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第五話 ダンジョンを作ろう

 ダンジョンマスターになって分かったことだが、竜牙さんはその存在を維持するだけでもダンジョン内のマナを大量に消費していた。

 ダンジョン内のマナはダンジョンが広ければ広いほど、深ければ深いほど、そして龍脈に近ければ近いほど早く回復していくそうだ。


「このダンジョンは広さも深さも大したことがありませんがちょうど近くに龍脈が二つ交差しているので私一人が存在している分には何とか賄えていたんですよ」

「正規所属になったから効率上がってるんでしょ? だったら多少は余裕できたのかな」

「そうですね。ただそれでも少ないことには変わりがありません。燃費が悪くて申し訳ないですね?」

「その分働いてもらいますから」

「はは、お任せください」


 そのおかげといっては何だが、ダンジョン内のマナが常時枯渇しており今までモンスターが沸くこともなくただの洞窟と思われていたらしかった。


 他にもダンジョン内で生物が死ねばその命をマナとして吸収することができると。

 ついでにDPも貰えてお得なわけだ。


 しかしこのままではジリ貧だな。

 とにかくDPを使ってダンジョンを拡張してDPとマナの回復量を増やさないと何もできない。


 駄天使が言っていた宝箱はDPで購入することはできるが、その中身は周囲のマナを消費して発生させているみたいだし。

 発生というと語弊があるか。

 過去と未来から存在が失われたものを召喚するというのが正しいのかな。

 ただし召喚するものはランダムと。

 一応ランクの高い宝箱からは良い物が出やすいみたいだけど、その分購入するためのDPも高いしマナも大量に消費するようだ。


「モンスターの中には宝箱が召喚するアイテムをある程度選別してくれる者もいるので余裕ができて来たらそれらを召喚するのもいいかもしれませんね」

「DPを稼ぐためには冒険者を呼ばないとな。まずはダンジョンを拡張してからかな。でも冒険者なんて今時いないけどどうしよう……」


 冒険者としてダンジョンで活躍するためには本人の能力も必要だがそれ以上に剣や防具が必要だ。

 しかし剣や防具はとても高い。

 確かに冒険者はリターンも大きいが、それ以上にリスクがある。

 どうして剣や防具を手に入れられる、資本を持つ者達が、わざわざ命をかけてまで冒険者になるというのだ。


「ん……?」


 頭を抱えながらメニューの購入可能物品一覧を見ていくとあるアイテムに目が留まった。


「蘇生の首飾り(限定)?」


 説明を読むと、ダンジョン内で死亡した場合、指定されたポイントで復活すると書いてある。

 しかもお値段十個で1DPと格安だ。

 どのダンジョンでも使えるわけではなく、指定したダンジョンだけで使用できるというのもいい。

 

「これだっ! 蘇生の首飾り、これを配布すればリスクの部分が0にできる!」


 冒険者がいないのであれば新たに作ればいい。

 リスクがないのであればきっと新たに冒険者になろうという人が出てくるはずだ。


「蘇生の首飾りですか……?」


 しかし竜牙さんの反応はいまいちだった。


「それを持っていると確かに冒険者は死ななくなりますが……」

「あー、死んだときにマナもDPも手に入らなくなるとか?」


 侵入者がダンジョン内で死亡すると結構なマナとDPがもらえるみたいだからなぁ。

 それはちょっともったいない気がしないでもない。


「いえ、それぞれ半分はもらえますよ。しかしですね……」

「何か心配事でもあるのですか?」

「……、死に覚えが出来てしまうんですよ」

「あっ……」


 トラップをどれだけ設置しようが、そのうちクリアされてしまう。

 モンスターの初見殺しの技は最初の一度しか通じない。

 そして冒険者は捨て身アタックができる。

 非常に冒険者側が有利になるのだ。

 そしてダンジョンが突破され、ダンジョンコアが破壊される。

 つまり俺の死だ。


「厳しいかな……」

「いえ、私もいますし。そう易々とはやらせはしませんが……」

「ぐぬぬぬ……」


 いや、まてよ。


「それならこのダンジョンを誰かが管理するダンジョンとしてしまえばいいんだ!」

「ほぉ?」


 一般のダンジョンであればダンジョンコアの破壊は推奨されている。

 モンスターはダンジョンの中でしか発生しないが、時々そのダンジョンから出てくる個体がいるからだ。

 だが、有益であるとみなされ管理されているダンジョンならば話が違ってくる。

 管理されているダンジョンのコアを破壊することは犯罪だ。

 たしか国や貴族が管理しているダンジョンのコアを破壊したものは死罪だったはず。


 商人が管理しているダンジョンもないわけじゃない。

 尤も、商人が管理しているダンジョンはコアを破壊しても死罪になるほどではないが、その後は商業ギルドの力の及ぶ範囲では買い物等が出来なくなる。

 管理されているダンジョンのコアは破壊してはいけないというのは一般常識に近いものがある。

 これならいけるはずだ。


「しかし有益となるとお上が放っておいてくれますかね?」

「それなら俺に考えがあります」


 確かに俺個人、もしくはミューゼル家の力単独では抗えないだろう。

 しかし他の家が複数絡んでいれば?

