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第二十四話 メニューはお決まりですか?

 キンッ!


「っ!!」


 ……。

 …………。

 ………………?

 覚悟を決めたものの衝撃が来ない。

 そっと目を開くとゆっくりと矢が落ちていくのが見えた。


「あれ……?」


 そして時間がもとに戻る。


「レオ!!」

「ぐえっ!?」


 俺を庇おうと突っ込んできたアルの下敷きになり変な声が出た。

 フル装備でのタックルって効くよね。

 うわ、泥だらけだし……。

 って、そうじゃない。


「大丈夫!?」

「な、なんとか……」

「ダメかと思ったよ……」


 ほんとにな。

 だが、今ので光明が見えたかもしれない。


「どうにか、なるかもしれない」

「え?」


 そう言って俺達の周りを囲う様にメニューを開きまくった。


 キンッ! キンキンッ!!


 メニューに当たり落ちる矢を見て俺は確信する。

 メニューは盾代わりに使えると。


「なんだ!? どうなっている!?」


 ラーダス家の兵士たちに動揺が走る。

 それはそうだろう、自分達の放った矢が俺達の前で何かに当たったかのよう止まって落ちていくのだから。


「え? え?」

「ほぅ?」


 アル達にも動揺が走る。

 当たり前か。


「使えそうな魔道具があった。詳しい話は後でする。とにかくこれならどうにかなると思う」

「これなら私も攻撃に回れそうですね」

「すみません、お願いします」


 竜牙さんはたしかに強いが俺達を守りながら敵に攻撃を仕掛けるのは無理があったからな。

 俺達の守りに回らなくてよくなるならば話は簡単になる。


「では、鎧袖一触と参りましょう」


 竜牙さんはそう言うやいなや駆け出す。

 彼めがけて矢が放たれるがあっさりと躱してしまう。


「この化物め!!」

「こやつはこちらで引き受ける! その間に小僧をねらえ!!」


 隊長と思わしき騎士から指示が飛ぶ。

 それと同時に二名の騎士が竜牙さんへ斬りかかるも持っていた武器ごと切り捨てられた。


 ギンッ! ガンッ! ザシュッ!


「ぐあ!?」

「こ、この!? うごべらっ!?」


 キンッ! キンッ! キンッ! ……キンッ!!


