妹
「いったいこれは…」
目覚めたての幼女は途惑いながらこちらを見ている。仲間にしてあげますか?
はい/迷いなくはい
まぁ当の幼女は間違いなく仲間になりたくないだろうけどね。てへっ
そんなバカなことを考えつつ(いや考えんなよ…)俺は幼女にかける言葉を探す。
もうヤダこの静寂という恐ろしきプレッシャーは…
いや俺が悪いんだろうけどさ…
「こんな不束なことを女の子であるあなたに聞くのは大変申し訳ないんだが…昨日の夜のことを覚えていますか?
「えっと、昨日は十一時頃に自分の部屋のベットにはいりました。朝起きたらここにいました。」
ん?え?確か昨日の飲み会は終電だからって理由でお開きになって…そこまではちゃんと覚えている。
終電ってことは零時はきっと回っているはずだ。
大学のみんなもいたからアリバイもちゃんと成立する。
ってことは俺の罪はこれで晴れたんじゃ…
「それは、それは本当なのか?」
「はい、本当です。確かに十一時には…」
やった!やったぜ!これで俺様の罪は完璧に晴れたぜ!
ってことはこの娘は勝手に俺んちに来たってことだぜ!なんだそうかそうか、俺に襲ってほしかったんだな!よーしちょっと待ってろ。いまからコンビニでコ〇ドーム買ってk…
「…今なにかものすごい悪寒を感じました。なにかやましいことをかんがえましたよね…」
俺のやましい妄想を華麗にカットするこの幼女…
こっ、こいつ。エスパーなのかっ!
「い、いや。し、してないよ?」
「してたんですね。はぁ…あなたはとんだ変態さんなんですね」
うっ…流石の俺でも可愛い幼女に変態って言われると…萌えるねっ!
いや、だいぶ心外であります。はぁ…
「とりあえず、質問させてください…ここは誰?私はどこ?」
「それを言うなら、ここはどこ、私は誰だろ…」
おっと、ついつい俺のツッコミ精神が…
「とにかく、ここは俺の家だ。君が誰かはこっちが聞きたいよ」
「はぁ、私はこんな変態さんに名のならければならないのでしょうか…」
(グサッ)
「まぁ仕方ありません。特別に名乗ってあげましょ…」
突然彼女の会話が止まった。心なしかどんどん顔色が悪くなっている気がする。
「ど、どうした?大丈夫か?」
「いや、そ、それが…自分の苗字が思い出せないんです。名前は雅枇といいます。」
これにはさすがの俺も少し驚く。これは完全に俺の偏見だが、普通の記憶喪失なら苗字も名前もきれいさっぱり忘れるだろう。こんなケースもあるんだな…
そんなことは置いといて、雅枇かぁいい名前だなぐへへ
…とか思ってないもん!ぐへへとか普通の人は絶対に言わないもんっ!
「そ、そうか…とりあえず他に覚えていることとかないか?ゆっくりでいいからさ、落ち着いて…ね?」
「はい、ありがとうございます。でも今はそれ以外は思い出せません…」
「わかった。よし、とりあえず警察にいこう。そこなら何とかしてくれるかも…」
「はぁ…バカなんですか?はぁ…」
「…誰がバカだ」
そう言って俺の言葉をさえぎる幼女…失礼、雅枇。
「少し考えればわかると思いますが…もし私を国家権力の犬ども…ゲフン…警察に…」
「…お、お前なぁ」
「話を遮らないでもらえますか?」
「は、はい…」
お前が言うのかよとか言わない俺、ちょー紳士的っ!