 わざわざ火中の栗を拾いにくることは考えにくい。

 利益を供与して仲間を作るのだ。


 そのことを竜牙さんに説明すると、彼はなるほどと首肯した。


 しかし、その前にダンジョンの拡張をしなければな。

 やることは多く、前途多難ではある。

 でも何とか前に進める目途がついたし、少しだけ気が楽になった。


◆◆◆

◆◆


「さてと、それじゃダンジョンを拡張していきますかねっと」


 手持ちのDPは十万ちょっと。

 これでダンジョンの拡張とトラップの設置。

 モンスターを召喚して防衛に当たらせ、そして宝箱も設置しなければならない。

 マナとDPとの兼ね合いを考えて、かつ人々が来たがるようなそんなダンジョンを目指さなければ。


 最初のうちは初期オブジェクトしか選択できないみたいだし、とりあえず拡張だな。

 現状は一階層だけ。

 通路がまっすぐ続き途中にいくつか小部屋があるもののダンジョンコアがある部屋まで一直線だ。

 ボス部屋すらないからなぁ。

 これでは冒険もくそもないだろう。


「とりあえず階層を増やすか。……、うげ、一階層増やすのに一万DPもいるのかよ」


 通路や部屋に比べてかなり高い。


「仕方ありませんよ、一階層の大きさは最大でおおよそ二百メートル四方ですし」

「ううん、一定以上より大きくしたいと思えば階層を増やすしかないのか……」


 背に腹は代えられないしね。


「とりあえず五階層追加するか」


 現状ある第一階層に、第二階層~第四階層を通常探索エリアとして、第五階層をボスエリア、第六階層にダンジョンコアを設置することにした。

 ボスエリアのボスとして竜牙さんを配置し、倒された場合はちょっといい宝箱を手に入れられるようにしておく。

 これで満足して帰ってくれることを期待してだ。


 ダンジョンに所属しているモンスターは倒されても肉体を失うだけで、しばらくすればマナを使って復活することが出来るから多少の手抜きをしてもいいだろう。

 最初は奮発して、あとからゆっくり搾り取らせてもらうっていうのもありだしね。


「残り五万DPか。通路が二メートルで一DP、小部屋が四メートル四方で四DPね」

「神々はめんどくさがりですからね、そんなに複雑なシステムにはしていませんよ」

「神への尊敬だとかそういうのがどんどんなくなっていく……。竜牙さんみたいなモンスターの方がよっぽどまめですね」

「はっはっは、神もモンスターも大して変わりませんよ」

「そんなもんですかね?」

「ええ。そんなものです」


 一マス二メートル四方のオブジェクトを最大縦横百マスずつ配置できると思えばいいな。


「おお。一日当たりのDPが増えたぞ」


 メニューから確認すると一日当たりの取得DPが二百から七百に増えていた。

 恐らく一階層追加すると百DPほど増えるのだろう。


「ふぅむ。他のオブジェクト追加するとどうなんだろな」


 そう言いながら俺は通路を追加した。


「まんまだな」


 通路を一つ追加すると一日当たりの取得DPが一増えた。

 面積に比例してDPも増えるのだろう。


 後はマナだが、こちらはダンジョンのメニューには残念ながら表示されていなかった。

 ううむ、自分のステータスが分からないと結構不安なんだけどな……。


「いやまてよ?」


 ふと思い立ってマナの支配者のギフトを意識してみる。


「嗚呼……、シンディー。俺にもマナが見える……」

「そのネタわかる人、あまりいないと思いますけど……」


 竜牙さん、あなたはわかるんですか。

 少し驚きなんですが。

 彼はいったい何者なのだろうか。

 そのうち機会があれば聞いてみたいものだ。


「というか、マナの増加量もDPとほとんど同じなんですね」

「おや、めずらしい。偶然というものもあるのですね?」


 偶然、ね。

 しかし龍脈が近いおかげか、マナには結構余裕があるな。

 ただDPと違ってあまり貯めておくことが出来ないから注意しないと。

 マナ貯蔵庫をDPで購入すれば多少ましになるが、現時点では優先順位が低いし。


「んで、あとは冒険者を呼び寄せるための宝箱ですが……」

「何か問題でもありましたか?」

「問題というかなんというか」


 確かにDPからの購入アイテムリストに宝箱はあるんだ。

 しかし、その後ろについている文字が気になる。


「宝箱(腐)って……」

「ああ、最下級の宝箱ですね。宝箱といっていいのか微妙なところですが、一応アイテムが出ますよ」

「へぇ……?」

「まぁ出てくるのはちり紙とかこん棒くらいですが。時々腐ったポーションが出てくるくらいですかね?」

「腐ったポーション?」

「体力を回復する代わりに毒状態になります」

「ごみじゃないかっ!」

「そうとも言いますね」


 そう言いながら竜牙さんは苦笑いするのだった。

 いや、そうとしか言わないと思うんですけど。


「いくつか買えばより上位の宝箱が購入可能になりますから諦めて買うしかないですね」

「うう、ごみの為にDPを払うってなんか納得いかない……」


 しかもこいつ、ちゃっかりマナを消費するのだ。

 不良債権でしかないな、これ。


「ちゃんとした宝箱が買えるようになったら破棄するかなぁ」

「いえ、水増しには使えますから一応置いておいた方がいいでしょう」

「むぅ」


 そういうものなのかな。

 まぁ宝箱があるってアピールにはいいかもしれないし、第一階層の入り口付近に置いておくか。


 これで一日当たりの取得DPが千二百を超えた。

 しかしその代わりに手持ちDPはすっからかんだ。

 しばらくはおとなしくDPが溜まるのを待つしかないな。


 まぁ焦る必要もないだろう。

 俺が成人するまであと三年弱。

 その間にダンジョンを整備しきって人を呼べる状態までもっていけばいいのだ。

 いくらでもとまではいわないが、それなりに余裕もある。

 急いては事を仕損じるともいうし、慎重にやっていこう。


 ま、大きくし過ぎると把握できなくなってくるし二十階層くらいの小規模ダンジョンでじっくりやっていくとしよう。

お読みいただきありがとうございます。

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