7.
何が、ごっちゃになった。
現在、俺は大変な危機に直面している。
修正した作品を編集部まで送りに郵便局まで行き、その帰り道の曲がり角で不良とぶつかった。
ようやく修正が終わり、キャラのラフもいい感じに描いてもらって非常にテンションが高い。それがいけなかった。前をしっかり見ていなかった。
不良の服はコーヒーでいい感じにグラデーションがかかっている。
これで喧嘩にでもカツアゲされたら女と言う立場を有効活用して、警察に着きそう。まぁ、一発でも殴られなきゃ同行できずにこっちが悪いままなんだけどな。
と言うのは見知らぬ奴への対応。
親友への対応はもちろんからかう。
まず一言。
「あ、あのすみません」
「い、いや俺の方も不注意だったし」
一見普通の目つきがやや悪いだけの男子高校生にしか見えないこいつは関東トップチームの元総長、南条深枝。
一応、悪友で俺がオタクの世界へ引きずり込んだ一人だ。
「あ、あのクリーニング代を」
「いや、いいよ。俺の不注意でもあるし」
「で、ですが」
オドオドとした態度で食い下がると、何を思ったのか、
「あー、そんなことより今度、ご一緒に食事でm―――ぶはっ!?」
片膝ついて両手で俺の手を包んできやがったので顔面に一発蹴りをかましておいた。
今日はスカートではない。
特に大した用事がない限り基本ジャージだ。
よって、動く分には全く問題ない。
まぁ、鞄がちょっと邪魔だけど。
よし、演技終了。
「ふぅ、相変わらずその女癖治んねえのかヘタレ」
「……ゑ?」
「あー、俺だ。椎名だ」
「……は?」
「一遍蹴りかましてやろうか、深枝」
そう言うと奴はポカンとした表情で、俺を見た。
「現実は小説より奇なりってやつか」
「おい、冷静だな。そこは普通ありえんだろ気持ちわるっ!とか言う所だろうが」
不良との遭遇から3時間。
いったんちょっと整理するから2時間後また、と言って別れ、その後一応俺も着替え指定された店へ来た。
「いや、良く思い返せばお前はなんら正確変わってないのでそれでいいかなと思った」
「……これが、イケメンの力と言う奴か」
こいつ、元不良で眼つきも悪いものの普通に顔は整っており普通にかっこ良いと思う。
軽い憧れ的なもの。
恋愛感情はまずない。
俺の嫁は常に一個下に存在するからな。
歳が一個下?
いいえ、次元です。
「まっさか、俺を更生させた奴がよもや女になっているとは驚きだ。美少女だし」
「お世辞どうも」
「……」
「どうした、呆れた鈍感難聴系主人公を見るような目は」
「何故、そこまでわかっているのに!?」
盛大な某何でも屋のメガネも驚きのツッコミだ。
もういっそ、どんだけ~とでも言っといてくれ。
「嗚呼、そうだ。俺作家になった」
「web?URL教えろ」
「いや、書籍。FSの優秀賞取った」
「……サインください。家宝にするんで」
「お前が俺の本買ったらサインやるよ」
「ん、楽しみにしてるぜ」
「ありがとよ」
そう言ってコーヒーを啜る。
郵便局に行ったのが午前中で今がちょうど御昼どき。
朝、朝食取るのが遅かったので昼食を取る気に慣れなかった。
深枝は思い切り食べているが。
「そうそう、お前スカートとか穿くんだな」
「なんとなく。女といたらスカートのイメージ強いから一応な、説得力上がりそうな気がしたし」
今の現在の俺の服装と言えば、落ち着いた寒色を使った服装だ。
もちろんスカートはロング。
短くすると歩き方を意識しないと下着が見えるから却下と言うことにしておいた。
髪は適当に三つ編みにして、前の胸元に流している。
「中身は凶暴なのに外見はいたって普通、でもないけど女子だからたちが悪いな」
普通でもない?
一応、普通の女子並に見えるように気は使ったんだがな。
「なんかお前、変な所で抜けてるよな」
「よく言われる」
「褒めてねぇからな?」
「マジか!?」
「後、その喋り方違和感しかねぇ」
「俺っ娘と言う認識で頼む」
“こんな清楚系にしか見えない俺っ娘がいてたまるか!”と小声でつぶやかれた。 お前、さっき顔面蹴った時、打ち所が悪かったのか?
「あ~、そろそろ補習だ。んじゃまた今度な」
そう言って奴はナチュラルに伝票を取り、会計へ向かう。
「おい、さすがに自分のコーヒー代くらい出す」
「気にすんな、俺これでも御曹司だぜ?」
「分かったよ、今度勉強でも教えてやる」
「助かる」
そう言って、今度こそ奴は席を立った。
ちらりと会計に向かった深枝を見れば両手でガッツポーズをしている。
……やっぱ、頭逝ったのか?
残りのコーヒーを啜りながら、そういやアイツとあったの路地裏だったな、とどうでも良いことを思い出す。
3人くらい取り巻き引き連れて俺と一対一で戦いに来たと言われるが俺は初回限定盤のブルーレイボックスを買いに行く途中でこんな邪魔をされてたまるか、と思い喧嘩勃発。
なんとか勝ち、いざ行こうとしたら
『お前はなんでそんなに強いんだ?』
『守るべきもの(二次嫁)が待っているから』
と、言う会話になり、そこで辺な誤解が生じ、なんやかんやで奴が族を解散させるまでの期間を手伝わされたり、それが比較的にこっちの世界へ入りやすいカッコいい感じのアニソンから布教を始め、次第にアニメなどのサブカルチャーに抵抗感をなくし、半年たつ頃には立派なオタクへ成長させた。
それまでにアイツの親父との和解とか、チームの参謀や幹部との対立とか色々あったがいい思い出だ。
なお、アイツは成績の悪い馬鹿なのに、坊ちゃん嬢ちゃんの通うハイレベルの学校に通っているからなのか補習常連だ。
一応、勉強はそれなりの範囲を先に予習しているので有名進学校にもついていけるレベルで、ちょくちょく勉強を教えた。
懐かしい。
あれ、これもちょっと乙女ゲーのヒーロー的なキャラにピッタリでは?
と思い、気が付けば鞄からメモ帳と筆記用具が手にあった。
主人公、基本人をからかうのが好きです。
でも、自分がからかわれるのは慣れていない模様。
深枝くんについては、ね?
色々な場面で助けられた親友が急に女体化で、しかも無自覚キャラと来た。
彼の取った二時間の間は彼がテンション上がりすぎてそれをどうにか抑えるための二時間でしいた。
さて、そろそろちゃんと物語進めないと。