クラスごと勇者召喚されちゃった!?
ある世界の王様と側近たちの会話。
「・・・そろそろ『アレ』を行わなければ、他の国に先をこされてしまいますぞ、陛下。」
一人の側近が王に問う。
「だが、『アレ』は一度行えば、二百年待たねばならぬぞ。
失敗はできぬのだぞ!」
側近の一人と王は言い合っている。が、側近は諦めず、最後の切り札を出した。
「大丈夫です。あの者ならば成し遂げてくれましょう。」
側近がそう告げた。
その側近の言葉に王は目を見開き
「!もしやあやつを使う気か!」
「ええ、ですから、あの者が生きている間に。」
王はそれが誰かを察して、考え込む
そして、しばらく考えた王は
「・・・分かった。ならば、やるとしよう・・・急いで『勇者召喚』の準備を始めるぞ!」
「はっ!!」
勇者召喚を行うことを決めた
地球のある学園にて
「よし、これで、HRを終了する!
次の授業の先生が来るまで、大人しくしておくように!」
そう言い残して、担任が去った後、一斉に教室が騒がしくなる
だが、このクラスの人間の約9割方は、良いやつばかりなのをみんな知っている
だから、みんな仲良しだ
滅多なことじゃ喧嘩など起きない
いつもの変わらない一日・・・のハズだった
いきなりパッとみんなが眩い光に包まれた
そして、目を開けると・・・
まったく見知らぬ場所にいた
異世界にて(獅子神 里苑、視点)
いつも通りの教室にいたハズなのに
眩い光に目を紡ぎ、開けば、まったく見知らぬ場所だった
そして、『向こうの世界』ならば、笑われるような服を着た人達が目の前にいっぱいいた
内心驚きながらも、何処か期待に溢れていた
何時もの日常など、私はとっくに飽きていたから
だから、このシチュエーションは、私の今まで抑えていた本性が曝け出されるには十分だった
目の前の一番偉そうな人が口を開く
多分、彼が王だろう
その予想通り、彼はこう名乗った
「ようこそ。私の名は、リゼロア・レファ・ライアート。
この国の王だ」
その言葉を聞いて確信する
「は?なにいっ・・・」
男子生徒が何か言おうとしているが知ったこっちゃない
私はすっと前に出る
その瞬間、周りが、目の前の人達とクラスメイトが、ざわりとなった
「お初にお目にかかります、陛下」
その言葉に、動揺しながらも陛下は言葉を発した
「お前は、名をなんと申すのだ?」
「私は、リオン・シシガミと申します」
名を聞かれ、すぐに返答する
動揺を深めた陛下は、更に問う
「リオン、そなたは何故、動揺しない。普通は、喚き散らすか、沈黙してしまうものだ」
まあ、そうだろうなぁ・・・と内心苦笑しながら、理由を話す
もちろん、苦笑しているのを面には出さない
そしてさっき思っていたことを全て告げる
「飽きていたのです。平凡な日常に。そんな私にとっては、この出来事は、歓喜極まりないことなのです。『普通』など、要りません。私が欲しいのはただひとつ。
私を楽しませてくれるもの
興奮させてくれるものです
それを得るためならば、私は何でもやってみせましょう」
言い切ると同時に、口角をニィッと吊り上げる
いつかの私の本性が顔を出す
そんな私を見て王は・・・笑った
「はっはははは!!面白い!
いいだろう!強くなれ!リオン!
