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#02 最悪の出会い

≪シャルーアの町・酒場前≫


 最悪の予想というのは、いつも当たってしまうものだ。


 いや、最悪だと思うことが当たると印象に残るから“いつも”なんて錯覚しているだけなのかもしれない。


 ともかく今は確実に言える。最低・最悪な状況だと。


「ほーん、シエルか。よろしくなー」


「よろしくお願いします……フィロソフィさん」


 ハイエンド装備で身を包んだ、可愛らしいエルフ娘のアバター。

 だが、その見た目に騙されてはいけない。中身は汚らわしいおっさんで、俺の彼女を寝取り、垢BANまで追い込んだ張本人、俺が復讐を遂げるべき相手がすぐ目の前に居る。


 体がブルブルと震えている。相手に悟られないように片手で体を押さえつけているけどこんなの意味ないよね。


 フィロソフィを前にして、怒りと憎しみが溢れそうだったが、感情が伝わりづらい敬語とさん付けでどうにか誤魔化す。もちろん敬意はない。とりあえずフィロソフィに憧れている初心者を演じておこう。


「フィロソフィさんってあのランキングに載っているフィロソフィさんですよね、実は俺、憧れなんですよ」


 もちろん心にも思っていないことだ。嫌われるのは簡単、好かれるのは大変。別にフィロソフィに好かれたいわけではないが、復讐を果たす為にも好感度を上げておけば、今後の戦略の手段もかなり広がると思う。だから今はゴマを摺っておくことにした。


「そうや。この俺がSSS級ギルドセレスティアスのギルドマスター、かつ最強プレイヤーランキング3位のフィロソフィや」


 聞いてもいないことをペラペラと自慢げに喋り出すフィロソフィ。相変わらずだよお前。


「ほんで、ウチのアリサとフレンドなんやっけ? 仲良くしてなー」


 そう言ってフィロソフィは、アリサの腰に手を回して身を寄せる。やはりフィロソフィとアリサの関係はまだ続いていたのか。


「もう、マスターったら……」


 見せつけるようにしてイチャつく2人。もうアリサは彼女とも思っていないが、こういうのを見ると気分が悪くなってくるものだね。どうにか平静を装い苦笑いを浮かべる。


「はよレベル上げ行こか。場所はシャルレア炭鉱でゾンビ狩りがええな。鉱石も手に入るし」


「りょーかいっ! シエル君、場所は分かるかな?」


「行ったことは無いけど、一応は」


 そんな俺の返答が聞こえたのか聞こえなかったのか分からないが、アリサとフィロソフィは手を繋ぎ、ワープリングでシャルレア炭鉱付近までワープしていった。


 俺はまだその場所に行ったことが無いので、当然ワープは使用出来ない。シャルレア炭鉱まで1人で歩いていくことになる。


 なんだか俺だけハブられたような気分だ。


 惨めだなぁ、悔しいなぁって最初は落ち込みながら歩いていたけど、途中からは段々と腹が立ってきた。糞ったれ、糞ビッチが、みんな死んじまえ、ファック! なんてこの世界を呪いながらどうにか目的地まで辿り着く。


≪シャルレア炭鉱≫


 薄暗い炭鉱の中を、1人で進んでいく。このエリアのモンスターはゾンビ系の敵が多く存在し、バザク荒野の敵と同じくレベル60付近が適正であるものの、攻撃力が高い代わりに守備力低い。

 絡まれないように戦闘を回避しながら2人に合流するべく、奥へ奥へと進んでいく。

 進んでいくうちになんだか煙たくなってきた。HPバーを確認しても変化がないので毒ガスって訳でもなさそうだし、これは一体何なのだろう。


 不思議に思っていると、次第に2人の声が聞こえてきた。


「さすがです! マスター!」


「ふん、こんなん楽勝や」


 フィロソフィの手には緋色に輝く長身の剣。ちょうどゾンビ系のモンスターを倒したところだった。


 2人は既に狩りを始めていて、俺なんかお構いなし。初心者だからって舐められているのだろうか。まったく腹が立ってくるね。アリサに関しては、俺と2人でパワーレベリングをしたときは面倒見が良かったのに、フィロソフィと一緒に居るとこの通りだ。フィロソフィの前だからって調子に乗っているのかね。フィロソフィも糞だが、アリサも糞だ。2つの糞がくっつくと更に厄介になるから、これからはアリサとフィロソフィを引きはがしてパーティを組んだ方がいいだろう。


「2人とも、もう始めていたんですね」


 皮肉交じりにそう尋ねてみる。


「おう、やっと来よったか。とろいからもう始めとったぞ」


 とろいって、行ったことないからワープ出来ないのは知っているだろう。ーーああ、そうだった。フィロソフィは元からそういう性格をした奴だったな。


「マスター、ここらへんに次のモンスターがそろそろ湧きますよ」


「ほいよ」


 静寂の中、どこからモンスターが現れるのか3人で神経を張り巡らせていると、気配がしたのは俺の背後だった。


「シエル君、後ろ!」


 そんなアリサの注意を全部聞き終えるよりも前に、俺は振り返る。襲ってきたのは、頭からキノコが生えている人型のゾンビ“キノコの屍者”だった。急いで魔法を唱える。


「【ファイアボール】!」


 発動の早い魔法で怯ませ、なんとか敵の動きを止める。続けて、強力な魔法を唱えようとしたその時、


「【赤影の一閃】」


 そんなフィロソフィの呟きと共に、赤いレーザーのようなものが剣先からキノコの屍者の体を貫き、炭鉱の奥までその光が直線状に続いていた。モンスターの体は一瞬で膨れ上がり、やがて破裂した。


【1130の経験値 21ヴィルを獲得】

【鉄鉱石を1個手に入れました】


「ほう。最近覚えた技やけど、ええ感じやな」


「マスターが助けなかったら危なかったですね」


 予備動作も見えなかった。この発動速度でこの威力……これが今のランキング3位の実力か……。

長くなったので途中ですがここで切ります。

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