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下ネタの会  作者: 寺子屋 佐助
第二章 研修(下ネタインターンシップ)編
18/26

第して18(イヤ)~!ぜんたまきんと研修初日

今回パロディが多め。

 夜の下ネタの会から数日後。週も明け、俺がいつものように休み時間に図書室に通っていると、半田先輩が俺を見つけた瞬間に手招きしてきた。

 クイックイッ、と手を動かす先輩だったがその手の動かし方が変だ。

 まるでちょーだい、とおねだりするかのように片方の手のひらを見せて中指と薬指だけを痙攣させるように小刻みに動かしている。

 とりあえず意味不明だったのでシカトしていると、先輩が後輩の図書委員にカウンター席を交代するように促してこちらに移動してきた。

 なんだか面倒くさそうだったので、入れ込んだ本棚の配置を利用して先輩が来るルートからはずれる。

 俺の座っていた机に来た先輩は案の定、俺の姿を見失ったのか、辺りをキョロキョロと見渡していた。


「多田のやつ。逃げやがって……。おや?こんな所に読みかけの本が」

「!!!しまっ」


 ヤバイ。先輩から逃走するのに夢中になっていた俺は、先ほどまで読んでいた小説を机に置きっ放しにしていたことに気がついてしまった。

 思わず声が出そうになって、伸ばしかけていた手で口を覆う。

 その間に、先輩は何か妙案を思いついたのかニヤリと黒い笑みを浮かべてその読みかけの本を取ると、別の本棚から本を抜き取って交換した。


「ふん、多田はこの本でぜんたまきんの知識を学べばいいんだ」


【エジソンの偉人伝】が【まんがで分かる乳酸菌の秘密】になっていることに気づいた俺は、カルピスを下ネタの清涼水としか見ていない半田先輩の後頭部にかかと落としを決めたい気分になったが、ここで出ていったら相手の思うつぼなのでやめた。


「ほほぉ~。更にこんな所に本のもっこりが」


 しかし、俺が出てこないと分かった途端、調子に乗った半田先輩は休み時間内に読み切れない場合に借りる予定だった、積んでおいた本の山に手を出すと、そこから自分の貸し出しカードを取り出して先に自分の名前を記入していった。


「ぐぬぬ。くそぉー、借りたかった本が」


 五冊ぐらい積んでいた本の半数が先輩の手にとどまり、興味がないかあるいは読了済みの本の間には何かの悪口が書かれたメモを何枚も挟み込んでいる。

 挙げ句の果てには、奪い去った本の穴を埋めるためにギネスブック2010をさりげなく机の上に置いて胸糞が悪くなりそうなくらいのアホ顏でほくそ笑んでいた。

 イライラのボルテージがMAXまで到達した俺は、何か仕返しが出来ないかと辺りを見渡すと、ちょうど生活指導の先生が本を借りている姿を確認した。この状況を利用することにした俺は、常に持参している紙のしおりを制服の胸ポケットから取り出すと、小さな紙飛行機にして、先輩が本に集中してなおかつ周りを見ていない間に先輩のいる場所に放り投げる。

 どうやら紙飛行機に気づいたようで先輩がそれを手に取った。

 俺の攻撃だと気づいたのか、反撃に備えてキョロキョロと首を動かしながら、これ見よがしにメモを何枚も取り出して紙のボールを作り出している。どうやら俺にそのボールを投げるつもりのようだ。


「かかった!」


 だが、甘い。その間にくしゃくしゃに丸めておいたもう一つの栞を、勢いをつけてさっきの生活指導の先生の頭に投げつけると、ふさふさに揺らいでいた先生の髪、いやカツラが綺麗に飛んでいった。


「あっ……」


 周囲が一瞬凍りつく。しかし、紙のボールを作るのに夢中になっていた半田先輩は周りの温度が下がっていることに気がつかなかった。


「誰だ!!!図書室で紙のボールなんかを投げているやつは!!!」


 怒りに任せて先生が怒鳴り声をあげたその瞬間、俺は急いで先生の方に駆け寄って告げ口をした。


「先生。半田先輩が図書委員なのにあの机で紙のボールを作っています」

「何?犯人は半田か!?」

「へっ?」


 いつだったか俺がこの学校の図書室はルールがとてつもなく厳しい、と説明したのを覚えているだろうか?

