第16話 んっ、入った
皆様、お久しぶりです。
ほぼリハビリ状態で書いたので、内容がグダグダです。
まあ、さっき追加した章のエピローグみたいなものなので軽く流しちゃってください。
それでは十五歳以下の君は立ち去るように。
こら、悔しいからって去り際にコメディ要素ない、とか言わない。
「多田英雄君」
「……はい」
学校の階段の段数にしろ、一度借りた本にしろ、一度関わったものや疑問に思ったことは自分の納得がいくまで、またはきちんとした答えを出すまで追求するのが俺のスタイルだ。
そんな俺は今さっき自分で決断したことにすでに後悔しはじめていた。
「これより下ネタの会の正式な会員と認める儀式を開始する」
「はい」
俺の性格がこんな災いを引き起こしたのかと思うと、自分が恨めしく感じる。
あーなんであの日、本を返そうとか思ったのだろう。
下ネタの強化合宿という名のくだらない夜会に参加した俺は結局、場の空気に当てられてか、すでに関わってしまったが故の諦めからか、下ネタの会に正式な会員として入会することになった。
「いやぁ、こんな舞台に立ち会えるなんて光栄ですね。生きててよかった」
「まさか僕たちのクラスからまた一人会員が増えるとは…感服です」
シューベルトと服部が眼鏡の奥で煌めく涙を拭い、感慨深く微笑む。
いや、お前死んでるし、とか、ココ感服って言葉を使う状況じゃなくね、とか一つ一つツッコミ満載なセリフを吐く二人にさすがの俺も構う気が失せてしまう。
いつからツッコミ役に回ったのか定かではないが、儀式の途中だからと無理矢理自分を納得させた俺は近藤会長の手順に従って、ハレンチ撲滅協会というよくわからないグループのロゴの踏み絵、下ネタの会のテーマのCDと生徒手帳に貼り付ける会員シールの授与、下ネタの掟なるものを復唱すると、最後に会の活動年間予定表を貰ってその場をやり過ごした。
「これにて君を下ネタの会の正式な会員と認める」
近藤会長の締めくくりの挨拶に周囲が湧く。近所迷惑ではないか、と会長に尋ねたら、その為の音楽室なのだよ、と胸を張りながら言われた。
なんか不服だ。
と、まぁとりあえず無事に入会したことで一件落着かと思いきや、突然、ある意外なところから声があがった。
「僕も入会します~」
「えっ、サトシ君も?」
なんとあの、なんでもゲームを優先する、三度の飯よりゲーム、なサトシ君が自ら進んで立候補したのだ。
その様子に音楽室が、自分が応援する球団がホームランを打った時のような歓声に包まれる。
なんの気の変わりようか気になって懐疑の目を向けていると、サトシ君は彼の隣でゲーム機をいじっているモーツァルトを指差しながら頬を紅潮させた。
「すげ~よ。いや、俺のタイムより断然速いよ」
ソウルメイトを見つけた瞬間とでも言えばいいのだろうか。
いや。師匠!、といつになく高いテンションで目をキラキラと輝かせているから、単純にモーツァルトのプレイ能力に感銘を受けているのだろう。
と、いうことは置いておいて。
「うん。モーツァルトがすごいのは分かったけどなんでゲーム第一優先のサトシ君がこんな会に入ろうとしてるんだ?」
普通に考えてゲーム時間を充分に確保したいはずのサトシ君にとって、ほぼ連日開催されているこの会は負担だろうし、はっきり言って何のメリットもない。いつの間にかゲームの師匠となったモーツァルトに会うにしてもわざわざ会員として面会するよりかは自分で足を運んで会いにきたほうが何倍も得な気がする。
正直この中で一番馬が合うサトシ君が仲間になれば俺としては心強いが、彼には是非とも健全な日常を過ごしてもらいたいものだ。
それに似たことを指摘しながら尋ねると、サトシ君はモーツァルトから視線を俺に移して口を開いた。
「いや~。それはもう考えたんだけどさ~。師匠はこの会が開かれる時にしか現れないんだって」
「えぇ⁉︎」
なぜに?と途中でツッコミを入れたかったが、まだ理由があるらしく我慢する。
「正確には自由に活動出来る時が限られてるんだって。なんかね、ベートーベンがさぁ」
長くなりそうなので要約すると、この音楽室の肖像画達は普段、警備員の目を誤魔化しながら活動しているようで数ある音楽家の中の見張り役がベートーベンらしい。
