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愛憎の華(笑)  作者: 雨鴉
第一章:出逢い編
5/41

御披露目パーティー 1

連続投稿はこれで終了です。

 

『愛憎の華』全十五巻の最初の山場が、この百合子嬢の御披露目パーティーである。


 ストーリーは、貴族の娘だが平民と変わらぬ暮らしをしていた百合子嬢は、まず貴族の令嬢としての教養を身に付ける為に、複数の教師による個人授業を受ける事になる。

 この個人授業で、百合子嬢はハイスペック振りを見せて、どんどん令嬢としての所作を身に付けていく。

 この辺りで兄と交流を深めて仲良くなるのだが、具体的にどんな出来事があったのかは分からない。

 前世では一通り原作は読んでいたが、何せ漫画喫茶で読んでいた為、細かい描写は忘れてしまっているからだ。


「確か……このパーティーで、レンレンと出会うんだよなぁ」


 レンレンとは、百合子嬢の後の婚約者、一条蓮司の事である。

 ネットじゃ本名よりこっちの呼び名の方が有名で、作品の中でも珍しく、ファンだけでなくネタとして見ているネット民からも人気があった。

 私も例外ではなく、全ての登場人物の中で一番彼が好きだった。


 レンレンは一言で言うと『意外性の塊』だ。

 百合子嬢と初めて出会った頃はまだ学生だったのだが、後に宮家では珍しく軍に入隊するのだ。

 恐らく彼の軍服姿を描きたくて、作者は軍がある設定にしたんだと思う。カラーページ気合い入りまくりだったし。

 宮家である一条家の次男であり次期当主な上に、剣術と武道の達人、しかも軍学校を首席で卒業ときた。……ハイスペック通り越したチートキャラである。

 何故次男なのに次期当主なのかと言うと、一条家の長男は今上帝である為、一条家の継承権を持たないのだ。だから、必然的に次男である彼が選ばれたのだ。

 ……ここまででも設定盛りすぎなのだが、これだけではないのだ。


 ストーリーのクライマックスで、三ノ宮家を滅亡させる計画を、上位貴族が手を組んで企てるのだが、レンレンがそれを一人で一掃するのだ。チート過ぎる。

 この上位貴族のクーデターは、私とは無関係ではなく寧ろガッツリ関わっている。

 実はこのクーデターの主犯は、私の母の生家である侯爵家当主であり、その当主は私の祖父である。

 それだけじゃなく、母や私もその計画に協力していた為に、その結果悲惨な最期を迎える事になる。


 何故私が、初恋のレンレンの生家を滅亡させる計画に協力するのかと言うと、まぁ、簡単に言えば失恋である。


 私がレンレンと出会うのもこの御披露目パーティーで、勿論会場で会う訳ではない。

 パーティー参加させて貰えない悲しさで泣いていた、会場から遠く離れた場所にある離れの中庭で出会うのだ。

 友人である兄と新しい異母妹である百合子嬢と会話した後、会場に居ない私と母に疑問を持ったレンレンがパーティー会場を抜け出し、泣いてる私を見付けるのだ。


 レンレンがネット民……特に男性から人気が出たのはこのシーンからだ。

 不細工な梅子に自然に話掛け、さりげなく励ます紳士っぷりに、『ヤダ……イケメン』『レンレンになら掘られてもいい……』と冗談混じりのコメントが飛び交った。


 ずっと家族に蔑ろにされてた梅子には、そりゃもう神にも等しい存在に思えた。例えレンレン本人が全く意識して慰めたり励ました訳では無くてもだ!!

