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#04 戦闘準備

 このままでは終わりが見えない。そう思った俺は立ち止まり、諦めてあの追いかけてくる白いモフモフに話しかけてみることにした。


「なあ、どうしてついてくるんだ……?」


「このゲーム、自由度が高すぎて何すればいいか分かんない! だからシエルについていけばなんとかなるって思ったんだ」


 モフモフの言う通り、DOMはVRMMOだけあって自由度が高い。


「最初は何をすればいいか迷うのは分かる。とりあえずレベルを上げて、それからすることを考えてもいいんじゃないか?」


「レベルを上げるってどうやるの?」


「マジで分からないのか……? モンスターを倒すんだよ。そうすれば経験値が手に入って、ある程度貯まったら自動的にレベルアップするんだ」


「やっぱりシエルは物知りだ……」


「いや、これくらい常識だから」


 わたあめは小学生か何かなのかな? いや、流石に小学生でもこれくらい知っているよな……。


「しえるぅ。もっと色々おしえて!」


 めんどくせー。俺はこれから速攻で強くなければならないってのに、なんでこんなガチ初心者に付き合わなければならんのだ。


「急いでるから行くわ……」


 そう言って立ち去ろうとしたとき、モフモフの白い毛の中に隠れた、小さな青い瞳と目が合う。


 ……やめろ、そんな目で俺を見るな。


「しえるぅ」


 目をウルウルとさせてきた。


「分かった、分かった! 付き合ってやるよ!」


 メニューコマンドを開いて、わたあめをパーティに誘う。あんな目で見られたら断れるわけないだろ。可愛いキャラは卑怯だ。


「パーティ? ってなんだろう?」


「パーティを組めばパーティを組んでいる仲間にしか見えないチャットや、戦闘を一緒に行うことが出来るんだ。それにマップを開いたら仲間のいる場所も詳しく分かるぞ」


「へー、便利なんだね」


【“わたあめ”がパーティに加入しました】


 視界の右下にわたあめのHPバーが新たに追加される。戦闘では仲間の残りHPに注意しながら回復や立ち回りを変えなければいけない。


「どこ行くのー?」


「武器屋だよ。まずはモンスターと戦うための準備をしないといけないからな。モフモフも一緒に行こう」


「はーい!」


 千里の道も一歩から。最強を目指すとしても、始めたばかりの俺のステータスはやはり弱い。ならば、こちらも弱いモンスターを倒して少しずつ強くなっていくしかないのだ。初心者に付き合うのは不本意ではあるが、戦闘では仲間がいると何かと得することが多く、利害が一致するため行動を共にすることにした。


「武器屋はこっちか……。初めて来るエリアは道に迷いそうになるな」


 マップを見ながら歩いていたので、他のプレイヤーとぶつかりそうになる。


「おっと、悪い」


「いえ、こちらこそすみません」


 ペコリと2人でお辞儀。


 新規冒険者キャンペーンもあってか、村の中はプレイヤー達で賑わっている。いつの間にか初心者用サーバーに割り振られていたみたいだ。みんな村人の服を着ていて、珍しい恰好のプレイヤーは見当たらない。キャンペーンが始まったのが今日だし、プレイヤー間の格差もまだ無いんだな。


 始めた頃は、純粋に楽しめればいいという人が多かったような気がする。いつからだろうか。地雷なんて言葉が流行り出して、他者を傷つけるようになっていったのは。ボスに負けたら責任の押し付け合いをして、回復アイテムのお金を弁償しろだの言い争いになったこともある。


「ねえねえ、すれ違う人たちが獣人ばかりなのはどうして?」


 モフモフの言葉で俺の意識が過去から今に引き戻される。


「ん? ……ああ。種族ごとにスタート地点が違うんだよ。次の町に行けば色んな種族が見られると思うぞ」


「へー、次の町に行くのが楽しみ!」


「なるべく早く次の町に行けるようにしないとな」





≪プーリア村・武器屋≫


『らっしゃい! ここは武器屋だ! 何が欲しいんだ?』


「モフモフ、あの武器屋のおっちゃんの頭の上にある名前を見てみろ。NPCだから白い文字で書かれてあるだろ?」


「ホントだ! ゴリオって名前なんだね!」


「そう、ゴリオ」


「ゴリオー!」


 名前の通り、ゴリラのような見た目のいかつい店主だった。運営の単純なネーミングセンスは嫌いじゃない。所持金は30ヴィル。さて、何が買えるかな。


「魔法使いが装備出来る初心者用の武器を教えてくれ」


『おう。うちにあるのは、まじないしの杖が80ヴィル。果物ナイフが60ヴィル。木の弓が70ヴィルだ』


「わあ、武器って高いんだねー」


「うむ……高いな」


 どの武器も今の所持金では買えない。だが。


「この防具を全部買い取りしてくれないかな?」


 初期装備として着ていた、村人の服、ズボン、靴を脱いでカウンターの上に載せる。パンツ一丁になってしまうが、正直この防具がなくても守備力は大して変わらない。ならば売ってお金に換えてしまった方が効率的にレベリングが出きる。そう思ったのだ。


『全部で40ヴィルだ。それでいいか?』


「ああ、頼む」


「わぁ、シエル男前!」


 これで所持金は70ヴィル。これで何を購入するかと言うと……。


「果物ナイフを売ってくれ」


『まいどあり!』


「魔法使いなのに短剣が武器なんてめずらしい~」


「そうだろう。俺にはある考えがあるのだよ」


「えー、なんだろう」


 果物ナイフ。今の俺が装備できる武器の中で最も物理攻撃力が高くなるのがこの短剣だ。魔法使いというくらいなのだから、戦闘では杖を装備して魔法で攻撃するのが一般的だが、始めたばかりの魔法使いはMPが低い。魔法ばかり使っていてはすぐにMPが枯渇してしまう。そのため、物理で攻撃するしか攻撃手段が無くなってしまうわけだ。そこで役立つのがこの果物ナイフ。元は刃物系の武器を使うのが得意だったから動きにも自信がある。


「モフモフ、お前は武器を買わなくてもいいのか?」


「まだよく分からないし、このままでいいや!」


 すっぽんぽんのまま、仁王立ちして言うモフモフ。


「そうか。なら服を着た方がいいな」


「はーい!」


 モフモフはメニューコマンドを開いて、服を着用していく。


「準備は出来たな。ではレベル上げを始めようか」

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