そうすれば、魔王を倒した後、世界を旅し、お前を楽しませてくれるものを探すがいい!」
つまり、楽しむのは魔王を倒した後にしろ、ということか・・・
「もちろん、そのつもりです」
にっこりと、王の提案を飲む
それに王はとても楽しそうな笑顔を私に向ける
「よし!お前は先に訓練を受けておけ!!」
「わかりました」
王に返事を返し、今だに固まっているクラスメイト達に振り返り
「じゃあ、先に行ってるよ」
その言葉にやっと生徒たちが一斉に我に返った
そして、唖然としながらも私を見送った
一年後・・・
私はクラスメイト達とあれ以来会っていない
理由は簡単
私は一人で鍛錬したいと王に頼み込み、誰も来ないところでやっているからということと、ご飯を食べる時間帯も、クラスメイト達とは違うからだ
そして、今日は久し振りにクラスメイト達に会い、お互いの成果を見せ合うのだ
その集合場所の騎士の鍛錬所へ行く
鍛錬所はでかく、様々な鍛錬のためのものがあり、設備が整っている
その鍛錬所の扉を開き、目に入ったクラスメイト達の所へ行く
「久し振り」
私は第一声にその言葉を発した
クラスメイト達は振り返り、一度、驚きの表情になった後、仲が良かった人たちは、安堵の表情を見せてくる、何故か女子は顔が少し赤いような気がするけど
怒ってるのかな?
・・・そんなに心配させたのかな
なんか悪い気がしてくる
仲が良かった、桐野春香が一番に声をかけてくる
「うん、久し振り。
随分雰囲気変わったね。
でも、よかったよ。元気そうで。
みんな心配してたんだよ?」
その言葉に周りを見渡すと、みんなは、春香の言葉に賛同するように頭を縦に激しく振っていた
あはは・・・心配掛けちゃってたんだ
「ごめん、私は全然大丈夫
今までなかなか会えなくてごめんね?」
大丈夫だというように、優しく微笑み、そしてその微笑みを少し歪めて告げる
それに少し驚いたような顔してから、さっきより赤い顔で
「・・・まったくだよ
一度くらい顔見せてくれたっていいじゃん。なのに、一年も見せないとかあり得ないよ!」
と叱られてしまった
まあそうだよね
一ヶ月とかならまだしも、一年だもんね
「うん。だから、ごめんってば
これからは一緒に鍛錬するから許してよ。ね?」
笑ながらも、なんとか怒りを沈めてもらう
微笑みながらも、怪我がないか確かめるために頬に手をおいて顔に傷がないか確かめる
また更に顔が赤くなったような気がするが、まあ気にしなくていいや
「さ、成果を見せ合おう?」
その言葉に皆は、何故か赤い顔のままにそれぞれ
「・・・ふん、驚かせてあげる!」
「お、俺たちみんなも頑張ってたんだからな」
「ま、ま負けねぇぞ!」
「ぜっ、絶対勝つんだから!」
と、思い思いに告げてくる。
みんな言葉がどもっているのが少し気になるけど・・・
でも、そのプライド全て、へし折ってあげる。
「いや、絶対私が勝つよ」
自信満々にその言葉を告げ、訓練所の闘技台の上に上がる
みんなは赤い顔で息を飲んでいた
そして、少し経ってからハッとなったように我に返る
その後ろに最初の相手、火道暁が上がってくる
他のクラスメイト達は、客席にて闘いを見ている
さあ、どれだけ私を熱くさせてくれるの?
「「お願いします」」
二人同時に告げ、戦闘開始
まず、彼が接近してきた
そして剣を合わせる
彼はそのまま体重をも掛けてくる
だが・・・
「弱い!!」
ブンッっと剣を振り、彼を後方へ追い返す
力が強すぎたのか、三メートルほど彼は後退した
その光景に、クラスメイト達は驚愕を露わにした
だからいったのに、私が勝つと
ニィッとまたいつかの怪しい笑みを浮かべる
その笑みに、クラスメイト達は顔を険しくした
・・・顔が赤い人も多々いるけど
人間の危機感知能力かなんかかな?
さぁて・・・
「次は私の番!!」
トンっと床を蹴り、一気に距離を詰める
「!!」
それにまったく反応が出来なかった暁は、剣で私の攻撃を防ごうとする
で〜も、そんなのじゃ防ぎ切れないよ?
「・・・む〜だ!」
ブンッと剣を振り下ろす
バキンッと暁の剣が折れる
そして、暁に私の剣が当たりそうなところで、自分の剣を制止させる
「私の勝ちだね」
ニッと笑って彼から離れる
「おいおい、最後のすっげぇ危ねぇだろ〜が!当たってたらど〜すんだよ、バカ!」
下から騎士団長が文句を言ってきたので
「舐めてるんですか?
