4.
色々と展開があれですが…
入学式の日まではアニメを淡々と見続け、オンゲでネット友達と狩に行き、仕方なく制服(女子)を買いに行った。
前日の夜に兄貴が、
「明日仕事がすごく早いからちょっと愛しの妹の制服姿を見せておくれ」
とか言うので仕方なく着て見せた。
この生涯一片の悔いなしとか縁起でもないことを言うので、悪戯で
「お兄様、ご冗談でもそのようなことを仰るのなら、ねぇ?」
意味深な笑みを浮かべ仰向けで倒れている腹を取りあえず踏んでおいた。
ちっ、なんで体重が48しかないんだろ。
と言うか、この行為は変態に喜びしか与えなかったようで、
「どうせだったら、そのニーソで包まれた御足で顔を踏んでくれないかな!」
と興奮していた。
「しかもパンツは白のレース……ぶはっ!?」
スカートの中を覗かれたから鳩尾に全体重かけて蹴りを入れた。
さすがにやばいかな、と思ったが、妹の人工呼吸かな?ちらっ、とか自分で口に出しているので大丈夫だと思い部屋を後にした。
入学式当日。
兄貴は死ぬ気で仕事を片付けようとしたのだが、運悪く仕事のブッキング。
どうしても外せない、同じ親会社の会社同士の交流パーティーがあるらしく血の涙を流しそうなほど悔しがっていた。
……授業参観とかあっても絶対呼ばないようにしよう。
色んな意味で大変そうだし。
かくして、俺は私立見葛城高校へと入学することになった。
まぁ、突然変異と言うかなんというかで女になった俺をどうにか庇うために親父の姉の経営する私立高校に突如として進路変更となったのだが、個人的には入学できるだけでも非常にうれしい。
叔母も良く可愛がってくれるし。
……うちの親類は全員天然なのだろうか。
まぁ、入学式とも会って叔母(理事長)の話が続くが非常に眠い。
失礼だけど眠い。
アニメマラソンしてたら夜が明けたわけじゃないが、別の用事で目が覚めていた。
確かに春アニは注目すべき作品は沢山あるが……
簡潔に言おう。
―――入学式前夜、俺は発狂した。
家族と元不良数名しか入っていない携帯に着信がかかってきた。
『夜遅く申し訳ございません、FS文庫編集の高橋と申します―――』
突然有名なライトノベルを出版している会社からの連絡だった。
『久留生詩玄先生でよろしいでしょうか』
「は、はい」
『あなたの小説が――――』
FS文庫新人賞に投稿すること3回。
最優秀とはいかなくとも、優秀賞を受賞したことを告げられた。
それに伴う書籍化。
最初に出す部数。その他…etc。
それで今週末、明後日早速打ち合わせが入ることになった。
その日は当然寝ることが出来なくテンションが上がったまま、日の出を迎えた。
で、結果がこれである。
寝不足で目の下にはばっちりの隈。
黒縁メガネでそれを若干おさえているものの、全体的に覇気がないのは事実である。
元々貧血気味なので足取りはおぼつかない。
髪の艶もだいぶ失われている。
家に帰ったら速攻寝よう。
明日は土曜だが、その翌日の日曜日には打ち合わせが待っている。
後、親父に連絡を入れよう。
俺が作家目指した理由は親父に憧れてだし。
早く終わりますように。
入学式がようやく終わり退場したと思えば、各教室へ移動し担任の挨拶。
それから自己紹介。
来週の月曜日からの日程説明などが行われた。
俺?無難に適当に答えたよ。
よろしくお願いしません、とでも言ったら一瞬で注目の的だからな。
……取りあえず一言。
この教室の顔面偏差値の高さに全俺が泣いた。
あれ、男キャラが主人公兄しか出てない。