表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下ネタの会  作者: 寺子屋 佐助
第一章 イン・トロ
15/26

第15話 穴を埋める問題にツッコむ

本日二回目の投稿。


シリアス回なので短めです。


ギャグのセンスは追求しないでね⁈

 皆さんは堪忍袋の緒が切れた経験はおありだろうか。

 地雷を踏まれて爆発したり、急に雄叫びをあげたりよく分からないけど、感情が暴走するあの感じ。

 そんな感情を俺は今胸に抱きながら、正々堂々とツッコミを入れていた。


「サトシ君の言うとおりだ〜!!!こんな下ネタ分からなさすぎる」


 サトシ君の清らかな疑問に便乗する形で異議を唱える俺は感情が暴れるまますっくと立ち上がるとそのまま黒板にビシっと指を突き立てた。

 すぐに高橋や服部が立ち上がり抗議しようとするも、最初に疑問を抱いていたのは確かだったようで思うように言い返せない。

 勝った、と心の中でガッツポーズを取った俺は次の瞬間、後方から飛んできた野次で口元を結ぶことを余儀無くされた。


「いいか、多田。フランツ先生が書いた解答はただの解答じゃない。一つ一つにドラマが詰まった物語の如き芸術なんだ」


 半田先輩の言葉に他のメンバーも加勢する。

 段々とエスカレートしていく野次に思わず頭を抱えこみそうになるも、その次の近藤会長の発言で辺りは一気に静寂に包まれた。


「静かに」


 なんだかとてつもないオーラを醸し出しながら会長は俺に告げる。


「いいかい、新人君。フランツ先生の解答は一見分かりにくいかもしれない。けれど、先生の解答には一貫してせいの行為に纏わる小ネタが含まれている。本来性に対する知識を有しているものは先生の解説で意味が分かるものだ。それが意味が分からないから、違うとわめく。君の行為には我々に対する敬意が感じられない。どうして偉大なるフランツ先生の前でそんな小さなことにばかり目を向けるんだい?君の男の部分はそんなに小さいものなのかい?ほら、悔しかったら言い返してみたまえ?わからない、とかくだらない理由ではなく正当な理由をつけて」


 うっと沈黙せざるを得ない説得力がそこにはあった。

 確かに俺は子供のように分からないからと喚き散らしていたのかもしれない。

 彼らの下ネタに対する深い愛情を感じ取れずにただざわざわと。

 そんな俺に、世間の常識や下ネタの知識に関する無知っぷりを晒す俺に、下ネタの会の会員達はうろたえることなく真っ直ぐに言葉を発していた。

 今思えば最初に下ネタの会に足を踏み入れた時から堂々と真っ直ぐに。

 あの時は頭から入った気がするがそんなの関係ない。

 俺はただこいつらの姿勢に甘えていただけなのかもしれない。

 下ネタとはくだらないものだ、という一点張りで俺はこいつらの情熱から目を背けていたのかもしれない。

 俺は間違っていたのかもしれない。

 あれっ?また熱くなってるぞ俺。

 特に何をされた訳でもないのにこの部屋の空気に感化されて。

 俺はこいつらの言い分を一旦呑み込んで心の中で整理すると、彼らに向けて言葉を発した。


「会長の言うとおりだ。俺は確かに子供のように分からないからとわめいていた」


 一瞬の間の後に俺は叫ぶ。


「でも奥が深い下ネタなんておもしろくない!!!どんだけ知識を詰め込んで発した下ネタでも誰も笑わなきゃ意味がないだろが!!お前らはそんな下ネタで本当にいいのか!!こんなんだから下ネタは世間に認められんのじゃ!!」


 皆さんは堪忍袋の緒が切れた経験はお有りだろうか。

 今、この瞬間。俺の中の何かがブチ切れると同時に俺の中の何かが一斉に解放された。


 パチパチパチ。


 すると、シューベルトを含む一部の方々が俺に拍手を送り届けると、辺りから波紋のように拍手が巻き起こった。

 どうやら、俺の魂の叫びは、彼らの情熱が俺の心に届いたように、彼らの魂へと届いたらしい。

 俺はその様子に何故だか冷静になってきた自分を認めて肩の力を抜いた。

 同時に何か重いものが、肩から降りた気がして俺は自然と胸を張りながら彼らを見下ろした。


「イイ新人を見つけましたね、つっきー」

「はい、彼はウチの新たな風となる可能性を秘めた男です。きっと我々下ネタに感化されたもの達とは違った観点から下ネタを進化させることでしょう」


 拍手の中で二人の会話は俺の耳の中には届かない。

 けれど、微笑ましく俺を見つめるあの暖かい視線には慣れなくて俺は照れ臭くなった。


多田英雄(ただひでお)君」


 会長が俺を本名を呼ぶ。

 拍手は鳴り止み、俺は正面から会長と対面する。

 会長はそのまま腕を広げると、俺に告げた。


「どうだい思いっきり話し合うというのは気持ちのイイものだろう。これからはそんなつまらない理由で言い争うのではなく、この会に入会して議論を交わさないか?」


 会長の勧誘に会員の皆様がハンカチとティッシュを用意する。

 どうやら俺が入会すると決め切って準備しているようだ。

 だから俺は彼らに告げる。


「お断りします」


 ふざけんな、多田!と聞き慣れた声が耳朶に触れるがそんな言葉は関係ない。


「言い争いをやめて参加する?なら、初めから入会しないで外から抗議した方が何十倍も楽だ」


 てめぇ!と、周りが湧き立つが知ったこっちゃない。

 俺は会長の得意げな顔に指を立てて言ってやった。

























「だからこんなくだらない会、正面から入会して正面から叩き潰してやる」


 こうして俺は下ネタの会に正式に入会することになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