状況でも俺は受け入れるから」
雰囲気からして言いたくなさそうな顔をしたが、観念したかのように洗いざらい話してくれるようで、俺も真剣に話を聞くため起き上がって目を合わせてしっかりと聞いた。
「まぁ・・・・大したことないから別にいいか・・・・さっきの人、あのライブハウスのオーナーよ」
「え?オーナー?あのヤクザ風の兄ちゃんが・・・・・・いや、それ以上にどっかのマフィアの一員とかじゃ・・・」
「違う違う・・・・ただのライブオーナー・・・・さらに詳しく言うとボンボンのバカ息子ってことかな・・・・アタシが知る限りでは多分闇関係の仕事はしてない・・・・と思う。どっちみちクソヤローなのは変わりないけど・・・」
「どゆこと?」
涼風さんがさらに詳しく説明すると、あの人は、縦宮という某有名レコード会社の社長の御子息だ。
彼の親が管理してるあのライブハウスのオーナーを任せているのと同時に新人ミュージシャンのスカウト及び、バンド結成の呼びかけなどをしているようで、涼風さんに他のバンド仲間を呼んで『WitchWig』を結成させたのも彼のようだ。
彼は音楽には人一倍情熱があり、音楽に興味ある人間を積極的に交流し、ロックを広めようとしているがその反面女癖が悪く、興味を持った女性にはなりふり構わず口説きまくる浮気男らしく、涼風さんは特にその縦宮のお気に入りの一人らしく出会うたびにナンパしているようで、今までさんざん撃退しているようだが、一向に諦めてくれないようだ。
「しかもそいつ、プロになりたきゃ俺と付き合えとか何様なんだよ!!!あいつ
婚約者がいんのに、これでもかと愛人を増やしてんだよ。最・低でしょ!!!アタシ別にプロになりたいからバンドやってる訳じゃねぇのに・・・・・何様だよ」
完全な女ったらしのド屑野郎じゃないか!!!この日本が一夫多妻国家だと錯覚してるんだな?ハーレム作りたきゃ東アフリカか中世ヨーロッパが舞台の異世界いけよ。
「まぁ気持ちは分かるけどそれならあのライブハウスに離れた方がよくない?」
「それは・・・前々から仲間と考えてたけどさ・・・あんな男でも一応恩というものがあるからね・・・・・アタシもそうだけど、あの男が結成させたバンドグループの殆どは社会のはみだしものばっかで誰にも認められない人ばっかだから、あれに救われた人も少なくないんだから、裏切ることは難しいんだよね」
「涼風さん・・・」
「でも・・・・久東君がどうしても・・・・ってならあの男の元に離れるけど・・・」
「なんでそこにバンド関係ない俺が入るの?」
「関係なくないよ。さっき、久東君、あいつに刃向かおうと攻撃を仕掛けようとしたじゃん・・・もし、またあいつにちょっかいかけられるようなことがあったら助けてくれるんだよね?」
「助けてくれるって・・・俺、涼風さんの友達じゃなくて・・・・・ただの勉強仲間じゃ・・・」
「友達だよ・・・」
え・・・・・・今なんて・・・言ったの・・・・俺の事を友達って・・・・
「え・・・・・もしかしてそれ、アタシだけそう思ってたのかな・・・・なんかショックだなーーーーー」
「ごめん・・・・涼風さんの口からそう言ってくるとは思わなかった」
「もしかして、アタシの事性格が悪い女と思ってない?」
思ってないよ・・・・だって、一周目では俺の事をなんとも思ってない・・・・・・・・いやその考えが論点から外れているんだ。
一周目の涼風さんも心から俺と友達になりたいと思ってたんだ。だけど一周目の俺は彼女と話すと嫌われるのだと勝手な思い込みをして、自らを殻に閉じこめてたんだ。
ようは俺自身が変わったから、涼風自身が積極的に話してくれてるんだ。
なんでそんな単純な理由を今まで分からなかったんだよ。俺は間抜けだ・・・・
「じゃあ・・・・改めて友達からスタートだね」
「そうだけど・・・それよりも、話し戻すけどアタシは別のライブハウスに変えた方がいいのかな?今すぐ答えて」ずい
涼風さんとても顔が近いんだけど・・・・後一歩近づくとキスされるくらい絶妙なポジションだ。
「もし、嫌なら・・・・・みんなで別のライブハウスに移った方がいいよ。どこか目星ある?」
「よし、分かった。今から仲間に連絡する・・・・・・あ、もしもし、リーダー?例の件なんだけど、やっぱ移った方がいいと思う・・・・・うんうん・・・・分かった切るね」
そう言うと涼風さんは、すぐに仲間に電話を入れたようだ。
「リーダーによると、オーナーに一言謝罪して、その後心機一転で知り合いのライブハウスに拠点を来週あたりから変えるつもりだよ」
「本当に変えちゃったよ・・・」
「だって・・・・久東君が言ったじゃんか・・・」
「言ったけど・・・・そんな適当に・・・・ふふふふふふふふふふ」
『あはははははははははははははははははは』
お互いの顔を見て笑ってしまった。こんなに自然に笑えるのは久しぶりだ・・・
プルルルルルルルルルルル
「あ、電話だ・・・・もしもし・・・・・」
『もしもし、じゃないわよ!!!アンタ恵ちゃんを置いてどこにいるのよ」
「す・・・・・・すみません今すぐ戻ってきます」
やばい店長がすでにあそこについて、俺の姿が見えないってことで完全にご立腹だ。
今すぐ戻らないと・・・・
「ごめん、涼風さん俺、そろそろ行くわ」
「待って・・・行く前に、連絡先交換しよ・・」
「交換・・・」
「そ・・・・だってもう友達でしょ・・・・それにまたなにかあったら助けてくれるんだよね?」
「うん・・・・・必ず助けるよ・・・・・絶対」
「・・・・・約束だよ」
なんか言い方的に今生の別れぽっくなってしまったな・・・・・・・あれ?
なんだ・・・・・このフレーズ以前どこかで同じ状況があったような・・・・
ザザザザザザザザ・・・・・・・ザザザザザザザザザザザザ
なんだか脳内がテレビの砂嵐になったような変な気分になってしまう。
「久東君?どしたの?」
「いや・・・・なんでもない。交換だよね・・・」
頭を押さえ俺は涼風さんと連絡先交換をし、さっそく、店長がいるライブハウスに戻る。
ライブハウスにつくと、さっきの縦宮というオーナーと鉢合わせするのが怖かったがなんとか合わずに店長達と合流し案の定説教をうけ、その後、店長から電車賃を貰い、佐々波と一緒に電車に帰る。
その電車の中で、涼風さんからメールが来た。
『今日はありがとね・・・・後言い忘れたけど・・・今日のアタシのラストライブどうだった?』
その質問にしばらく考え、返信する。
『最高だった。でも、個人的に涼風さんの歌声が聞きたかった』
『また今度聞かせてあげる♡明日学校で会おうね』
また今度か・・・・その日を楽しみに待つとするか。




