第53話:「可愛がってくださいね~?」
「あ、エミリー。お湯は俺が持つよ」
クゥちゃんの店で服を買ったついでに薬屋でも『毒消し薬』の買い足しをして宿屋に戻ると、ちょうどエミリーがお湯の入った桶を両手に2つも持ってヨタヨタと階段を上がろうとしている所だった。
「シュンさんお帰りなさ~い。ありがとうございます~!」
エミリーから桶を受け取り一緒に部屋に向かう。
まだ両親が戻ってきていないのでちょっと忙しそうだ。
「これでもまだ忙しい時間帯じゃないから助かってるんですよ~」
それでも俺の身体を拭いたりする時間は無いらしくしょぼんとしてしまった。
そんなエミリーに『スライムゼリー』を渡すときょとんとした顔。
「これで夕食の『デザート』を作って貰いたいんだけど大丈夫かな?」
「これって『スライムゼリー』ですよね~? それなら『リンゴゼリー』を作ってみますね~!」
「6つだとどれくらい作れそう?」
「それだと、6人前作れますよ~」
「それなら、俺とドルチェとエミリーはもちろんとして、後はエミリーの家族の分にしようか」
エミリーは自分だけではなく家族の分もあるので少し恐縮してしまっていたが、「いつもお世話になってるから受け取って欲しい」と説得すると満面の笑みで抱き付いてきた。
本当はセリーヌさん達の分も欲しいところなのだが、数が足りないので、次回おすそ分けしよう。
デザートはあまり食べる機会がないらしく凄く嬉しそうだ。
ベッドで横になっているドルチェも「じゅるり」と涎を垂らしていた。
名残惜しそうに俺の身体を拭きたがっていたエミリーが仕事に戻っていくと、横になっているドルチェの安否を確認する。
毒消し薬がかなり効いているのか顔色がすっかり良くなっているので、もう大丈夫だとは思うが今日一日は様子見だ。
「ゼリー……楽しみ」
俺の心配をよそに心はすっかり夕食のデザートの事でいっぱいみたいだ。
買ってきた予備の服を渡すと少し恥ずかしそうに受け取って何か言いたそうな顔だ。
「どうしたの?」
「我侭言っても……良い?」
珍しく殊勝なドルチェの態度に驚く。
もしかして迷宮での事を気に病んでいるのだろうか?
「ドルチェらしくないな、何でも言ってごらん?」
俺の言葉にちょっと照れくさそうにしている。
こんなドルチェの姿は初めて見るので何だか新鮮だ。
「もう一度……拭いて欲しい」
「何だ、そんな事ならお安い御用だよ」
「今日2回目だから……ちょっと恥ずかしい」
横になったまま「……脱がせて」と甘えてくるドルチェの服を迷宮の時と同じように一枚一枚脱がせていく。
火傷の痕もすっかり消えていた。ボーナススキル様様だ。
全裸になったドルチェの身体にお湯を絞った手ぬぐいを当てると、くすぐったそうに身を捩る。
隅々まで綺麗に拭いていくとどんどんお互いの息が荒くなっていく。
彼女の大事な所などはもうびしょ濡れだった。
「もしかして迷宮で拭かれた時も感じちゃってた?」
「好きな人に拭かれた……当たり前」
真っ赤な顔でそっぽを向いてしまったドルチェがあまりにも可愛くて、俺の理性も限界を超えてしまいそうだった。
午後3の鐘が鳴る前にゼイルさんとマーサさんが孤児院から帰ってきた。
ミルとミナの事が気になったので聞きに行くと、2人共あの姉妹の事がかなり気に入ったようなので俺も嬉しかった。
その足でそのまま王宮に行って2人を雇う申請を出してきたそうだ。
いろいろ審査もあるみたいなので結果は5日後に出るらしい。
「やっぱりシュンさんにお願いして良かったわぁ」
マーサさんが手放しで褒めてくれた。
ゼイルさんはすぐに厨房に行ってしまったが、マーサさんの話によると俺の事を褒めてくれていたみたいだ。
