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探索者  作者: 羽帽子
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第07話:「アタシは魔法にしてみるよ!」

 お預けを喰らっている飼い犬のように期待の眼差しで神様を見つめている俺達に、神様はほんの少し苦笑を浮かべている。

 でも内心は俺達がここまで楽しみにしてくれていることに満足そうだ。


「さて、おぬし達への特典を付与する前に、あの世界の住人達の事を説明しておくべきじゃろうな」


 髭を扱きながら何やら考えている神様。


「あの世界にはおぬし達と見かけは変わらない人族、様々な獣の血が混じっている獣人族、職人気質の高いドワーフ族、それに生まれつき魔力の扱いに長けたエルフ族がおるんじゃ」


 獣人にドワーフにエルフ、まさにファンタジー特有の種族の名前が出てきた事でテンションがさらに上がっていった。

 アイラも瞳がキラキラ輝いている。


「どの種族にも共通しておるんじゃが、基本的に寿命はおぬし達の倍といったところじゃな、エルフ族なんかはさらに長寿じゃが……。あ、心配しなくても大丈夫じゃよ? ちゃんとおぬし達の寿命もサービスで倍近くに延ばしておいたからのぅ」


 あっさりとした口調で言いながらアイラをチラッと見る。


「特にお嬢ちゃんは元の年齢よりも成長してしまったので、ほんの少しじゃが寿命が縮まってしまっておったからこれで許して欲しい」


 頭を下げ謝罪の言葉を言う神様。

 アイラはいきなりの神様の謝罪にびっくりしている。


「あぅ……、神様、そんなこと全然気にしてなかったから顔を上げて? 神様に頭を下げられたらなんか罰が当たっちゃいそうだよぅ。むしろ寿命を延ばしてくれてサンキュー!」


 神様はそんなあたふた困った顔のアイラを見て少し安心したようだ。


「あとな、あの世界の住人は青年期の期間が異様に長くなっておるんじゃ。あの世界で生きていくにはその方が都合が良かったからのぅ。もちろんおぬし達の身体もそうしておいたぞい」


 さらりとそんな事を付け足してくる。

 どうやら気づかないうちに俺達の身体はもうすっかり異世界仕様に作り変えられていたようだ。

 俺達にとってはプラスの変化ばかりなので素直に感謝しておこう。


「それでのぅ、次はスキルについてないじゃが、あの世界の行動はほとんどがスキル制なんじゃ。ここで問題なのが、未取得のスキルをポイントを使って簡単に取得するということが出来ないと言うことなんじゃ。ポイントが使えるのは取得した後じゃな」


「うん? つまり剣を使いたいから剣スキルを取ろうとしてもポイントでは取れないってこと? ポイントってのは取得したスキルをさらに上げる時に使用するって感じなのかな?だとしたらどうやったらスキルを取れるんだ?」


 小説なんかではあっさりと凄いスキルがバンバン取得できて主人公無双! ってのが多かったのでちょっとこの先が心配になってきた。

 アイラも少しだけがっかりした顔をしている。


「まぁ、戦闘スキルに関しては特典として一つだけ付与することになっておるからそれ程心配はいらんじゃろ。それに他にも特典として『スキル取得速度UP』と言うのも付けるつもりじゃ。他の者より10倍の早さでスキルを取得できるはずじゃよ」


 ニコニコ笑いながら得意気に言ってくる神様。


「まぁ、細かい所は実際に経験して身に付けて欲しいんじゃ。わしが全て教えるのもつまらんじゃろ?」


 出来ればあるかもしれない裏技も含めてもっと教えて惜しかったが、そこまで期待するのは贅沢か。


「さて、おぬし達が一番気になってるであろう特典の話なんじゃがな?」


 俺とアイラは神様の言葉に思わずにじり寄っていく。

 神様はそんな俺達に内緒話でもするかのように顔を近付けた。


「まずはスキルに関する特典なんじゃが、先程も言った戦闘スキル、スキル取得速度UP。それに、武器スキルを選んだ場合は身体強化、魔法の場合は魔力操作のスキルを付与するつもりじゃ。他には特殊な鑑定スキルに生活スキルじゃな。どれもあると便利じゃぞ?」


 なんかいろいろ盛り沢山な特典みたいだな。

 隣のアイラも予想外だったのかちょっとびっくりしてるみたいだが、気になったことでもあったのか質問していた。


「えと、特殊な鑑定スキルっていうのは? 普通のじゃないの?」


 優秀な生徒に満足している教師のように嬉しそうに目を細める神様。


「良い所に気が付いたなアイラよ。普通の鑑定は武器や防具などのアイテムの種類しか鑑定できないんじゃが、お嬢ちゃん達に付与する鑑定はもっと詳しい情報が分かるし、なんと人や魔物にも有効なんじゃよ。相手のレベルや取得スキルなんかが判ると便利じゃろ?」


 何だかとんでもないスキルのような気がするのは気のせいだろうか?

