8.
安定の愚だ愚だ感満載。
感想、ありがとうございます。
絶賛梅雨の時期6月。
第二週の金曜日。
突然大雨が降ってきて折り畳み傘を忘れた身としてはイタイ状況に陥ったので少し大人しく図書室で雨が弱まるのをまった。
しかし今や時刻は午後6時。
運動部でもチラチラと帰り始める時間帯になってもいまだに雨は弱まらず、むしろ強くなってきていた。
雨に濡れると体力を奪われる気がして、あまりいい気分にはなれない。
SHRから2時間ほど経過していて、ついさっきそろそろ図書館閉めるからと司書の先生に注意を食らった。
でも、タクシーを呼ぶような距離にマンションがある訳ではない。
マンションから学校まで徒歩で20分ほど。
毎日の健康のために歩けない距離では決してない。
ましてや中学校の時は毎日往復で8キロ歩いた身としては半分もない距離に金を使うのはどうにも抵抗があった。
仕方ない、走ってできるだけ早く家に帰ってシャワー浴びよう。
いざ図書室を出ると深枝から電話があった。
「もしもし、椎名です」
『あ、もしもし今大丈夫か?』
「はい、今校内にいますのでそんなに長い間通話できませんが」
『え、いやおまえ部活とかしてたけ?』
確かに疑問もたれるよな。
「まぁ、傘忘れると言う失態をおかしました」
『んじゃ、今から迎え行こうか?丁度駅前の本屋に今いるから、傘買ってく』
「態々そのような手間をおかけするのは私も少々心苦しいので結構です」
『ってか、お前の敬語違和感ねぇな。そっちの方が似合ってるよ』
一応、作家だからキャラ考えんのに言葉遣い覚えとかないとキャラのレパートリー増やせないんだよ。
「校内では基本このような口調ではないと違和感が生じますので、このようにしています」
『もうちょっと崩してもいいんじゃねぇの?』
いや、別に敬語キャラの方が楽とか、普通にしゃべってる方がボロでやすいって言うか、何とゆうかで自然体でいるのは―――
『はぁ、何はともあれお前はどうせ、このどしゃ降りのなか走って帰ろうとでもしてんだろ?』
「何、当たり前のことを」
べ、別に敬語しか使えない奴とか喧嘩売られた気がしたとかないから、ホント。
『こっちはお前が雨に打たれるって聞いちまったんだ、明日風邪でも引かれたら気分が悪いから、迎えに行かせろ』
「…傘代勿体ないでしょう」
『そん位俺が持つ。別に俺はリムジンを呼んでも良いんだぜ?』
「はぁ、卑怯ですね」
『はは、俺がちょこっと罵倒される程度でお前が風邪ひかないんだったら安いもんだろうが』
「……一遍死ねラノベ主人公」
そう言って通話を切った。
一応、メールで“昇降口で待っている”と送っておく。
「ふぅ」
なんだアイツ、あそこまでくさい台詞放つ奴いるか!?
ホント、アイツ優しいな……。
電話中背中を預けていた壁を伝って思わず座りこんでしまった。
「そう言えば、急に電話駆けてきたがどうしたんだ?」
深枝が迎えに来てふと気になったことを傘をもらいつつ聞いて見た。
「…なんつうか、そのなんだ。明日一緒に買い物行かね?」
「別にいいよ、そん位。臨海学校の関係でそろそろ水着買わないといけなかったし」
正直、一応着るだけ着て上からジャージ着て端っこで本を読んでいる予定だ。
6月だし、夏アニの原作に目を通しておかなければならない。
「……おま、み、水着着るの!?」
「うちの学校の臨海学校は生徒同士の親睦を深めるだけのものだが、一年全員強制参加だから仕方ないだろう」
水泳の練習とかなくて本当に良かった。
一応、仮病で休んでも良いんだが授業の出席に関係してくる行事だから行かないと成績的に怪しくなり始める。
「水着はまさかビキニか!?」
「いや、特に指定は無いからなスク水あたりでいいだろう。どうせ浜で本読んでるだけだし。本当に緩い感じの一泊二日だからな、一日雨でつぶれればいいのに」
「…こんな美少女の水着姿を見れるんだったら俺もそっちの高校行っとけばよかった」
「黙れボンボン」
金持ちめ、どんで余裕なんだ!転校は余裕ですか畜生め。
と言うか、こいつがこっちの方に住んでいるって言うのはなんとなく聞いてたけど、実際バッタリ会うとは思わなかったな。
そして、本気で残念がる様子がこいつの変態性を醸し出している。
格好いいんだが、どうも思春期らしい。
「そう言えばお前夕食まだか?」
「そうだけど?」
「お礼と言っては何だけど、夕食食ってくか?」
「どこでだ?ファミレスだったら駅前だから結構濡れるぞ」
「いや、俺の家だけど?」
「……は?」
深枝が不意を突かれたような変な声を出す。
いや、うちだったらシャワーとか浴びれるし、服も俺の男時代の貸せると思ったんだけど。
「嫌とか用事があるなら、別にいいんだが」
「行きます!どんな用事があろうと投げ出していきます!」
「お、おう」
