表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛憎の華(笑)  作者: 雨鴉
第二章:種蒔き編
13/41

梅子、妙な男と出会う

※注意!!

梅子の性格の所為か緊張感が全くないですが、不愉快な描写(痴漢行為・性犯罪描写)があります。

苦手な方はご注意下さい。

 

 いやぁ……こってり絞られた。


 結局遅刻してしまった私は、日本舞踊の先生に無茶苦茶しごかれた。元々運動音痴な上にリズム感のない私には、とても辛い時間だった。

 普段使わない筋肉が悲鳴を上げる中、ヨロヨロと路面電車の停車駅に向かう。辺りはすっかり黄昏に包まれている。


 停車駅は先生の家から近く、歩いて五分くらいの距離にある。ただ、駅までの道が薄暗く、ちょっと怖い。

 閑静な住宅街だから、人通りは少なくあまり物音もしない。

 整備された石畳の上を、私の足音だけが響く…………んん?


 コツコツコツコツ……

 ザッ……ザッ……


 誰か後ろから付いてきてるー!?


 冷や汗ダラダラ流しながら、後ろの気配に集中する。

 イヤイヤイヤイヤ!!百合子嬢みたいな美少女なら、変質者に付けられてると思うけど、私、ブサイクだから!!ブス専じゃない限り狙われる可能性低いでしょ!!

 パニックになりながら、駆け足で駅を目指す。駅近くに行けば人通りもあり、もしブス専の変質者だとしても迂闊に手を出せないだろう。


 あと一つ曲がり角を曲がれば大通りに出られると思った瞬間、もの凄い勢いで後ろに引っ張られた。


 ブス専の変質者だったぁぁぁ!!


 変質者はまず私を背後から抱き締め、口を手で塞いだ。

 少女漫画でよく見られる『落ち着け……俺だ』のあのシチュエーションだ。ただ、背後を振り返ればイケメンではなく変質者だ。

 うへっ!?コイツ私の未熟な果実である、おっぱい揉んでくるんですけど!!!!

 変質者は、抵抗する私を引き摺って暗がりに連れ込もうとしている間、まだ発達途中の膨らみを鼻息荒く揉んでくる。

 ……二年間のエステや日本舞踊等の運動のお陰なのか、元々のポテンシャルなのかは分からないが、私の身体付きは十歳にしては早熟だった。手足はスラリと長く、腰はちゃんと括れている。……体型だけなら、恐らく前世よりもナイスバディだろう。顔はブサイクだけどな!!


「ムグッ!!ムグギュ!!グムムムム!!」


 奇声を上げてるんじゃないよ?口を塞がれてるから、叫んでもくぐもった声しか出ないのよ!!

 ぬおぉぉっ!!コイツ息臭ェェ!!めっちゃ酔っ払ってんな!!

 陸に上げられた魚のようにピチピチ跳ねながら、何とか変質者の腕から逃れようとするのだが、拘束する腕は思ったより太く頑丈だ。


「ハァハァ……お嬢様が何で一人でこんな所歩いてるんだよ……へへっ、柔こい乳してんな……堪らないぜ」


 お巡りさんコイツですぅぅぅ!!


 ネットでよく使われるセリフを使う日が来るとは……!!

 眼球だけ動かして、変質者を見る。

 髭面のガチムチオヤジ(推定四十代)酔っ払い。

 ……こうなれば仕方ない。私にも多大なダメージがあるが、貞操の危機だ。背に腹は代えられない。


 ○○○(ピー)を握り潰そう。


「へぶっ!?」


 必死に腕を動かして、背後にいる変質者の股間に手を伸ばそうとしたら、そのまま押し倒された。思い切り額を打った。これがレンレンなら、鼻を打つだろうな……どうせ鼻ペチャですよ。


 どうしよう。マジでこのまま女の子の一番大切なモノを奪われてしまうのか。

 所詮十歳の子ども。大人の男に押さえ込まれてしまったら、身動きが取れない。


 こんな時、百合子嬢だったら、颯爽とレンレンが助けに来るんだろうな……ぐすっ。

 いや、そもそもこんな事態にはならないよな。側でずっと守るし。


 完璧に詰んでしまった私は、変質者に身体をまさぐられながら、泣くしかなかった。

 ヤられちゃった後、どうしよう。本格的に家から追放かな……そしたら、あの白梅の木に花が咲くの見られないなぁ……それに、この年齢で穢れてしまったら、レンレンにも嫌われるだろうなぁ……。


「へぶっ!?」


 私が、ぐるぐる考えながら泣いていると、急に拘束が解けた。……と言うか、鈍い音がしたかと思うと、変質者が潰れた声を出して吹っ飛んだ。


「オイ、ガキ平気か?」


 何だこの腰に来るセクシーな美声は!!