 数十秒後、職務怠惰を行った罪深い先輩は生活指導の先生に連れられて何処かへ行ってしまった。


「誤解です、先生!!俺は無実なんです!!!多田にはめられたんです!!!」

「静かにしろ!言うことを聞けなければお前のボールをくしゃくしゃに丸めるぞ!」

「ひぇ~」


 こうして俺の私生活に蔓延る半田先輩という名の悪玉菌は先生という名の善玉菌によって成敗されたのだった。



 ◇◇◇



 放課後。授業を終えてさっさと帰ろうとしたその時。


「迎えにきたよ。多田君」

「えっ?千代池先輩?」


 普通なら俺の学年の教室に来るのはあり得ないあの千代池先輩が、ジャムを塗ったバナナのように甘いボイスで俺を呼んだ。

 いつもならサトシ君が迎えに来るのだが、代わりに先輩が直に会いに来るとは一体どういう風の吹き回しだろうか?

 流石に怪しいので、なんか裏がありそうだ、と勘繰りながらそろりと先輩に近づいていくと、千代池先輩はドアにもたれながら顎を軽く動かした。

 罠か?と疑うのはもう遅い。

 俺は背後から密かに歩み寄る高橋と服部に気づかずに両腕を掴まれてひょいと担がれてしまった。


「ちょっ、お前ら」


 必死の抵抗を試みるも、鍛えているのか、拘束は全くほどけない。その間に俺を担いだ二人は千代池先輩の後を追って何処かに歩きだした。


「放せ!放せ〜」


 仕方がないので声で反抗的な態度を示していると、情けからか高橋が声を落として話しかけてきた。


「すまん。半田先輩の命令でな。多田に恨みはないんだ」

「はぁ〜⁈なんでお前らが先輩の言うことを聞いてるんだよ!?」


 近藤先輩や千代池先輩の命令とかなら分かる。実際千代池先輩が迎えにきたことから、千代池先輩に命令されているのだと思っていた。

 だが、何故よりにもよってあの半田先輩なのだろうか?

 俺に対しての態度から分かるように、先輩は後輩に対してだけいびり散らす器の小さな男だ。

 そんな先輩に従うなどあり得ないと思っていたのだが、次の服部の言葉で全てが明らかになった。


「気持ちは分かる。でも、半田先輩のおごりでカラオケに行く代わりにお前を連れてこいって言われてさ。最初は断ったんだけどそこで千代池先輩のモテ講座が開かれるって聞いたら黙ってられなくてね。だから許せ、多田」

「服部、俺を売る気か」

「あぁそうだ」


 そんなぁ、と絶望に浸る。と、同時に、俺と千代池先輩のモテ講座なるものを天秤にかけると俺が負けるということにちょっぴりジェラシーを感じた俺は、モテるとかそういうことを気にしなさそうな高橋に目を向けると心の声を漏らした。


「高橋。お前なら半田先輩に会いたくない俺の気持ちが分かるだろ!」


 下ネタの会のメンバーは確かにふざけているが、魂の叫び声はいつも聞き届けてくれる。そう確信している俺は最後の希望の砦である高橋を信じていると、高橋は俺の心の泣き声を聞いたのか少しジーンとしながら俺に告げた。


「ふん。半田先輩の心も器も股の間のヤシの木も小さいのは承知だが、彼女いない歴=年齢の俺の気持ちの方がお前のよりも強いんだ。諦めろ!!!」


 と、言うことで俺は半田先輩主催のカラオケへ向かうことになった。

 高橋の件は、うん。そっとしておこう。



 ◇◇◇



 ♪自主規制~自主規制~全部~自主規制~♪


 カラオケに着いた俺は、既に店内にいた下ネタの会一同の皆様に囲まれて自作の下ネタラップを披露していた。

 現在カラオケに来ているのは帰宅部という部費が要らない素晴らしい部の部員と、生徒会などで忙しくないメンバー達だ。

 下校中にカラオケなんかに寄り道してはいけないはずなのだが、そこは校則の裏をかくプロ集団。全員きちんと替えの私服を持ってきていて、俺はというと、黄色の長袖に青い短パンを穿かされている。