「っと」


 そして俺達にも矢が放たれるがメニューに弾かれる。

 それにしても、森に伏せられていた弓兵は三人だけかと思っていたが四人居たのか。

 一人は熟練ってことなのかな、マップの範囲外から曲射で狙い撃ってくるなんて。

 そうこうしているうちにマップ上の赤い点が一つ減り、二つ減り、そして最後の一つとなる。


「一応一人生け捕りにしましたが」

「お疲れ様でした」

「いえいえ、この程度朝飯前ですよ」


 ちらっと生け捕りにされた騎士を見るとどうやら隊長と思わしき騎士だった。

 自分は最後尾に居たおかげか助かった様だ。


「お、お前達! 何が狙いだ! 俺達にこんなことをしてただで済むと思っているのかっ!!」

「「「「えぇ……」」」」


 あまりにも酷い発言に俺達は全員呆れ返ってしまった。

 自分達から襲いかかっているんですが。

 それも他人の領地で。

 他所の貴族の領地に武装して侵入しているだけでも問題なのに、その武装を展開ししかも貴族を襲うとか。

 言葉をそっくりそのまま返してあげたい気分でいっぱいです。


「そっくりそのままお返しするです」


 と思っていたらシンディーがあっさりお返ししてしまった。


「くっ! 調子に乗りおって!!」

「僕達はこれから王都へ向かいます。ちょうどいいので貴方にも付いて来てもらいましょう」

「なんだと!? ふざけるな! 俺を開放しろ!!」

「このままだとうるさいですし、王都まで眠っておいてもらいましょうか」

「それがいいでしょうね」

「わ、私はラーダス男爵家の騎士団長だぞ!? ただで済むと思っているのか!!」


 もういいよ……。


 彼を眠らした後簀巻にして馬車の荷台に転がすと俺達は王都へと歩みを進めた。


 念のため途中の村でヒザヤ閣下宛に文を認め(したため)ておいた。

 閣下もある意味被害者だしね。


◆◆◆

◆◆


 王都に入ると同時にモブキャラクター家からの早馬が到着した。

 二日後までにヒザヤ閣下も王都に来るらしい。

 理由はもちろん、ラーダス家の所業についてだ。


「めんどくさいことになったなぁ」

「仕方がありませんよ。これで何もしないとモブキャラクター家の沽券に関わるでしょうし」


 まぁねぇ。

 俺を上手いこと始末できていたなら問題にはならなかったのかもしれないが。

 残念ながら返り討ちに遇い、しかも近衛団長が捕虜として捕まっており証拠が揃っている状態だ。

 モブキャラクター家としてもラーダス家に釘を刺す必要があるだろう。

 なにせ自分の寄子が自分の領地内で他家の騎士団に襲われたわけだから。


「手紙見る限り、かなりブチ切れてたからな」

「当たり前やろ、これで怒らないとかありえんし」

「問題が大きすぎるので王家預かりとなるかもしれませんね」

「用事を済ませたら直ぐにダンジョンに帰りたかったんだけどな」


 当分帰れそうにないな、これは。

 とりあえず下手人を引き渡したら閣下が来るまで王都観光と洒落込みますかね。

 閣下が来た後はたぶん打ち合わせだ何だで拘束されるだろうし。

 それまで束の間の自由を楽しむとしよう。



 昨日までの雨が嘘のように晴れ渡り、爽やかな風が頬を撫でる。

 路面も石板が敷き詰められ、きれいな石畳が続いているおかげで馬車は順調に進んでいった。

 尤も、たくさんの馬車や人が引っ切り無しに行き来しているので快速とまでは言えなかったが。


「そんな訳で引取をお願いしたいのですが」

「な、な、本当なのですか!?」

「ええ。二日後にモブキャラクター伯爵も来られる予定ですよ」

「あ、ありえない……」


 王城近くの近衛騎士団の詰め所を訪問し、捕虜を引き渡そうとしたところでそんな言葉が帰ってきた。


「と、とても信じられることではありません。それが事実なら王家への裏切りでもあります……」

「そうは言っても証拠はここにありますしねぇ」


 と、簀巻に視線を送る。

 目線の先には団長(笑)が転がっている。

 これから待ち受ける自分の運命も知らず、気持ちよく熟睡中だ。


「少し顔を見せてもらえるか? ラーダス家の騎士団長なら私が面識がある。別人の可能性もあるからな、確認させて欲しい」


 騒ぎを聞きつけて詰め所の奥からいかにも実力者ですといった雰囲気を醸し出す強面のおっさんが出てきた。

 着込んだ鎧だけでなく、額の切り傷が彼は歴戦の勇士であると物語っている。


「貴方は?」

「ああ、紹介遅れてすまない。私は第二近衛騎士団の分隊長を勤めさせてもらっているエルリッツ・フォン・ブルースと言うものだ」


