修羅場と覚醒
午前中は日差しが強く風は涼しかったが、なんだか急に曇って来たようだ。
今にも雨が降りそうな、そんな予感がする。
そんな中、奴が目醒めた。
目醒めたから雲行きが怪しくなったのか。
どちらにせよ、そんなアニメみたいな展開は期待していない。
戸小谷オモテのもう一つの人格=戸小谷ウラ。
狂気で破壊的かつ暴れん坊そんな言葉がぴったりなやつ。
ウラには一般常識が通用しない。
非常識こそが彼女の常識なのだから。
何よりウラの厄介なところは、この平凡な世界ではまずありえない”黒魔術”が使えるところにある。
なぜ使えるのか誰も知らない。
黒魔術とは、以下のようなもの。
人に害を与えるための技、不道徳な魔術。
自己の欲望を満たす為だけに使われる魔術。
呪術や悪霊の力を借りるなどして相手を呪う術。
引用ウィキペディア(四つ星調べ)
ウィキペディアに載っていたからまず間違いないだろう。
てかそもそも現実に存在してはいけない代物だろ!と思ったところで何も変わりはしないが。
「ココは本部ってかクソババアの店じゃねーか? この間のお礼と言っちゃなンだが、冥界にでも送ってヤローか?」
登場して間もなく修羅場になってる。
チヨさん怯えてるし。
「って冗談だよババア、この間ラヴとちょいとストレス発散したカラ気にしてねえよっ。ラヴに感謝しなっ」
ラヴ……って確か本月のことだよな。
てことはストレス発散って、あの本部での大暴れのことか?
冗談キツすぎるだろっ。ここでそんなんされたら一溜まりもないぞ。
てかウラは俺に気づいてない。
俺ってそんな影薄いか?
するとウラが急に何かを思い出したようにピクリと触覚を立てた。
いや、髪の毛を立てたの間違いだ。
するとウラはすぐ近くにあった公衆電話の方に近づく。
おそらく本月に電話でもする気だろう。
だがオモテは本月の携帯番号を知らない。つまり電話を掛けれない。
ウラって案外バカなんだなと内心思った。
「あぁ? 誰がバカだってぇ?」
やべっなんでもありのウラだった。
そりゃ黒魔術が使えるんだから、心なんか読めるに決まってるか。
心が読める?
どっかにそんな奴いた気がするな。
確か背が小さくて、生意気で、わがままで、ものすごいお金持ちのお嬢さまが。
本月のやつが読心術を使えたのはウラの仕業だったのか。
通りでなんかおかしいと思ったんだ。あの時は読心術なんてどうでもいいと思っていたが流石ウラ、余計な事をしてくれてやがる。
ウラは後ろ髪をいじくり回して、何かを探している。
そしてお目当の物を見つけたようで、
それを公衆電話に差し込む。
見たところテレフォンカードの類。
この時代にテレフォンカードとは……いや、余計な事は考えないでおこう。また心を読まれると面倒だ。
そういえばさっきから下積の姿が見当たらない。ウラを見て逃げ出したんだろう。卑怯な奴だよ。
「もしモシ久しぶりラヴちゃん? ウチウチ!今どこいんの? またアソぼうよー」
嘘だろ本月の連絡先知らないんじゃ……てかそれよりあいつ今、番号押してないよな? 確実にこの目で見てたから間違いない。ありえない。
だが、これはチャンスだ!
ウラが本月の居場所を聞いたって事は、ウラに聞けば本月の居場所がわかるってことだ。
こうなったら隠れていても仕方がない。
いや、隠れているわけじゃないけど。
ガチャッ。
電話が切れたのを確認し、俺はウラに正々堂々正面からぶつかっていった。
「おい戸小谷ウラ! お前の悪事もここまでだ! 本月の居場所を教えろ!」
俺はヒーローさながら人差し指を立て腰に手を当てかっこ良く出て行った。