すごい勢いで迫ってきたので思わず2歩下がってしまった。
そのまま、たわいない話をして早数分。
自宅マンションの目の前まで来た。
「……まさか、お前ここ住んでんの?」
「おう」
「今更ながら家族の人に迷惑なんじゃないか?」
「一人暮らしなんだが。と言うかお前、知ってるだろ俺の実家3つ県離れてんの。殴り込みにかかってきただろうが」
急に汗をだらだらと流し始める深枝。
「汗、すごいぞ?」
「雨だ、これは」
「そんなに風強くなかったかr「汗だ!」」
何を必死になっているのだろうか。
確かに結構濡れたけど。
主にトラックに水巻き上げられて。
「早く中に入ろう、雨に打たれ続ける中二精神は持っていない」
「あ、ああ」
マンションの中に入って一階のフロアのエレベーターの前でカギと指紋認証。
毎度のことながらめんどくさい。
エレベーターが下りてきたので、
「乗れ」
「……」
無言で乗ってくる。
……なんか怖い。
で、9階の部屋へ。
また、鍵を使って開けて部屋に入る。
ローファーが水浸しになったので靴と、靴下脱いで家に上がる。
そのまま、床に水が垂れないように気を使いながら風呂場横の脱所からタオルを2枚ほど持って、玄関へ。
一枚で自分の髪を拭く。
相変わらず、何かを考えている表情だ。
「ほれ、拭いてシャワー浴びておけ」
「……」
無言。
……しかたない。
ちょっと裏声を意識しつつ、アイツの耳元に顔を近づけて、
「深枝のえっち」
既に落ちたヒロインがラッキースケベに会った主人公に言いそうなセリフを言う。
「お、おふ!?べべべべべべっべっ別にやましいことは0.02mたりとも考えておりません!」
「その0.02mってなんかエロいぞまるでコンd「もうちょっとオブラートに包んでくれ!」ん、悪い思わず某曲の歌詞が出て来てな。で、結局エロいことでも考えてたのか?」
「……」
「肯定とみなす。取りあえずさっさとシャワー浴びてこい」
お湯を沸かすのにはちょっと時間がかかるからな。
「わかった」
「湯船に溜まってるのは昨日の奴だから確実に冷たいから入ろうなんてアブノーマルなこと考えるのやめておけよ?」
「する訳ないだろうが!」
取りあえず、風呂場まで案内。
「石鹸とか自由に使ってくれ、衣類は適当に乾燥機に突っ込んでおいてくれ、着替え持ってくるから」
「わ、分かった」
そう言って、脱衣所から出て俺も着替えるために自室へ向かった。
……このブラの張り付く感じがどうも気持ち悪い。
ベストと制服の上着を着てたからまぁ、みられることはなかっただろう。
…何考えてんだろう、さっさと着替えよう。
深枝の次にシャワーを浴び、夕食の支度を流れるように行っていき、盛り付け、リビングのテーブルに並べて行く。
作っている際に後ろから何か視線を感じたので、
「どうした?テレビでも見ないのか」
と聞いたら見ているのが楽しいと答えられた。
「こんなもんしか作れないけど、良かったらどうぞ」
「いや、お前ハイスペック過ぎんだろ料理できるとか」
「一人暮らしの条件で親に出された課題の一つだし、少しくらいはできないとだから。あ、足りなかったら追加で作るからな」
育ちざかりの男子高校生は結構食べるのでそれなりに量は作ったつもりだが、足りなかったらチャーハンでも作ろう。
ちなみにメニューは簡単なカルボナーラとサラダ。
「道理で様になってる訳だ。エプロン姿も似合うし」
「どうせ俺はエプロン似合う田舎のお袋みたいなもんだよ」
ちなみにうちのお袋は何か、どこかレストランのシェフを連想させる。
「いや、新妻の方で。って俺何言ってんだろ」
「お決まりの“ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?”とか言いそうな人に見えると?」
「その台詞の部分の言い方がうますぎてドキッとしたじゃねえか!」
「今度はポーズでも入れようか?」
「やめてくれ、俺のライフはもうゼロだ」
深枝の反応が面白いのでついつい調子に乗ってしまう。
そんなこんなで食事を食べ、雨もだいぶ止んできたので深枝は迎えを呼んで帰った。
明日の10時ぐらいに迎えに来ると言うセリフを残して。
深い意味がある訳ではなく、今借りている服を着ているので洗って返すためだそうだ。
決して、深い意味がある訳がない。
*深枝の心情
「え、あれ無防備すぎるよな、俺男として見られてないとか?ってか一人暮らしとか俺理性保つのか?料理旨いし、気さくに行動するし、運動神経悪い訳でもなく、それでいて勉強もできる……本人無自覚だけど、美少女だし…」
何と言うか、深枝君は思春期です。健全な男子校生過ぎるので無防備な女子にやられそうになります。
取りあえず18なシーンは書くつもりなし。
砂糖吐きそうな甘い空間は書くつもりです。
でも、深枝ルートに行くかはまだ未定。