まだミル、ミナ姉妹に会っていないエミリーとターニアさんも楽しそうにはしゃいでいた。
その時にちょこっと話題になったのだが、もしかしたらターニアさんはバードンさんの家に住み込みで家事のお手伝いをしに行くかもしれないそうだ。
それを話すターニアさんは凄く幸せそうだった。
エミリーも何かを期待する眼差しで俺の事を見ていた。
ドルチェの体調もすっかり良くなり夕食を取りに食堂へ行くと、シルビア達がすでに居たのでちょうど空いていた隣のテーブルに腰を下ろす。
いろいろと今日あった出来事を報告し合っているうちに、話題はポイズンスライムの事になった。
シルビア達も俺達が体験した毒の危険性について真剣に耳を傾けている。
彼女達がどうやって倒したのか参考になればと思い聞いてみた。
「すまない。ワタシ達の時は弓での遠距離攻撃であっさりと倒してしまったので参考にはならないと思うぞ。動きが遅いのでただの的だった」
遠距離攻撃の手段を一切持たない俺達には全く参考にならないと思っていたが、ドルチェが何やら真剣に考え込んでいる。
小声でブツブツと呟いているので何を言ってるのか分からなかったが、シルビアの話が何かのヒントにはなったようだ。
今日もエミリーの美味しい手料理を堪能し、デザートの『リンゴゼリー』に舌鼓を打っているとシルビア達が羨ましそうにこちらを見ていたので一口おすそ分けしようとしたら半分以上も食べられてしまった。
「ワタシ達も売らずにエミリーに作って貰えば良かった」
シルビアも素材は全てギルドに売らなければいけないと思っていたらしく、俺がセリーヌさんから聞いた話をするとかなり悔しがっていた。
食事を終えて部屋へと戻る。まず真っ先にやる事は装備の手入れだ。
命を預ける大事な装備なのでこれを欠かすわけにはいかない。
簡単な手直しならドルチェがやってくれるのでかなり助かっている。
やはりPTに『鍛冶師』が居るのは凄く大きい。
部屋の中が暗いのでドアは開けっ放しだが、エミリーが角部屋を確保しておいてくれたので覗かれたりする心配は無かった。
この宿屋でも昔は蝋燭や火を使ったランプを希望者に貸し出していたのだが、今は火事の心配などが必要ない『魔具製ランプ』が発明された事によって、危険性が高い火を使う照明器具は使わなくなったそうだ。
この発明によって火事の発生件数が段違いに減ったのだが、当然貴重品なので貸したりする事は出来ないらしい。
その割にはエミリーは俺の部屋に来る時に毎回持参してるのだが、もう今更と言った感じなので『宿屋の娘』の特権だと割り切ることにしていた。
そのエミリーが午後4の鐘が鳴ってしばらくすると自分用のお湯が入った桶を持って部屋にやってきた。
昨夜の約束もあるので今日はたっぷり可愛がってあげるつもりだ。
まずはドルチェと2人がかりでエミリーの身体を拭き清めていく。
「いっぱいい~っぱい、可愛がってくださいね~?」
久しぶりのエミリーの裸に俺もすっかり興奮してしまっている。
先程ドルチェを拭いた時にお預けを喰らっていたので尚更だ。
ランプの光に照らされてエミリーの濡れている部分がはっきりと見えていた。
「エミリー……濡れ濡れ」
ドルチェが自分の事を棚に上げてエミリーの羞恥を煽っている。
赤面しているエミリーをベッドに寝かせて左右から襲い掛かった。
何だか魔物を襲う時のコンビネーションみたいだと思ってしまったのは内緒だ。
久しぶりのエミリーの身体を隅々まで堪能した俺にドルチェが囁いてくる。
「ぼくにも……スキル取得の……ご褒美」
もちろん今度はエミリーと2人がかりでたっぷりとドルチェに『ご褒美』をプレゼントした。
読んでくださりありがとうございました。




