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#15 運命的な出会い

 そう思った時、


「ゴブーーッ!」


 あの違和感満載のゴブリンの断末魔が聞こえてきた。それと同時にユリアを引っ張る力も無くなった。


「シエルさん! 今なら進めます!」


 一体何が起こったんだ? ユリアが倒したわけではないだろうし、もしかすると他のプレイヤーが助けてくれたのか?


「誰だか知らないけど、ありがとう!」


 とりあえずお礼だけ言って、急いで奥へと進むことにした。


 匍匐前進で細い通路しばらく進むと、赤い宝箱の置いてある広場に出た。どうやらここが最終地点らしい。


「一時はどうなるかと思ったよ」


「危なかったですね……。でも何が起こったのでしょう」


「きっと後から来たプレイヤーが助けてくれたんだよ。ここに来たらちゃんとお礼言おう。お目当ての宝箱、先に開けてしまおうぜ」


「はい!」


2人で宝箱を開け、中にあったのは2つの電球みたいなものが付いたナンセンスな指輪。


――――――――――――――――――

【アイテム名】閃きリング

【レア度】C


●アクセサリー……スキル習得率が常時0.08%アップする。

―――――――――――――――――――


「これがアクセサリーなんだ……同じ指輪でもワープリングとは違うものみたいですね」


「ワープリングは重要アイテムだからな。装備品扱いではないんだよ」


 と言っている内に、背後から物音が聞こえてきた。もしかしたらさっき助けてくれた人が来たのかもしれない。俺たちはお礼を言うため、後ろを振り向く。



「え……」



 思わず声が漏れてしまった。相手に聞こえたかは分からない。


 そこに居たのは見覚えのある顔。ふわっとした茶髪の髪に、ぱっちりとしたオレンジ色の瞳。


 俺の初恋の人であり、初めての彼女。



 アリサがそこに居た。



「あ、2人ともパーティ組んでいたんですね。大丈夫でしたか?」



 そう言って俺たちににっこりと微笑むアリサ。俺の心臓がバクバク言っている。馬鹿な、こんなことってあるのかよ……。一体どんな確率だ。


「はい、おかげ様で。助けていただきありがとうございました」


 驚きで戸惑っている俺に代わってユリアが答える。


 落ち着け。今の俺はスカイじゃなくて、シエルなんだ。俺がスカイだってことはアリサは分かるはずがない。なんとかこの場をやり過ごすんだ。


「2人とも始めたばかりだよね? 初心者用サーバーがあるのに、どうして一般サーバーへ?」


 客観的に見てもアリサは強プレイヤーの部類に入る。そんなプレイヤーが俺たち初心者とこうやって話すこと自体珍しいことだ。少々計画が前倒しになったが、これはある意味チャンスなのかもしれない。……そう考えると、少しずつ落ち着きを取り戻してきたような気がする。


「えっと、それは……」


 言い淀むユリア。ここは俺が助け舟を出さなければいけないな。初心者風のキャラを作って演じてみせよう。


「ちょっとした冒険心だよ。一般サーバーのプレイヤーってどんな人がいるのか見てみたくなったんだ」


「みんな強そうだったでしょう?」


「うん! 街には強そうな装備のプレイヤーがたくさんいたし、ユリアの後ろにゴブリンが来たときは何も対処出来なかった。俺もまだまだだなぁって実感したよ。アリサはすごいなぁ」


「そんなことないよ。シエル君もレベル上げしていけばこれくらいすぐになれるって」


 なんだかアリサの顔を見ていると憎悪の感情が湧いてきた。愛と憎は表裏一体って言葉を思い出す。そんな愛の感情なんてもう無いけどね。

 アリサ、お前の優しさは俺が良く知っている。だが今度はその優しさを利用させてもらおう。


「でも、DOMはなかなかレベルが上がりづらくて困ってしまうよ……。アリサとここで会ったのも何かの縁だと思うんだ。良ければフレンドになってくれないかな?」


 始めたばかりの純粋な瞳でアリサを見つめる。純粋な瞳ってどんなのか分からないけど、とにかく見つめてみた。


「うん、いいよ! 色々教えてあげるね!」


 フッ……。ちょろいな。


【“アリサ”とフレンドになりました】


 予想通り、フレンド申請を断らない。お前は断れない女だもんな。だからあんなネカマのおっさんも受け入れてしまうんだよ。


 浮気女とフレンドになることに抵抗が無いわけではないが、俺の復讐を遂げる為にもアリサは十分利用価値のあるプレイヤーだ。初心者が強いプレイヤーと知り合いになるチャンスなんてそうそう無い。俺はシエルという別人の仮面を被り、お前の強さとセレスティアスのメンバーとしての立場、存分に利用させてもらうぞ。


「フレンド登録ありがとう。アリサはとっくにこのダンジョンクリアしていてもおかしくないのに、どうしてこんな洞窟に居たんだ?」


「んー、ちょっとした思い出巡りかな」


「思い出巡り?」


「昔は良かったなぁってね」


 そう言ってアリサは笑顔を見せたが、その笑顔は無理矢理作られた表面だけの笑顔だった。それは、これ以上この話題は話したくないという意思表示でもある。いじわるをしてやりたい気持ちもあるけど、ここは我慢して話題を変えてやった。


「なあユリア、お前もアリサとフレンドになったらどうだ? 初心者の俺たちに色々教えてくれるってさ」


「いいんですか? アリサさん」


「もちろんだよ。よろしくね!」


「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」


 さて、アリサとフレンドになったことだし、これ以上ユリアが居る状態で立ち話をする必要もない。とっととこの洞窟から抜け出して、一人でこれからの計画でも考えるとしよう。


「じゃあ俺たち、お宝もゲットしたし一旦街に戻るね。今日は助けてくれてありがとう」


「アリサさん、ありがとうございました」


「どういたしまして。私に出来ることがあればなんでもするから、いつでも声を掛けてね!」


 なんでもする……ね。言われた通りそうさせてもらうさ。それはもうボロ雑巾のようにな! 俺を裏切ったことに対する罰。楽しみにしているがいい。

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