あんなの簡単に出来ますよ
失敗なんてするわけないじゃないですか」
そう言い捨て、驚愕を浮かべている団長の横を通り過ぎる
と、また別の所から声が上がる
「こら!リオン!!
出来るんだとしてもやっちゃダメだよ!い〜い!?これからはあんなのダメだからね!!」
・・・彼女は、リーフェニア・レファ・ライアート
そう、彼女こそ、この国の第一王女
そして・・・私の・・・
「・・・わかりました
姫様が言うのならば、そうします」
すると、私の返答のどこが気に入らなかったのか、ムッとしながら
「姫様じゃなくて、リア、って呼んでって言ったでしょ!!」
・・・ああ、そこか
まったく、前から言っているのに
「ですから、私は・・・」
「私の騎士だからって言うんでしょ、でも、リアって呼んでほしいの、リオンにリアって」
言葉を被せて彼女は尚も迫ってくる
ち、近い!!
顔に熱が集まるのを感じる
きっと今私は顔が赤い
「〜〜〜!!だから、ダメですって言ってるでしょう!!
それでは、失礼します!!」
私は耐え切れず、脱兎のごとく彼女から逃げ出す
彼女を名前で呼べば、私は・・・
私は抑えが効かなくなって、認めてしまう
私が・・・リアを、好きだということを
「あーあ・・・また逃げられた」
リオンが逃げた後、リアはショボーンと肩を落としていた
そこに、クラスの中でも結構チャラい男が声をかけた
「あー・・・まあ仕方ねぇよ
あいつ、頑固なとこあるし、元気だしなよ、リアちゃん
それに、あんなやつより俺の方が色々楽しめるよ?」
「!あんたねぇ!!」
その男の言葉に女子のほとんどが反応した
でも、彼女たちが男に詰め寄る前に低い怒気を通り越して殺気を込めた声に固まった
「ふざけないでください。
貴方如きが私の名を愛称で呼ぶんじゃありません。私はリオンだから許したのです。貴方のような雑魚に呼ばれる筋合いはありません。
それに、リオンに惨敗しておいて私に気安く話しかけるなど、たとえ勇者であろうとも許せる行為ではありませんわ。しかも、あろうことかリオンを貶すなど・・・愚かな人」
その言葉に一瞬惚けていたが、理解して行くなり、男は顔を真っ赤にさせ、手を振り上げた
「うっせんだよ!!クソ女!!」
そして、手を振り降ろそうとした
が、その手が降りることはなかった
「おい、お前、姫様に手を出そうとしたんだ。死ぬ覚悟はあるだろうな。」
その声は、先気いなくなったものがそこにいた
鋭い殺気を漂わせながら
「ひっ!な、なんだよ!この女が悪りぃんだ。俺を貶し・・・!」
男が言い終わる前に、リオンが掴んでいた手を振り、投げ飛ばした
「お前、本当にバカだな。
姫様の言うことは最もだろうが、しかも、一国の姫を、庶民が口説くなど、本当に愚かな奴」
と、男に追い打ちをかけた
先ほどよりも顔が赤くなった男は、
「てめぇだってそうだろうが!