「まぁこんな感じです」


 と、完奏すると、あちこちから野次やら罵声が飛び交ってきた。


「下手くそ」

「下手くそ」

「下(手)くそ!」


 0点。0点。0点。と、シンクロやフィギュアスケートと審査員のように得点板を表示する会員の皆さん。

 始めははいはい、と軽く流しながら心の中で、


「うるせー。音楽は五段階の二だからしょーがねーだろ」


 と、耐えていたのだが、最後の半田先輩がヘクソと意味が分からないことをほざいていたので、先輩の飲みかけのコーラに入っていたストローを抜いて、先輩が着ている無駄にオシャレな革ジャンにコーラを数滴垂らしておいた。

 これで後でベタベタになった革ジャンを洗濯するのに苦労することだろう。

 しかし、そんな茶番に満足が出来なかったのか、主催者である半田先輩を庇いたかったのか、審査に参加していない他の連中がしゃしゃりでてきて俺を挑発してきた。


「ちゃんとアソコついてんのか、オイ!見せてみろよ、ゴラ!」

「ついてるし今そんなの関係ないから」


 誰だか知らないが、くそー!後輩のくせに生意気だ!と言いながら反論が出来ずに困っている。はは、ざまみろとほくそ笑んでいると、俺はついてるぞ、と半田先輩が脇から登場してガサゴソと自分のベルトをいじり出した。

 やめろ。どさくさに紛れてパンツを脱がすな。

 現在部活にいる後藤先輩の代わりに他のメンバーが押さえつけているのを片目に、服部が俺を批判してくる。


「これは人様に見せれるものじゃない!!」


 当たり前だ。下ネタラップとか頭おかしいんじゃないか?むしろこの会の方が人様に見せられないわ。

 とか、言っていたら千代池先輩があからさまに半田先輩をもう見てられんとばかりに、上着をヒュッて投げてパサッとかぶせていた。

 確かに先輩のアレは人様に見せられるものじゃないな。てか、千代池先輩投げ方までイケメン。

 半田先輩含む他のメンバーが千代池先輩のフォームにうっとりと頬を染めていると、千代池先輩がいつもと少し違うチョコハバネロのようなボイスで俺に説教をした。


「あぁ、これはまたいつかフランツ先生に指導をお願いした方がいいと思うレベルだな」


 ちょっ先輩。もう勘弁してください。代わりにサトシ君を連れて行ってください。

 神の御言か、亭主の命か。なんかもうこのひしひしと伝わってくる先輩の怒りに恐れてサトシ君を差し出すと、サトシ君はゲーム機でぷよぷよをしながら何処かケロッとした様子で、


「師匠に会えるんですか?」


 と返していた。皆が千代池先輩にひれ伏しそうな勢いなのにサトシ君はぶれないな、と感心していると、また何処かから俺への野次が飛んできた。


「やーい、の○太!!」


 待て。お前はジャイアンか。まぁ、言われてみれば確かに、服装とかも似てるけど。そんなことを思いながら野次を探していると、見つける前に他の会員の方々が肩を組んで大合唱を始めた。


「みんなで守ろう著作権♪ハハ」


 それはまずい。マジでやめよう。とゆーか本当にまずい。これは俺のキャラじゃない。俺がいつの間にか馴染んでしまったこの状況に対して涙を流す中、半田先輩だけが元のキャラのまま告げた。


「多田は下ネタ以前に音楽的センスが欠片もないな。よし、ではまず下ネタソングの超絶有名なカリスマ代表作、【金太の大冒険】をいっちょ歌っておくか」

「「イェーイ!」」

「「フォー!!」」


 周囲が湧く。こうしてまた下ネタの会、俺にとっての研修の初日が始まった。

音楽も出版本もタイトルだけなら著作権の心配がないはずですが、駄目そうならすぐに取り下げます。なんか危なかったら言ってくださいね、運営様。(ばっくれるとはこのことです。絶対にマネをしないように)


ネタの内容の意味が分からなかったら是非とも感想欄にお願いしますね。


下ネタバンザイby 半田千景(はんだちかげ)

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