第4話 バナナはやっぱりおやつでしょ⁈(2)
勢いで始めた作品なのでキャラとか曖昧かもしれません。ご了承ください。
「いやー、流石千代池君。初っ端からキワドイところをついてくるね」
中田先輩が青のマーカーでキュッキュと音を鳴らしながらリコーダー、と書き込んでいく。
何がキワドイのかはあまり良く分からなかったが、周りがしきりに頷いているので俺もほうほう、と唸っておく。
すると、千代池先輩の発言でスイッチが入ったのか全員がありとあらゆる方向から矢継ぎ早に話だした。
「松茸」
「ちくわ!」
「じゃあ、シンプルにソーセージ」
「うまい棒を忘れるな!」
「ヤシノキ」
「筆」
と、アイデアがわんさかと溢れ出てくる。その発想の豊かさに驚いた俺だったが、何気なくそれを超高速で書いていく中田先輩も凄い。
俺は周囲の迫力に圧倒されながらも、書き込まれていく文字を眺めていた。
上から箇条書きで綴られる文字を見ていた俺だったが一つだけ気になった箇所が。俺は緊張しながらもおずおずと手をあげた。
「おや?新人君も何か思いついたのかい?」
そんな俺に近藤会長が反応する。そんな会長に合わせるように静まり返ったこの場で、俺はふと疑問に思ったことを尋ねた。
「この、バナナの代わりっていうのに基準はあるんですか?いや、なんとなく形をもとにしてるのかなぁって思うんですけど、【清き一票】とかよくわかんないのがあるんで」
俺の単純な疑問に端っこで呻いていた図書委員の先輩が、
「そんな基準があるわけねぇだろ、バカじゃねーのー」
と騒ぐ。
すると、どこから現れたのか先輩の内の一人が、
「お前は黙ってろ」
と呟きながら関節技をかけた。
ギョエっと漫画でしか見ないような声で呻いた先輩はしばらくした後、急に大人しくなった。
他に見ない喜劇を拝観した後、俺が椅子に座り直すと、会長が自身の顎を撫でながら俺を見ていた。
そしてそのまま首を捻ったかと思うと全員の視線を一様に受けながら答えた。
「そういえば、何が基準なんだろう?」
予想外の答えにへっ?と素っ頓狂な声を出す俺。どうやら他も同じだったらしい。俺の問いにまるでガリレオのように顔を抑えだした会員たち。
しかし、そんな会員たちをよそに服部が立ち上がったかと思うと、服部が俺の目を見据えながらゆっくり語りだした。
「バナナは男性のアレを連想させる隠語だ。つまりバナナの代わりというのは男性のアレを連想させれば何でもありとゆうことだ。ん〜。でも、そうすると曖昧だな…。まぁ、バナナをおやつだとも言えるしおやつじゃないとも言えるあれだ。基準は結局自分で連想出来るか、じゃないか?」
いつになく真剣な面持ちで真面目に語る服部に周囲から拍手の嵐が巻き起こる。実際、学級委員としてクラスに連絡する時以上に自信に満ちあふれている。気のせいかいつもより眼鏡が輝いて見えるし。
だが、そんな自信を砕くようで悪い気がするが俺は最もな質問をすることにした。
「でも、基準は自分で決めるって難しくないか?人によって違うだろうし」
俺の指摘に少しだけ眉を顰める服部。しかし、服部は突然ふっと不適に笑うとまた自信あり気な顔をしながら口を開いた。
「その基準を決めるのが俺たちなんだよ、多田」
もはや自信あり気を通り越してドヤ顔でそう告げてくる服部を見て少しイラっとしたのは俺だけだろうか。
周りをみると全員感動のあまり涙を滝のように流している。中田先輩に至ってはハンカチで鼻をかんでいた。
すると、会長が目尻の辺りを拭いながら立ち上がった。
「その通りだよ、服部君。僕たちの言いたいことを分かりやすくいってくれてありがとう。新人君も鋭い指摘をありがとう。君のおかげでこの下ネタの会も活発になりそうだ。どうだろう、まだ答えは出さなくていいから会員になることを検討してくれないか」
近藤会長の紳士的な態度に狼狽える俺。常にぼっちだった俺には荷が重すぎる。そんな俺が急に、ましてやこんな会に入ったら世間に笑われるだろう。
俺は頭を振りながら丁重にお断りすると、その場を立ち去るべく腰をあげた。
しかし、ちょっと待ったと綺麗に息の揃ったツッコミを打たれた俺はその場で立ち止まった。
「なら三日。三日だけ猶予をあげよう。それまでに考えを変えることがあればいつでも戻ってきたらいい。いつでも歓迎しよう。だからせめて三日。それだけでいい。考えてくれないか」
そう言って頭を下げる会長に少しだけ罪悪感を覚える。なんだかこっちが悪いことをしたみたいで尻のあたりがムズムズする。俺はわかりました、と頷きながらドアに手をかけるとそのまま部屋の外に出ていった。
シーンと静まり返る室内。
「やっぱり生意気だなあいつ」
その中で壁際に寝そべる男がポツリと呟く。しかし、その後に回転椅子のキーコという音が聞こえたかと思うと腕を組んだ男が薄笑いを浮かべながらこう言った。
「ナニ。本番の前は焦らすのが基本だからね。なぁ、諸君」
「そうですね、近藤睦月会長」
ニヤリと口角をあげながら笑うのは眼鏡をかけた男。
彼らはそのまま解散すると、そのままドアを開けて出て行った。