「私を警察に届けて、そのあとどう説明するつもりですか?ありのままに朝起きたら横で寝ていましたといって信じてもらえるとでも?」
確かに、ごもっともだ。信じてもらえるわけがない。ここは魔法の国ではないのだ。
「それに…」
「ん?」
「私をこの格好のまま外に連れ出すおつもりですか?そんなことしたら警察たどりつくまでに私が、おまわりさんこっちですーって叫んで逮捕ですよ。」
それもごもっとも。そういえばこいつ下着姿だったんだった。いやぁ、すっかり忘れてた…っておいこらちょっと待て。お前が警察呼んじゃうのかよ
「なら、服着ろよ…てかそもそもなんで服着てないんだよ」
「あなたが脱がせたんではないのですか?」
「…そんなことしないよ」
「あなたが昨晩私に対して不埒な行為に及んだからではないのですか?」
「だからそんなことしてないって!」
「あなたが今日起きて私に気づいてから、よからぬ妄想をしたのではないのですか?」
「し、してない…ホントダヨー。ウソジャナイヨー」
何この子鋭い。怖い怖い
「はぁ、してたんですね…とりあえず服を返してもらってもいいでしょうか…」
「いや、ほんとに知らないんだって…あっ!!」
「なんですか、急に大きな声を出して。ついに脳が壊れましたか?」
「いやそうじゃなくてさ…もしかして君、いや俺もまだ整理できてないいんだけど…」
「なんだ、脳が壊れたのではないのですね」
…そらそうだろう、はぁ
「もしかして、君はここにワープしてきたんじゃないかな。なんというか、召喚されたというか…」
「私のことは後回しです。さぁ、精神科に行きましょう。さぁ早く」
「いやだから、話を最後まで聞けよ…」
「まぁ、昨日はこの格好のまま睡眠体制にはいってましたから、自分の身につけていたもののみとでワープ(笑)したというなら、いま私が服を着ていないのも合点がいきますし…」
「おいこら、服がないのはお前がもとから着てなかったせいだったのかよ…てかわかってるなら人を疑うなっ!」
「まぁいいじゃないですか。落ち着いて落ち着いて。はい、一旦深呼吸しましょう。いきますよ…ひぃ、ひぃ、ふぅーっ。ひぃ、ひぃ…」
「…人はそれを深呼吸とは言わない。」
「で、どうするんですか?」
「どうするってなにを?」
「いや、だからですね…
これからどうするんですか?警察も今回ばかりは頼れませんし、
かといってこのままこの家においてもらうわけにもいきません。流石に身のきけ…いえ、申し訳ないですし…」
「…だから、襲いませんって!」
この娘…生意気だな。そんなところも可愛いっ
「まぁ、そうだけどさ、君一人でなんとかなるもんでもなかろう。
せめて記憶が戻るまではここにいたらどうだ?」
いや、いてくださいホントお願いです。一生のお願いですからぁぁぁっ‼
「本当に大丈夫でしょうか…いろんな意味で…」
「お、おう…まかせとけ。何とかしてやる」
あぁ、可愛い。この戸惑いの表情も可愛い。
若干、嫌悪感が混じってるのはいただけないがな…はぁ
「では、しばらくの間…不束者ですが宜しくお願い致します。」
「こ、こちらこそ、よろしく…」
いぃぃぃよっっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!
これから毎日幼女と一つ屋根の下ぁぁぁぁぁぁ
「また、悪寒が…」
「…なにも考えてない。この喜びを全身で感じてるだけだ。
ほら、言うじゃん?Don't think,FEEL…て、ね?」
「…へんたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」
「うおぃっ!やめろぉ!」
反射的に口を押えてみたが、時すでに遅し…大音量で俺が変態だと知れ…ちょっと待て。俺は変態ではないっ!
「んん、んぃんんんんで、んんんんんんん。(もう分かったんで、離してください。)」
「あぁ、ごめん」
「あぁ、やっぱりやめます…」
ん?何のことだろう?あ、俺を変態呼ばわりすることかな?わーい
「これから生活する上で、いきなり私のような幼女と同居しだしたら、周りになんと言われるかわからないから、せめて外ではお兄ちゃんと呼んであげようかと思っていたのですが…」
「すいませんでした。本気で謝ります。だから、どうか、どうか、お兄ちゃんと呼んで下さいお願い致します。」
「はぁ、まあいいですよ。お世話になる間くらい必要以上に迷惑はかけたくないですし…」
「あ、ありがとう…」
あれ、目の前が見えない。な、涙が…
「お願いですからそれぐらいで泣かないでください。分かりましたから…
そういえば、お兄さんの名前を聞いていませんでしたね。」
あ、すっかり忘れてたぜ。俺としたことが、幼女に名乗りを上げるのを忘れるるなんて何たる失態…腹を切ってお詫び申し上げなければ…
「おう、俺は東原良介っていうんだ。これからよろしくな。」
「はい、よろしくお願いしますね。お兄ちゃん」
こうして、人生19年目にして、初めて俺に妹ができた。