 私は涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔をしているにも構わず慌てて身体を起こし、その美声の主を見上げた。


 ………………………

 ………………

 ……間。


「オイ何とか言えや、コラ」


 私を助けてくれた美声の人は、何と言うか……えっと、命の恩人に言うべきではないのだが、その……あの……


「小汚ないだろ」


「そう!!それ!!」


「オイコラ」


 いつの間にか私の横に来ていた少年が、的確に答えてくれたので、思わず返事をしてしまった。


 吹っ飛ばされて気絶している変質者を踏みつけている人は、声はとても艶やかで美しいが、格好は小汚なかった。

 均整のとれた長身だが、黒髪はボサボサで背中の真ん中辺りくらいまであり、毛先の方で緩く紐で縛っている。そして顔は無精髭に覆われていたので、下手すれば彼の方が不審者だ。

 紺色の草臥れた着流し姿で、胸元がかなり開いていて、そこから鍛え上げられた胸板が覗いていた。


 頭をガリガリ掻きながら、トントンと肩を木刀で叩いていた男は、私の姿を一通り見て溜め息を吐いた。前髪が長くて目元が見えないので、どんな表情をしているか分からない。


「何で聖樫に通うお嬢様が、こんな暗がりの道を歩いてるん だよ」


「……習い事の先生のお宅がこの近くなもので」


「そうじゃねぇよ。何で馬車か車呼ばねぇのかって言ってるんだよ」


 面目ない。私は、専用の馬車も車も持ってないです。


 そう言ったら家庭の事情を聞かれそうなので、何か言いたくない。目元見えないくせに、視線が超痛い。


「この子、よく路面電車に乗ってるの見掛けるよ。その制服目立つし」


 私が立ち上がる為に少年は手を貸してくれた。私より少し背が高い彼は、多分私と同じくらいの年頃だろう。

 日が大分暮れて、判別が付きにくくなってるが、髪色は恐らく茶色。顔は……モブ顔だ。アシスタントさんが描いているだろうと思われるくらい、メインキャラとのタッチが違う。

 多分、少年漫画だったら主人公の友達のサッカー少年だろうなと思うくらい、爽やかな顔立ちのモブ顔だ。クセありまくりなブサイクな私は、とても羨ましい。


「はぁ?聖樫のお嬢様が電車ぁ?だからこんな変態に目ェ付けられるんだよ」


 呆れたように鼻を鳴らす男は、立ち上がった私を上から下まで見る。


「オイお前、いくつだ?小学生の割に発育良過ぎだろ。何でそんなエロい身体付きしてんだよ……顔は残念だが」


 この人、小汚ない発言根に持ってんな。最後の一言は余計なお世話だ。


「オイ、フーキ。さっき襲われた子に聞く事じゃない」


 この少年紳士だなぁ……異性に優しくされる事なんて滅多にないから、ちょっと恥ずかしい。

 居心地悪そうにしている私を見た少年は、口元を緩める。


「膝、怪我してるから、俺の家で手当てしよう。……フーキ、ソイツの始末宜しくな」


「へーへー」


 フーキと呼ばれた男は、少年の言葉に気のない返事をして、未だ意識の戻らない変質者の襟首を掴んで引き摺っていく。


「君はこっち。少し歩くけど、足は平気?」


 足元を見ると、両膝から血が出ていて、今更ジンジンと痛み出した。それ以外は捻った様子もなく大丈夫そうだ。


「平気です」


「じゃあ行こうか」


 この流血状態で電車に乗る訳にも行かず、お言葉に甘える事にした。

 極力私に触れないようにしながら、少年は私を誘導してくれた。


「……あ。」


 とんでもない事を思い出した私は、後ろを振り返る。

 私たちとは逆方向に進む男の後ろ姿がある。


「あ、あの!!」


 その背中に向かって呼び掛けると、男は首だけこちらを向いた。


「助けて下さいまして、ありがとうございました」


 マナー教室で学んだ、綺麗なお辞儀をする。危ない所を助けてくれたのに、お礼を言わないままだった。

 そんな私を見た男は、口元を緩めて前を向いた。そして、こちらを見ないまま、ヒラヒラと手を振った。


 ……ちきしょう、格好いいぜ。小汚ないくせに。



この話を書いてる時に、なんつータイムリーな事件が……orz

性犯罪者は腐り果てろです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