 ブルース家か。

 聞き覚えがないし、騎士爵家かな。

 それで分隊長ということは紛うことなき実力者ってことだろう。


「私はミューゼル家長男、レオポルト・フォン・ミューゼルです」

「君がか」

「え?」


 彼はニヤリと笑うと話を続ける。


「君の話は王都でも噂になっていてね。なんでも飛ぶ鳥を落とす勢いだとか」

「大げさな……」

「大げさ、ね。まぁ噂は噂だ。自分の目で確かめるまではと思っていたが、ふむ」

「?」

「いや失礼。なるほど、噂もあまり馬鹿にできないものだな」


 そう言うと彼は首肯した。

 いや、その、あまり期待されても困るんですけど。


「持ち上げても何も出ませんよ?」

「ははっ。まぁ何か困ったことがあったら言ってくれ、力になろう」

「はぁ、ありがとうございます?」

「さて、話がそれたな。それでこれが?」

「はい」


 ブルースさんは簀巻を蹴飛ばして転がし、顔が上に来るようにした。


「ふん、この汚い面。間違いないな。おい、こいつを牢へ放り込んでおけ。こいつのご主人様が来ても出すんじゃないぞ」

「はっ! わかりました!」


 簀巻団長は詰め所の奥へと引きずられていった。


「ん? どうした?」

「いえ、後頭部がいい感じに擦れているので禿げないか少し心配に」

「はっはっは! 君は面白いな! 何、心配するな。そんな心配はすぐに不要になるさ」

「そうですか?」

「そうとも」


 なぜかは聞かないほうが精神衛生的に良さそうだな。

 アーメン。


「さて、申し訳ないが君達の身柄も拘束させてもらうことになる」

「え?」

「建前上の話なのだがね。彼を拘束して君達をしないというわけにも行かないのだよ」

「そんな……」


 確かに現段階では罪状が確定したわけではないし、後々ラーダス男爵からの突っ込みを減らす為にも必要な処置なのだろうが。

 さよなら、王都観光……。


「もちろん、牢屋なんかに入れない。ちゃんとした部屋で持て成すから許してはもらえないだろうか」

「……、仕方ないですね……」


 申し訳なさそうなブルースさんを見ると、ゴネるのもどうかと思ってしまう。

 彼も職責上仕方なく言っているのだろうし。


「モブキャラクター伯爵閣下が来られたら連絡するからそれまで待っていてもらいたい」

「わかりました」

「協力、感謝する」


 ブルースさんはホッとした表情で感謝を告げると部下に俺達を案内するよう指示を出し詰め所の奥へと戻っていった。


「それではこちらへどうぞ。ごゆっくりお寛ぎ(おくつろぎ)下さい」

「はい、よろしくお願いします」


 騎士団の客室らしき部屋に通され、ソファーに座るとお茶が出される。

 俺だけでなく、アルやシンディー、竜牙さんの分も用意してくれたようだ。


「ここは貴族の屋敷ではありませんからね、多少は問題ないでしょう?」


 そう言って爽やかに笑う騎士に会釈を返す。

 普通は従者は従者らしくと言うものだが、近衛騎士団はなかなか融通が効くらしい。


「あまり規則だ何だで雁字搦めになっているといざという時に動けませんからね」

「そういうものですか」

「ええ。尤も、それだけ信頼されているということでもありますから変なことも出来ませんが」


 偏差値の高い高校程校則が緩いのと同じ理屈なのだろうか。

 そう言われてしまうと俺達も変なことは出来ないな。


「何かありましたらそちらのベルを鳴らして下さい。直ぐにお伺いしますので」

「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」


 説明を終えた騎士は一礼すると部屋を出ていった。


「このスコーンとっても美味しいです!!」


 ……、騎士が居なくなった途端お菓子に手を出すシンディー。

 少しは、その、ね?


「はは、まぁ他の目もないことですし、ね」


 一瞬竜牙さんの眼光が鋭くなる。

 なるほど、覗かれている。もしくは聞き耳をたてられていると見るべきかな。

 探られて痛い腹もないし、自然体で居ればいいと思うけど。


「それにしてもほんとに死ぬかと思いましたです」

「ほんとね、僕も覚悟したよ……」

「他の貴族の領地でいきなり襲い掛かってくるなんて正気じゃないです」

「これからどうなるんだろうね……」


 偶然とは言えちょっと露骨すぎるタイミングじゃないですかねぇ……。

 シンディーとアルの発言に、俺と竜牙さんは冷や汗を垂らすのだった。

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