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シェフの処方箋  作者: ソルファ
7/27

手紙と古書店


こうなった以上落ち込んでいても仕方がない。

なんとしてもターゲットを見つけ出してやる!

……と、空の元気を出すがやはりダメなものはダメだ。

死というものの力は絶大で、

現実を歪めるほどの力を持っている。


その場に立ち止まりしばらく考える。

どうするべきか。

どうすればいいのか。

どうしなきゃいけないのか。

考えた末に俺はある2人に協力を頼むことにした。

だがそいつらはちょいとクセ者だ。


旧友か?いやそれはない。

ただの腐れ縁といったところか。

それも少し違う。

第一にあいつらとは腐るほどの縁もゆかりもない。

あるとすれば、というか無いのだから

考えられるわけがない。

じゃあなぜあいつらの所へ向かっているのか。

理由は簡単だ。

俺は普通に友達が少ない、という理由以外に

普通の殺し屋の友達も少ないからだ。

だから普通じゃない殺し屋のあいつらに頼らざるを得ないというわけだ。


身なりを整え、その上からマスク、帽子、メガネといったありふれた変装着を身につけ、街はずれのとある古本屋に向かう。


今日はクソ暑い。

『暑い』

『熱い』

『厚い』


他にどんな字あったかな。

思考がぶっ壊れる。

そんな下らないことを考えながらも着実に一歩ずつ足を前に出していく。


頭の中の押入れにしまってあった

記憶を頼りにあいつがいつも訪れていた古本屋を探す。

正確には訪れていたのではなく縄張りにしていた、が正しい。

奴は獣のようだからである。

いやケダモノと言ったところか。


しかしこの辺りも全然変わってない。

あそこに行くのは数年ぶりか。

レストランから歩くこと3時間。

距離にして1.5km。

この時間が遅いか、早いかは個人差があるが、ようやくたどり着く。


率直な意見を言おう。


「変わってない」


恐ろしいほど変わってない。

昔の記憶のままだった。

そこには歴史を感じる

小さな古書店がポツンと佇んでいる。


するとある変化に気がつく。

変わっていない場所で唯一変わったモノ。

店に入ろうとするが、足が動かない。

今まで軽快とは言わないまでも

確実に一歩ずつ踏みしめてきた右足も

どんな荒地だろうが右に習ってきた従順な左足もピクリともしない。

これはあいつが待ち受けているからなのだろうか。

それともここ数年で変わってしまったのは俺なのだろうか。

前者だとすれば、とてつもないオーラを持っているということになる。

店に入るや否やというレベルの話じゃない。

世紀末のそれといったレベルの話だ。

しかし、130%ありえないわけでもない。

殺し屋として日々鍛練してると仮定すれば、

経験値、恨み値、返り血を見るまでもなく世界でも戦えるくらいの殺し屋と言えよう。

仮にも奴は視覚部トップランカーなのだから。

つまり、殺しの文句は誰にも言わないわけだ。

必然的にこの並々ならぬオーラの説明がつく。


万物の敵

最小にして最悪

邪悪な怪物

それが奴。


だが後者だとすれば、それは誰にも理解する術はない。

変化というものは比べる対象があって感じるものであって今のこの状況ではそれには欠けるからだ。

気づきに気付く事を諦める、

今はそれしかない。


しかし、ここまで来たんだ。

一握りの勇気を振り絞り、

大いなる一足を踏み出す。

そうしてたどり着いた距離2m半。


ドアの取っ手をゆっくりと回し、静かに店内に入る。


年季の入った木製棚が

古き良き昭和時代を感じさせる。

一方でその間を微量のホコリが舞っていて、

まるで日本の陰と陽を演出しているかのようだ。


そんなことはどうでもいい。

俺は古き良き日本の素晴らしさを体感しに来たのではないからだ。

それならもっといいところに行く。

例えば口煩いおばさんがいない駄菓子屋とか。

そんなこともどうでもいい。


本棚を見る。

暗い内容の本ばかりが並んでいる。


『ジャックザリッパーの手記』

『黒魔術実用書』

『スターリードフライアウェイの占星術』

スターリードフライアウェイ?

変な名前だ。

世の中には色んな人がいる。

『フランケンシュタイン博士の研究記録』


そして少し奥に木製のレジがある。

壁には蜘蛛の巣が張ってあり、床はきしんでいる。

正直、薄気味悪い。

店の奥に行けば行くほど、

陽というより影陰影陰だ。

すると、奥からかすかな声が聞こえた。


「珍しいお客さんですね」


うまく聞き取れなかったが、細く綺麗な声がしたようだった。

するとレジ奥で目のようなものが二つキラッと光った。

一瞬にして、背筋が凍る。


バタバタと大きな音をあげ、

小さい”ナニカ”が向かってくる。

そのナニカが物凄い速さで走ってくる。

そして飛び掛ってきた。


「よーーつーーぼーーしーー!ひーさしぶ……」


俺はサッと右に避ける。


ーーガチャン、バリーンーー

ドアのガラスを破って、

そのまま道路に投げ出されるナニカ。


ーーブォォォーン、バコンーー

トラックに激突するナニカ。


ーーヒューーーン、ピカンーー

吹っ飛ばされ飛んでいくナニカ。


そして待つこと1時間。


「痛たたた……」


その恐るべきナニカは帰ってきた。


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