6.
主人公が若干下衆です。
高校入学からおよそ1ヶ月。
雨もだんだんと多く降るようになってきた5月。
今日も休み時間カロリーメイトで食事を済ませ、落ち着いて本を読むために図書室へ。
一ヶ月も図書室に入り浸ると、どうも真面目に勉強をしている人かひたすら本を読んでいる人しかいなく、図書委員もカウンターでマンガを読みふけるなどの図書室内の状況が読めてくる。
つまり、基本人数が少ない。
さすが私立と言うだけあって本のラインナップは豊富だ。
そこで基本的に本を読むか、作品の修正を行っている。
やっぱり、新人によくあることなのか何か箇所もの指摘を受ける。
その数42か所。
文法が怪しいだとか、キャラが甘い。誤字を使っているなどの多くの指摘を受けた。
正直泣きそうになった。
それでも、書かなければならない。
イラストレーターさんと話着いたらしいし。
キャラ原案書いてもらっちゃったし。
自分のイメージ通りでビビったけど嬉しいから執筆スピードも上がる。
書き直すのに利用するのは手軽に持ち運べる小さいサイズのノートパソコン。
難点と言えば文字とキーボードが小さいことだろうか。
もうすぐ予鈴がなるな……。
席を立ちあがってパソコンを手提げにしまい、教室へ向かった。
SHRが終わり、喫茶店にでもよって続きを書こうと言う時にクラスメートの一人が教卓の前でこういった。
「親睦会かねてみんなでどっかいかねー?」
それに乗るように“行く!”と言う声もあれば“部活だ~”とわめいて残念がる奴もいる。
そう言えば、俺クラスメートと全然会話してないな。
まぁ、体育とかは女の先生に相手してもらってるから特に会話する必要性がなかった。
取りあえず、スルーして喫茶店で美味しい珈琲のんで落ち着きながら書こう。
「あれ、椎名さん行かないの?」
教室を出る直前男子に声をかけられる。
「はい、用事があるので」
「あ、うん。ごめんね」
若干変にどもりながら爽やかに笑うのは、ただでさえ顔面偏差値の高いこのクラスのメインともいえる男子、良奈雅人。
一年にしてサッカー部で次期エースと名高い男だ。
イケメン爆発しろ。
「お気になさらず」
特に交友関係がある訳でもないのに、そう言うところ行っても気まずいだけだ。 そもそもこうゆう時の相場ってカラオケだし、そうしたら基本ボカロかアニソンしか歌わないので退かれるから遠慮しておく。
仕事の締め切りまでまだ時間あるから今度ヒトカラに行こう。
教室から出る際にちらりと教室に視線を向ければこっちを睨んでくる女子数名。
多分イケメンに好意を寄せ捲ってるやつらだろう。
その内絡まれると思うけど、その時にどうにか対処しよう。
翌日放課後。
「あんた良奈君の誘いを断るとかどういう神経してる訳?」
「放課後に人気のない所にあなたこそどういう神経してるんですか?」
放課後の体育館裏。
女子数名に囲まれ、明らかに不機嫌な態度で絡まれる。
はぁ、面倒だ。
「うっせぇよブス!」
「重々自覚しています」
はっ、ブスなんて何を当たり前のことを。
覆面作家だから顔さらす必要もないので仕事に影響が起きる訳ではない。
ブスでも取りあえず独身のまま死ぬ予定なのでどうってことない。
化粧を塗りたくったケバケバしいギャルみたいなお前より劣ってるよ。
「あぁー!もうイラつく!」
「あんた、5:1よ?自分が不利だってわかってる?」
こちとら喧嘩慣れてるしてるの分かってる?
小柄になったぶん、小回りもきくから十分お前らは倒せる。
ちゃんとアニソン聞きながら毎日ジョギングしてるし、たまに兄貴に相手頼んでるからそんなになまってる訳ではないはずだ。
「なに、ビビっちゃって声も出ない訳?」
訳?ってこと言葉そんなに好きなのか?
