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愛憎の華(笑)  作者: 雨鴉
第一章:出逢い編
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梅子、自分の置かれた状況を把握する

 

 唐突に自分があのネタ漫画の世界に転生したと悟った、花園梅子八歳春の初め。


 私の前世は平凡そのもので、両親に愛され友達にも恵まれていたし、恋愛も多くはないがしていた。

 だけど、名前や死んだ年齢などは酷く曖昧で、前世の記憶は殆ど無いに等しい。


 何故かこの世界がネタ漫画『愛憎の華』であることはしっかり思い出した。前世でかなりディスっていた所為だろうか。


 ……前世は置いといて。現世の話である。


 あの後、私が前世を思い出して呆然として、母がヒステリーを起こしてキーキー喚いているのを無視して、困惑する百合子嬢の肩を抱いて父は部屋を後にした。

 ……漫画通りの主人公マンセーっぷりに笑うしかない。


 喚いている母を使用人に任せ、自分の部屋に戻り現状を整理することした。

 机に座りノートとペンを取り出し、思い出した事を書き出していく。



 ・舞台は現代と明治大正時代の日本をアレンジした架空の日本。


 ・現代も貴族制度があり、貴族や皇族は一夫多妻制だが、基本離婚は不可。


 ・神皇(しんのう)を中心とした政治体制。一つの皇家が世襲するのではなく、三ノ宮家(さんのみやけ)と呼ばれる三つの宮家から神皇を選んでいる。この三ノ宮家のみが皇族を名乗る事が出来る。


 ・軍隊があるが各国との関係は良好で、戦争の気配は無い。


 ・インフラは整備されているが、車は少なく移動は馬車か汽車が主流。携帯電話やインターネットに至っては存在すらしていない。


 ……ここまで設定を書き出したが、結構きちんとした設定があった事に気付く。

 折角凝った世界観を作ったのに、もっと活かしたストーリーにすれば面白くなったと思うが、何故あんなツッコミ所満載なフワッフワなストーリーにしてしまったのか……。勿体無い。


 SNSに料理上手をアピールしたくてゴミ料理をアップしていた、脳内花畑な作者を思い浮かべてしまい、イラッとした。私の悲惨な未来の元凶なのだ、苛ついても許して欲しい。


 今の所、思い出した設定はこれくらいなので、ページを変えてから『愛憎の華』の登場人物を書き出す。


 ・花園百合子……主人公。八歳の時に母親を亡くし、父親である花園伯爵家に引き取られ、伯爵の第三子と認知される。

 性格は明るく優しく、ちょっぴり寂しがり屋。好奇心旺盛で何事にも挑戦し結果を残す、ハイスペックなお嬢様。

 容姿は亡くなった母親に似て、天使のような可憐な美貌の持ち主。


 ・花園桜哉(さくや)……百合子の五歳上の異母兄。異母妹の境遇に同情して優しく接する。対して百合子に辛く当たる実母と父母を同じくする妹には、嫌悪感を隠せずにいる。

 性格は、表面上は優しく穏やかだが、実は沈着冷静で非情な面もある。彼もハイスペックの持ち主で、大抵の事は並み以上にこなせる。

 容姿は父親に似て端整でモデル体型。茶色の髪に琥珀色の瞳。


 ・花園薔介(しょうすけ)……百合子の実父で、花園伯爵の現当主。若くして侯爵家令嬢の蘭子と政略結婚をする。

 性格に難のある蘭子を愛せないが、桜哉と梅子をもうける。自分似た桜哉は愛せるが、蘭子に似た梅子には冷たく接する。

 仕事で街に出ていた時に、百合子の母親である桃香と出会い恋に落ち、百合子が生まれた。

 本当は桃香を本妻にしたかったが、平民の桃香とは身分が違い過ぎて泣く泣く妾にした。

 性格も容姿も、桜哉は彼譲りである。ただ、桜哉の髪の毛はストレートだが、薔介は癖毛でちょっとうねっている。


 ・花園蘭子……薔介の妻で花園伯爵夫人。元は格上の侯爵家令嬢。皇族主催の夜会で会った薔介に一目惚れをして、無理矢理結婚を迫った(家同士で決められたようにした為に、薔介はこの事は知らず、政略結婚だと思っている)。