なんでも視覚と聴覚を失った代わりに侵入者などの気配を感じ取る第六感みたいなのを開眼しているのだとか。
その際に一度、モーツァルトが遊ぶゲーム機から特殊な電波がベートーベンの能力を阻害したらしく、怒ったベートーベンは、
「くそっ!お前がいなけりゃ、俺が神童って呼ばれてたのに」
と、叫びながら自分の好きなお酒をモーツァルトの肖像画の額縁にかけて燃やそうとしたのだとか。
それ以来モーツァルトは自分を守るため、ずっと額縁の中で暮らしていたのだが、ある時、月に何度か学校の警備が甘くなってなおかつなぜかベートーベンが関与しない日があることに気がついたらしい。
「それが、下ネタの会の日っと…って納得いくか!いや、ベートーベンが見張ってるのもそうだし、モーツァルトの理由もすでに変だけど、月に何度か警備が手薄になるって頭おかしいだろ⁉︎」
そんなの世の空き巣犯の絶好のカモではないか。こんなくだらない会のために学校全体が泥棒専用のゴキブリホイホイになっていると知った途端、即退会してやろうかな、と思ったらモーツァルトが一旦ゲームをポーズして俺に告げた。
「そう。手薄だからベートーベン君は外で警備するんだよ、この会がある日は。だから僕も安心して出て来られるんだ」
「って師匠がいうからじゃぁ、もう入会しちゃったほうがはやいかなってことでね。それでいいですか、近藤会長?」
「うむ。許可する」
ヤバイ。ツッコミどころが多すぎて脳の情報処理能力が追いつかない。
つまり、サトシ君はモーツァルトに弟子入りするために下ネタの会に入ると。
その時、周りで壁の花と化していた図書委員の半田先輩も俺と同様の疑問を抱いていたのか、特大のヤジを飛ばしだした。
「ちょっと待て!ゲームのために入会するやつなんていらない!」
「「そうだそうだ」」
先輩を皮切りに他会員達が吠える。
確かに幾らゲームのためとはいえわざわざ入りたくもない会に入るのは何か違うと思うし、サトシ君らしくもない。
珍しく常識的な事を告げる半田先輩達を見直そうかなとか考えていると、
「入会のためにゲームをするべきだ!」
「「そうだそうだ」」
案の定、意味の分からないことを話し出した。
まぁ、でも反対意見には違わないからいっかと自分の中で終止符を打とうとすると、サトシ君がまた突然発言をした。
「なぜですか?」
「ふざけているからだ」
どっちが?とツッコミたいが、サトシ君の理由が理由なので自粛。
「どうしてもですか?」
「……どうしてもだ」
執念深くここまでくると、半田先輩も強くは言えないのか語尾が少し弱まる。少し劣勢だが俺はもちろん反対だ。
「僕エロゲの知識もありますけど…」
「「マイブラザー。今日から下ネタの新たな境地を目指そうじゃないか!」」
「……」
やべぇ、なんも言えねぇ。
呆れて言葉も出ない状況とは正にこのこと。俺はその途端、悟りを開いた。
うん。きっと疲れたんだ。
きっと疲れたから、サクッと儀式を済ますサトシ君を見ても何とも思わないんだ。
だからさっきやった儀式とは内容が全く違っていてもこうして立っていられるんだ。
ハハ、俺は大丈夫だ。もうなんでもどーんと来いや。すでにいろいろと遅いしな。
現実逃避気味にそんな事を考えていると、近藤会長が俺たち二人の側に寄って肩に手を置いた。
「ようこそ。下ネタの会へ。我々は君たちを心から歓迎しよう」
こうして俺とサトシ君は本当の本当に無事に下ネタの会に加入することが出来た。
そして嫌でも知ることになる。これがまだただの序章であるに過ぎないということを。
あー、泣きたい。
気づいたかと思われますが章の名前を追加しました。トロはマグロの部位だからつまり、マグロにインする、と。この先はエロ賢い君たちなら分かるだろう。
キャラも相変わらずブレまくりですね。もう逆にそれをネタにしちゃいますかねw
……頑張ります。
最後に全国のモーツァルトとベートーベンファンの皆様。この度は偉大なる二人の音楽家を下ネタのために使ってしまい申し訳ありません。今後も彼らは登場するので、先に謝罪しておきますね。
前書き、後書き合わせて長文失礼いたしました。