「なんとか言えよっ!」
明らかに遅い動きの分かりやすいテレフォンパンチ。
あー、逆にあんたの手を痛めないように受ける方が難しいな。
一発殴られておけばその後、正当防衛なり先生に離して停学まで持ってくのは簡単だ。
証拠として録音機を胸ポケットに仕込んである。
ちょっと豪快に倒れる感じで倒れておく。この際にポケットに入れておいた録音機を壊さないように倒れるのも注意である。
「あははは、マジ受けるんですけど。今度良奈君の誘い断ったら本気であんたボコすかんね」
取り巻たちは帰ろうとしているので、ここいらで一つ見事な演技を見せてやろうじゃねえか。
砂埃を叩きながら、立ち上がりここで録音を切っておく。
「『お前、ホントサイテーな女だな』」
「え、あ、よ、良奈君!?」
特技その1。変声。
一度聞いた声なら大抵それに近い声を出すことは簡単だ。
さすがに少し声高めの人じゃないと今はきついけど。
「え、何、ビビッりました?」
「~~っ!!!このくそ女!」
うん、この展開話に取り込むものいいかもしれない。
リーダー格の女が絡んで生きよいよくこっちに来たのでちょっと腕をつかんで関節を決める。
一発食らえば事足りているので何度も殴られんのは癪だ。
「ちなみに私を呼び出してからの会話全部録音していたから」
抑え込んでいる片手以外の手を使い録音機を振って見せる。
「んなっ」
「本当にバカなんですか、あなたたちの脳内スイーツ(笑)ですか?」
うん、ちょっと目に涙をためて恥ずかしがるような悪役っぽい少女の顔、ちょっと新しい領域目覚めそう。
「さて、周り取り囲んじゃってるあなた方に問題です。私がさっきの会話を先生に聞かせたらどうなるでしょうね?」
「そんなもん奪えば問題ないでしょうが!」
そう言って近づいてくる取り巻きたち。
「ですってよ、先生?」
「そうらしいな、面倒くせぇ」
ひょっこ体育館裏に現れたのは家のクラスの副担任の安藤先生だ。
「んじゃ、テメェら特別指導な」
「んな、先生私たち何も…」
「さっきから話全部筒抜けだったんだが?」
そう言って安藤先生は通話中になっている携帯を見せる。
そして俺もポケットから携帯を出す。
そう、話は筒抜け。
取りあえず危機を感じたので従兄弟の先生に着信をかけておいた。
いやー、親戚いて助かった。
これはこれで負の連鎖起こしそうで面倒くさそうだけど。
女子たちはショックなのかその場で俯いた。
その後、生徒指導室に連れて行かれ事情を洗いざらい吐かせたところ、
「女の嫉妬って怖えぇ」
と顔をしかめながら話を聞いていた。
「嗚呼、お前ら間違っても椎名にちょっかい出さない方がいいぞ。こいつ不良との喧嘩慣れしてるから」
「失礼ですね。ちょっと全国レベルで有名な族いくつか潰しただけじゃねえか」
「―――その理由が、趣味の時間が減るからって言うのも大概だけどな」
一々絡まれていると時間限定のクエストが出来ないから期間中にゲームを楽しむために、ちょっと絡まないでね。
とお願いしに行っただけだ。
ちなみに安藤先生と俺との会話を聞いていくたびに顔を青くしていったギャルでした。
*生徒指導室を出た直度の主人公の思考。
あ、ギャル女子高生が好きなあの男のために素直になってお淑やかな大和撫子を目指してその過程でごっちゃごっちゃのトライアングル!で修羅場!
これは書ける!
ちなみに主人公、興味がないものについてはどうでもよさそうに扱います。
でも、自分のパーソナルスペースに完全に入られると笑顔で優しく対応します。
基本無自覚で鈍感のツンデレ。
兄へのあれはコミュニケーションの一種です。