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下ネタの会  作者: 寺子屋 佐助
第二章 研修(下ネタインターンシップ)編
19/26

だ、イ、19(イク)~、イっちゃう~!?では研修参りましょう

今回は下ネタをこれでもかと詰め込んだお得パックです。

ただし量より質な人には物足りないかも。

そんな人は、まちがいさがしをするようにネタと言えそうなものがいくつあるか良く注意して読んでみましょう。

【金太の大冒険】という、半田先輩が唄った謎の歌を皮切りに、会員の方々が下ネタカラオケをはじめた。


「多田。いきなり全部は無理かもだけど、一つぐらいは覚えて帰っていけよ」

「いや、でも」


 服部がプロ並みの腕前でタンバリンを叩きながら、横でそう告げる。

 普段とは違い、真剣な顔をして、タンバリンをおしりで叩く服部に一瞬、ツッコミを入れたくなったが、持ち前のスルー能力を駆使してなんとか普通の返事をする。

 すると突然、マイクを持った会員の方達が、揃った動きで曲に振りを入れはじめた。腰に手を当て、そのままクイックイッと前後左右に揺すっている。クレヨン○んちゃんのぞうさんと言えば分かる人には分かるだろう。


「「オー・チンチン」」

「ふっ、懐かしいな。俺は公園の砂場に名前を書いて、みんなにナイアガラのしょんべん小僧って呼ばれてたっけ」


 タイトルと同じ歌詞を堂々と歌い上げる会員達。半田先輩はノスタルジックに子供の頃を思い出し、その当時のポーズを取りながらチャックをズラしている。

 慌てて他の会員が勢いよくチャックを閉めてあげると、どうやら大事な部分が巻き込まれたみたいで、先輩はくの字に身体を曲げながら身体全体で男にしか分からない痛みに耐えていた。

 そんな先輩は無視して、未だ腰を振り続ける会員の方達に耳を傾ける。それにしても息ピッタリだな~、とか思っていると、服部がタンバリンを一旦やめて、顔を寄せながら話しかけてきた。


「多田さ、会員の名前と顔、まだ把握してないだろ」

「あ~。うん、まだよくわかんない」


 ギクっと心臓が跳ねると同時に、よく分かったなと少し感心する。今イクって言った?、ともう回復した、逆となりでうるさい半田先輩の頭をカラオケの曲集の角っこでぶん殴りながらそう返答すると、服部が今いる会員達を全員指差して俺に告げた。


「いきなり、全員の名前は無理だろうけど、この下ネタの会のメインの構成員の名前くらいは知っとけ」


 カバンからノートとペンを取り出しながら真っ白なページにある名前を綴る服部。


「えっと、も、藻武一家?」

「そう、もぶ一家。いや、この場合一族かな。ま、なんと言ってもこの藻武家は代々続く会員達だからさ。半数は占めてると思うよ」

「は~?!!!」


 藻武正剛(もぶ せいごう)と記された家長らしき人物の下に家系図を書き加えていく服部に、僅かに嫌な予感がよぎる。

 案の定そこに描かれていたのは俺が今までに見たことのないものだった。



 ◇◇◇



「十四人も子供産んでんの、この人?!」

「お前、偉大なるレジェンドであるせいごうさんをこの人扱いとかなんて失礼な」


 そう言う服部のせいごうさんの名前を見つめる目はこの濁った会の中で無邪気な子供みたいに澄んでいて、何も悪いことは言えない。

 しかし、俺の沈黙をどう受け取ったのか、服部はその子供達の下に更に線を足していくと、説明を開始した。

「藻武正剛はこの下ネタの会を創立した際の初期メンバーでな。ネットやスマホがない時代に住んでいたにも関わらず、性技の大半を知り、実践出来ていたことから、歴代最高最強のテクニシャンと呼ばれている」