 ……罪な男である。

 梅子がレンレンと直接話したのはこの時だけで、後はストーカーよろしく彼を影から見つめるだけとなる。我ながらイタイ奴である。

 そうやってストーキングしてると、レンレンの横にはいつも百合子嬢がおり、段々と親密な関係になっていくを嫌でも見るようになる。この辺りから梅子はちょっとおかしくなり始め、百合子嬢への嫌がらせを激化させてしまう。

 その嫌がらせ現場をレンレンに見つかり、彼に軽蔑された事でまたおかしくなり、トドメは百合子嬢との婚約発表である。

『貴方が手に入らないなら、いっそ全て滅びるがいい!!』と狂った高笑いをする梅子に、梅子に好意的だったネット民ですらドン引いた。

 しかもこのクーデターに乗じて、百合子嬢をも亡き者にしようとする悪役っぷり。

 結局、それはレンレンと百合子嬢の愛を深めただけに終わり、梅子は侯爵家の捨て駒にされた挙げ句に、獄中で発狂死する。

 ……不憫過ぎで涙が出る。


 ラストは二人が結婚してハッピーエンドになるのだが、梅子な私はバッドエンドだ。


 ……私の悲惨な最期は置いといて、レンレンは作者一番のお気に入りな男性キャラクターであり、非常に有能なヒーローである。


 彼を『意外性の塊』と称したのは、レンレンの軍人としての有能さと、男としてのイケメンっぷりに反して、性格はかなりアホの子……ゲフンゲフン!!……天然が入っているのである。

『愛憎の華』の男性キャラクターは、基本百合子嬢にメロメロなのだが、レンレンだけは百合子嬢がメロメロになるのだ。

 百合子嬢が頑張ってアタックするのだが、レンレンは気付かない上に斜め上な解釈をしたりするし、割りとデリカシーの無いこともサラッと言う。それで百合子嬢が傷付いたりするのだが、レンレンは自分の所為とは気付かず見当違いの慰め方をする。

『レンレンwww違ぇよwww』『違う、そうじゃない』とネット民からもツッコまれるほどの残念な……ゲフンゲフン!!愛されキャラなのだ。


「死亡フラグ回避の為なら……会わない方がいいよなぁ……」


 好きなキャラクターだから、是非とも生で見てみたいのだが。

 自分の部屋で一人きり、机に臥せったまま呟く。

 今晩が件の御披露目パーティーが開催される日なのだ。

 朝から屋敷は喧騒に包まれ、パーティーの準備を進めていた。遠く離れた私の部屋にも、その浮かれた空気が伝わって来る。

 ……案の定、私や母には何の知らせもない。どうやら母はパーティーに乗り込むつもりらしいが、すぐに父によって追い出されるだろう。


「普通さぁ……自分の奥さん蔑ろにしてたらさ、悪評が立つもんじゃない?いくら政略結婚でもさぁ……」


 ここでもご都合展開で、世間の評価は、妾の娘を伯爵家の令嬢と認める優しい父>>>>>越えられない壁>>>>>自分の妻を蔑ろにする酷い夫 なのだ。

 ……母子ともに不憫である。


 こんなに冷めきった夫婦関係なのに、第二子である私が生まれたのは、百合子嬢を引き立てる悪役(コマ)の確保の為の、ご都合展開の一つだったのだろうな。


 それに、レンレンとの出会い恋をする展開も、無くても本筋にはあまり関係がない(百合子嬢が愛するレンレンを殺し、絶望させようと企むでも話は通る)から、梅子は二人の恋愛のスパイスと言う扱いだと思うし。


「いかん、いかん!!考えが卑屈になってきた。止めよう!!」


 机から身体を起こし、背伸びをするとコキコキと音がする。たいぶ身体が固まってたみたいだ。


「パーティーにはまだ時間あるし、誰も来ないだろうから、外で軽く身体を動かすか」


普段着である深緑のワンピースから、白いシャツに乗馬用のズボンに着替え、いつも身体を動かすのに使っている中庭に向かった。



……私は失念していた。

異世界転生……漫画の世界にトリップする話は、大抵ストーリー通りに進まないと言う事を。



これからの更新は不定期になると思います。

※活動報告も更新しております。良かったらどうぞ。

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