いいじゃねぇか!どうせその女ヤリマンなんだろ!さっき、お前を口説いてたじゃねぇか!」
その言葉に、一気に殺気が増した
それはもう、周りがへたり込むほどに、騎士の人たちさえも
「お前、リア姫を侮辱して生きて帰れると、思っているのか?・・・ああ、そのことさえも、考えてなど、いなかったのか。
本当に生きる価値のないゴミだな
ああそうだ、ゴミは排除しなくちゃな」
そう殺意を通り越して、感情さえ無くなった瞳を向けながら言い終わるとリオンは剣を抜いた
男も周りも声が出ない
否、声が出せない、リオンの殺気で
無言で男に近づこうと、リオンが足を踏み出すと、ぐいっと誰かに引っ張られた
「!誰・・・リア姫?」
引っ張ったのはリアだった
リアは声が出せないけれど、一生懸命止めようとした
その行動に、リオンはふんわりと笑い、殺気を瞬く間に収め、彼女を抱きしめた
「姫様、優しすぎるのでは?」
「い、いいえ。アレには公開処刑をさせてもらいます」
まだ私の殺気の影響か、姫様の声が吃る
心なしか顔が赤い
「そうですか」
リオンは、ただ彼女を愛しいと、腕に閉じ込めてしまいたいと、思ってつい彼女を抱きしめていた
その時、
「くっそおおぉぉ!!」
雄叫びとともに突っ込んでくるバカ
「はぁ・・・死よりも辛い永遠の苦痛を与えた方が良さそうだ」
そう口にし、指を鳴らした瞬間、彼は立ち止まり、蹲って、苦痛を訴え始めた
だが、そんな事を私たちが気にかけることはあるはずもなく
「・・・ねぇ、リオン」
「?なんですか?姫様?」
そしてまた、ぷーっと頬を膨らませて怒るリア
・・・そんなことしても可愛いだけなんだけど
「・・・また
さっきは呼んでくれたのに」
ああ、そのことか・・・
その姫様の様子に、可愛いなと思いクスクスと笑った後
「わかりましたよ。リア姫?
これでどうですか?」
そう呼ぶと彼女はバッと顔を上げて嬉しそうにはに噛んだ
うん、可愛すぎる
その私たちの様子に、クラスメイトたちが何かしらの不安を覚えたのか
「あの、姫様。リオンは女の子ですよ?」
その言葉に私たちは二人して顔を見合わせる
「そんなのもう伝えてあるよ?」
「そんなこと、もう知ってます」
と、ほぼ同時に答えた
?なんでそんなことを
疑問に思っている私をよそに、リアは爆弾を投下した
「リオンが男であれ、女であれ、どっちでも構いません。私はリオンだからこそ、好きなんだもの」
へ?
・・・私の思考はフリーズした
今、リア姫はなんと?
「〜〜〜!だから、その、返事聞かせてくれない?リオン」
姫が私を好き?
ほんとに本当に?
「・・・本当に、私が好きなんですか?」
その問いに彼女は一片の迷いもなく
「だから、今そう言ったじゃない」
顔を赤くして、ムッとしながらも答える彼女はとても可愛らしい
ああもう、可愛いなぁ、リアは
そのあとに私がこの行動に出てしまうのは当たり前だった
すっと手を彼女の頬に当て、そのまま顎に手をやり、上を向かせる
それで何をするのか理解したらしく自然な動作で彼女は瞳を閉じる
それにドキッとしながらも、自らの唇を近づける
そして、あと数センチで触れる、というとこで
「・・・ちょっと、私たちが見てるんだからやめなさいよ。バカ」
と、クラスメイト、春香が口にする
春香の顔が真っ赤になっていて、その他の人たちもみんな真っ赤な茹でたこのようになっている
「いいだろ。今の良いムードだったしさ。
てか、今すぐ押し倒すの我慢してキスだけしようとした私はえらいと思うんだけど・・・押し倒した方が良かった?」
そう聞くと、私以外、姫様までもが顔を真っ赤にした
「サラッとそんなことを口にしないの!
バカ!!」
ガッと何故か姫様に殴られた
・・・私の足、鍛えてるから痛いと思うけどなぁ
あ、やっぱり少し涙目になった
何故・・・好きなら普通だと思うんだけどなぁ?
「いいじゃないですか
今まですっごく我慢してたんですよ?こんなとこで、あんな可愛いこと言う姫様が悪いんですよ」
そう言うと姫様を顔を更にまた赤くする
・・・どこまで赤くなるんだ?
大丈夫かな?
「だっ・・・だって
リオン、カッコよ過ぎだし、時折可愛いくなるし、優しいし、私のこと一番に考えてくれるし
・・・これで好きにならない方がおかしいでしょ?
しかも、かなりの美形で、強い」
ん〜・・・姫様の言う通りかもしれないなぁ
完璧超人・・・いや、違うか
えっとなんて言うんだっけ?
・・・ああそっか
こういうのを才色兼備って言うのか
まあ、そりゃ惚れるわな
向こうでは全然だったけど
まあ、今は幸せだからいいや