 せいぎ?正義がなんでテクニシャンになるんだ?人助けでもしたのか?とか考えていると、服部は少し興奮気味に拳をギュッと握りしめて続けた。


「特にすごいのは、パンツの上をなぞるだけで、それまで世間的には不感症だった女性の性感を開放することが出来たという話だ。もちろん、性交に関することな、多田」


 へぇー、パンツの下りが謎だけど、せいごうさんってそれまで世間に対して不干渉を貫いて静観していた女性を介抱することによって社会的に成功出来るようにした人なんだ。


「へぇー、じゃあせいごうさんってカウンセラーだったのか?」

「うん?あぁ、まぁそうとも言えるな」

「すげ~。この会にもまともな人間がいたんだな」


 ほんの少しだけ興味が湧いてきた俺に服部が何やら得意気な顔で胸を張る。それからしばらくせいごうさんの話が続いた。


 せいごうさんは偉いとか。

 せいごうさんはサイズが大きいです、とか。

 せいごうさんはパンツが大好きなんだとか。


 その後も、せいごうさんの豆知識を披露する服部だったが、隣で半田先輩が森山直太朗の【うんこ】をあまりの美声で熱唱していた影響で話があまり入ってこない。

 幸いなことに豆知識の部分は藻武ジュニア達、つまり彼の十四人の子供達の話だったらしく、俺にはあまり関係がないようなのでほっと胸をなでおろす。

 と、思っていたら服部が半田先輩の次にマイクを持った会員達を指差しながら俺に衝撃的事実を言い渡した。


「ちなみに、あそこで歌っている人達は藻武正剛さんの孫にあたる世代で、本家の子供はおパンッ三世とか、それ以外は俺達の間ではサードチルドレンとか言われている。真ん中に立って踊ってるのは藻武真治(もぶ しんじ)で沢尻と同じクラスだ。知らないか?」


 おパンッ三世?パンツにまた関係するのか?まぁ、確かに作者の名前もモンキー・パン○だけども、それは出来過ぎというかベタ過ぎというか、度を越し過ぎじゃないか?

 っていかん。また思考が根こそぎ吸われるところだった。一旦頭を冷静にする。

 それよりも問題は次の総称だ。サードチルドレンって社会現象にもなった某アニメの主人公達の名称じゃないか。名前もシンジだし、なんかもう偶然って言葉ではすまない気がする。

 と、そんな事を考えていたら、さっきまでゲームをしていたサトシ君が突然顔をあげて爆弾情報を投下した。


「シンジ君は同じクラスの亜矢ナミ(あや なみ)の事が好きだよ~」


 マイクを持ちながら「ヤラナイカ」と歌っていたシンジ君がヤラナイカ?と疑問系になって固まっている。

 いきなりの好きな人発言に周囲のほとんどがヒューヒュー!、とシンジ君をからかう中、半田先輩が、


「おいこら~!ヤラナイカに疑問符を付けるのは御法度だー」


 と、腕を組みながらなんか怒っていた。

 いや、そこはバラライカを勝手に替え歌していることに怒りを感じるべきで、じゃないと月島きらりが可哀想だ。

 俺は心の中でハロプロ万歳と、小さく手を上げながらバラライカに敬意を示していると、サトシ君とシンジ君が何やら言い争いになっていた。


「沢尻、それは言うなって言ってたじゃんか」

「えっ、でもシンジ君、カラオケに来る前に、頃合いを見ていつもとは違う自分をカミングアウトしろって」

「違~う!俺じゃなくてお前のだ!」


 状況が掴めそうにないので分かりやすく説明しよう。

 このカラオケに来る前、半田先輩にカラオケに来るように誘われたシンジ君は同じクラスにいるサトシ君にも声をかけたらしい。

 はじめは断っていたサトシ君だったが、ゲーム的なこともするからというシンジ君の口車に乗せられて、来ることになったのだとか。

 そして、普段ゲームの話しかしないサトシ君はまだ俺ほど他のメンバーと打ち解けていない、と危惧したシンジ君はこの会に現れる前にサトシ君に告げた。


「いつもと違う自分のことをカミングアウトしろ」


 と。ゲームのことしか考えていなかったサトシ君は、自分イコールシンジ君と解釈してカミングアウトし、現在に至る。


 未だ言い争いを続ける二人を止めようとしたが、半田先輩の、


「面白そうだからとめるな」


 という一言で収取がつかなくなってきている。

 脇では、高橋がナプキンで作った用紙と引き換えに、どちらが勝つのかと、賭け金を集めていた。

 ケンカが掴み合いに発展しそうになったまさにその時。


「じゃあそろそろ時間だし。最後にトリを務めて二次会に行こうか」


 千代池先輩がプッチンプリンのキャラメルくらいのほのかに甘い声で宣言しながらマイクを握った。

 先輩が歌い出した途端、カラオケルームは一気にコンサートホールへと様変わりした。

 ゆずの【いちご】という格好良さ的にも下ネタ的にも絶妙(服部の説明より)な曲をジャニーズのように爽やかな笑顔を振りまいて歌い上げながら、千代池先輩はコンサートホールに拍手の嵐を巻き起こした。

 出だしから最後まで本当マジイケメンで、高橋なんかはアイドルファンのように賭け金を献上していた。

 ちなみに賭け自体はサトシ君に入れていた俺の一人勝ちで今日のカラオケ代をカバー出来るくらい貯まったと言えば大体の目安になるだろう。


「じゃあ、次洋食店イっちゃおうか。二次会はおごるから皆おいで」


 やべー、まじイケメンだ!

 皆の心が一つになったところで俺たちは親鳥についていく雛のように一列になって次の会場である洋食店へ向かった。































「ゲッ、二万円」


 その頃ポツリと一人残された半田先輩は、諭吉が二人家出した、と悲しげに嘆いていた。

果たして元ネタが全部分かる人は何人いたのか?


モテ講座はまだか? by 高橋(たかはし) 道程(みちのり)

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