 アイラは神様の説明に満足したのかうんうん頷いている。

 生活スキルってのも気になったけど、多分いろんな小説とかに出てくるようなちょっとした火や水を出せるスキルなんだろうと予想。


「そしてスキルポイントじゃが、他の者には10ポイント付与なんじゃが二人にはさっき言ったように特別に20ポイントプレゼントじゃ!」


 ドヤ顔の神様。

 先程言っていた特別加算を忘れられてなかったのでちょっと安心だ。


「次に、実はこっちの方が本命なんじゃがな? ボーナススキルと言うのも用意しておいたんじゃ。ほら、あの世界の者達の能力の底上げをして欲しいと話したじゃろ? それに関連するスキルじゃ」


 どうやら今までのはほんのオマケみたいなものだったらしい。

 更にこれ以上何か貰えるみたいだ。

 しかもかなりのチートスキルっぽい。これは期待できそうだ。

 内心小躍りしたくなるのをぐっと押さえ神様の言葉に耳を傾ける。


「迷宮探索に役に立ち、尚且つPTパーティーメンバーの能力底上げができるようにといろいろ考えたんじゃよ。これはボーナスポイントを消費して覚えるスキルなんじゃが当然おぬし達専用でな、あの世界には本来は存在しないスキルじゃから出来る限り信頼できるPTメンバー以外には内密にして欲しいんじゃ」


 確かに内容にもよるがバレたら最悪異端扱いされて殺害ってパターンもありうる。

 十分注意が必要だろう。

 真剣な顔のアイラ。彼女もどうやら同じ事を考えてたらしい。

 俺達の表情に満足したのか神様が話を続ける。


「スキルポイントやボーナスポイントに関しては、最初に付与するのとは別にレベルUP毎にも加算されていくはずじゃ」


「で、肝心のボーナススキルなんじゃが、簡単に説明すると大まかに『獲得経験値UP』『HP、MP回復速度UP』『各ステータスUP』の三つじゃな。これはおぬし達だけじゃなくPTメンバーにも有効じゃ。あまり多すぎても世界のバランスが崩壊する恐れもあるし、これくらいが妥当じゃと思うんじゃよ」


 それだけでも十分チートな気もするが、逆にそれくらいしないといけないくらいあの世界の住人の能力の低下が深刻なのだろうかと心配になってしまった。


「さて、今言ったスキルや能力をおぬし達に付与するから、とりあえず戦闘スキルを決めてくれ。剣でも槍でも大抵の武器スキルはあるはずじゃし、魔法も火、水、風、土、光から選ぶんじゃ」


 神様の言葉に真剣に悩みだす俺とアイラ。


「うーん、どうしよう? シュンはもう決めてるの?」


「んー、悩むなぁ……。普通に考えたらオンラインゲームで良く使ってた剣なんだけど、片手剣か両手剣でも悩むし、せっかくなんだから魔法にも興味がある……」


 この先の人生にも大きく影響を与えそうだったので必死になって頭を働かせて考えてみるが、……考えれば考えるほど混乱してくる。


「あー! もう片手剣で良いや! なんかこれが俺には一番しっくりくるし。盾スキルとかは地道に取得するかぁ」


 考えすぎて頭が痛くなってきたので半ば投げやりに決めてしまった。

 そんな俺に苦笑しているアイラ。


「アタシは魔法にしてみるよ! 火が良いかな? 武器なんて使ったこと無いし、それに……あまり近づかなくても攻撃できそうだし……」


 最後の方は小声になってしまっていたが彼女も無事決まったようだ。

 俺のアイラのイメージは戦乙女ヴァルキリーって感じだったので、てっきり槍かな? と思ったがどうやら接近戦は嫌なようだ。

 

 神様は俺達の言葉に大きく頷くと、何やら呪文を唱えながら俺とアイラに向かって杖を振った。

 すると俺達の身体が一瞬だけ光った。


「『ステータス』と念じればステータス情報が頭に浮かんでくるし、『スキル操作』と念じればスキルポイントで取得スキルを強化できるぞい。ボーナススキルなどは後でゆっくり決めた方が良いじゃろう。『ボーナススキル操作』で取得できるはずじゃ」


 神様が言う通りに『ステータス』と念じてみる。

 すると何やら頭の中に浮かんできた。


『名前:神城瞬

 種族:人族

 レベル:1

 取得スキル:片手剣レベル1・身体強化レベル1・生活・鑑定・スキル取得速度UP』


 非常にシンプルな表示にちょっと拍子抜け。


「ステータスってHP、MPとか能力値は表示されないの?」


 そんな素朴な俺の質問にあっさりと答える神様。


「能力はその時の体調や気分によっても微妙に変化するから数値化するのは難しいんじゃよ。普通に歩くだけでも変化するしのぅ」


 そんなもんなのかと無理やり納得させてみる。

 アイラも微妙な顔をしてたが何も言わなかった。

 一応『スキル操作』『ボーナススキル操作』も確認してみる。

 スキルポイントが20、ボーナスポイントが100あるのを確認するだけに留めておいた。

 ボーナススキルが多い気がしたが俺とアイラだけ特別に加算されたのだろう。


「それじゃ、最後に餞別を贈っておぬし達をあの世界に送るかのぅ」


 どうやら餞別までくれるようだ。



読んでくださりありがとうございました。

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