 恋焦がれた薔介には冷たくされ、薔介に似た息子に過剰に愛情を注ぐが、疎まれる。自分似た梅子は放置気味。

 薔介が心から愛する桃香と、その娘である百合子に激しく嫉妬し、百合子に様々な嫌がらせをする。

 性格は、高慢で我が儘でヒステリー持ち。気に入らない事があると、周囲に当たり散らす。

 容姿は、黒髪黒目。目は一重で小さくてつり上がっており、鼻は上向きで出っ歯。ガリガリの体型。


 ・花園梅子……花園伯爵家令嬢。桜哉の妹で百合子の異母姉。八歳の時に異母妹の百合子と出会い、自分を見向きもしない父や兄に一心に愛される彼女を激しく嫉妬する。

 同じ学校に入ってきた百合子を、取り巻きと共に苛める。

 後々の百合子の婚約者となる一条蓮司(いちじょうれんじ)が初恋で、彼の為なら何でも出来る程ののめり込みようだったのに、自分が選ばれなかったことで気が狂う。

 性格は、陰険で自己中心的。一つの事にのめり込むと周りが見えなくなる。

 容姿は黒髪癖毛で黒目。目は小さく一重で、頬にはソバカスがある。ガリガリ体型。



 …………梅子、可哀想。

 その『梅子』、私なんだけどね。


「ノォォォォォ!!神は私を見捨てた!!」



 梅子の人物紹介を書き終えてから、机に拳を振り落とす。

 これ、梅子の方が冷遇されてるじゃないか!!

 大体何だよ『梅子』って!!登場人物みんなキラキラした花に(ちな)んだ名前なのに、『梅子』って……せめて『梅香(うめか)』とか『小梅(こうめ)』とかにしてくれよ……梅の花は綺麗で好きだけど。

 テキトー感丸出しに見えるのに、あの脳ミソプリンな作者の悪意たっぷり詰め込んである。そんなに梅子嫌いか。


「くそぅ……梅子、コンプレックス拗らせた挙げ句メンヘラかよ……泣きそう」


 もう泣いてるけど。


 机の横に置かれた鏡台に目を向ける……鏡部分には薄紅色の布が掛けてある。


「……ま、まぁ、自分がどんだけブスか把握しとかないとな……百合子嬢が原作通りのキラキラ美少女だったから、あんまり期待できないけど…………ヒィっ!?」


 布を取り外して、心底恐怖した。

 楕円形の鏡の表面は粉々に砕かれ、何も映してはいなかった。

 容姿コンプレックス拗らせまくりじゃまいか……。




 あれから苦労して、やっと鏡を見つけ出した。

 梅子、部屋中の鏡粉砕してるんだもの……鏡捨てようよ、残しておくなんてホラー過ぎる。

 前世同様、梅子の八歳までの記憶も曖昧で、どんな性格だったか思い出せない。後で日記とか無いか探ってみよう。


「うん。ブッッッサイク!!」


 予想通り、作者の悪意と憎しみを一心に受けたキャラクターデザイン。一つ救いがあったのは、母みたいに出っ歯じゃなかった事かな。歯列矯正って時間もお金も掛かるしね。


 しかし……陰険な顔立ちだなぁ……、だから余計にブスに見えるんだよねぇ……。

 整形は怖くて出来ないけど、スキンケアや運動なんかで、少しでも変われそうだな。


「大きな目が可愛いって誰が決めた!!よっしゃ!!目元涼しげな美肌美ボディな淑女を目指すぞ!!」


 幸いウチは伯爵家。金持ちである。

 頭と身体と金を使って、自分なりの幸せを掴んでやるぞ!!




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