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シェフの処方箋  作者: ソルファ
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始まりと処方箋

実在する死神は見るからにボロボロのローブなんて着ていない。

また、バトルレックスが持ってるような大鎌も持っていない。

せいぜい古着屋に売ってるような英語が書かれた色あせたTシャツと画面の割れたスマホくらいだろう。そんでもってポケットには数百円分の小銭と紙切れが1枚。

こんな風貌でも死神になれるのだから世も未開の地がまだあるのだろう。


脱線してしまった。

入口では従業員の女の子が申し訳なさそうに頭を下げている。


「お客様、大変申し訳ございません。本日のラストオーダーは22時を持ちまして、終了させていただきました」

「いやその、四つ星さんに今すぐお伝え下さい。処方箋を持ってきたと」

「処方箋?」

ウエイトレスは顔を傾ける。


「いいから急ぎなんだ」

「は……はい。かしこまりました」

その落ち着きのなさと、強張った表情を前にウエイトレスは小走りで厨房へ向かう。その間ウエイトレスは何度も男の方を振り返る。

厨房では従業員が談笑していた。

そこにウエイトレスが強めに厨房の扉を開ける。


「今来店されたお客様が、料理長に処方箋をどうとか……」

「はぁ?ここは薬局じゃねんだぞ?」

従業員達の乾いた笑い声がステンレス製の調理器具を震わせる。


「ですが……」

「いいから追い払ってこいよ」

副料理長が命令口調で言い放つ。


「あぁ、俺が直接行くから。8番テーブル空いてたよな?」

「はい……」

「じゃあそこに案内しておいて」

厨房が周りが静まり返った。

無理もない。俺はお客がいる時はあまり外には出ない。

顔が知れてるのもそうだが、正直人付き合いが得意な方ではないからだ。


今日の仕事も終わりだと思ってたのに……

大体そんなものだ。忙しい時に限って次々と問題が起こる。


「悪い今日の打ち上げパス。俺抜きでよろしく。ワインかシャンパン適当に飲んでいいから」

「はい」

「ういっす」

従業員達が不満そうに返事をする。

無理もない。いつもならこんな忙しい日には高めのワインやシャンパンを開けるが、オーナー不在ではそういうわけにはいかない。


厨房の扉を開け、8番テーブルに向かう。


「お兄さんが依頼主?早速なんだが処方箋を見してくれ」

「あっはい」

男はポケットから一枚の紙を取り出した。


処方箋、それは簡単に言うと殺しの依頼書の事。

実はレストランのみんなには内緒で不定期でもう一つの仕事をしている。そう殺し屋だ。

殺し屋労働組合というところがあり、ある一定の基準を満たせば誰でも加入することができる。

その基準とは一つ。

殺しの腕が一流だという事。

そして組合に認められれば加入することができる。

組合費もかかるがそんなに高くはない。

その殺し屋労働組合に依頼がきて、各殺し屋に仕事が振り分けられる。または仕事を貰いに行く。しかし何故か手数料を払わされるからこちらから行くことは少ない。

その依頼書のことをみんなは処方箋と呼んでいる。

また、殺し屋労働組合には変なコンプライアンスがあり、

一、自分の仕事に誇りを持つこと。

二、最後まで責任を持つこと。

三、常に腕を磨くこと。

四、同業者の裏切りは御法度。

五、理事長を尊敬すること。

ーー制定者 理事長ーー

これを守らなければならない。

しかし常に身内同士で殺し合いをしていて。

理事長曰く、

「そんなんで死ぬ輩はそこまでの器」

だって事らしいが、裏切りに当たらないのだろうかは謎だ。

尚これは殺し屋労働組合 格言集に認定されている。

格言はことあるごとに労働組合通信に掲載される。

すべて理事長の言葉というところが気にはなるが暗黙のなんたらってやつだ。


話を戻そう。

処方箋の内容を見て驚きを隠せなかった。

なんと依頼日時は今日。

しかもターゲットは45番テーブルに座っている男性で、既に食事を済ませている。

さらに今夜中に殺さなければならない。

無茶苦茶すぎる。

しかも閉店まで時間がない。

殺し屋労働組合には様々な殺し屋が在籍しているが俺の殺し方は少し特殊な方だろう。

それは自身で作った美味しい調味毒料を料理に使用して殺す方法。ターゲットの死ぬ時間帯、日時、場所、症状は味付け次第でいくらでも変えれる。俺は食べた事ないが食べた者曰く、死ぬほど美味いらしい。自慢じゃないがこの殺法で俺は殺し屋労働組合、味覚部マウス2の殺し屋ランキングでずっと1位を守っている。

その辺の話はまた今度にしよう。


男は処方箋を俺に渡すと足早に店を出ていった。


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