第44話:「……難しい顔、してる?」
『名前:神城瞬
種族:人族
レベル:24
取得スキル:片手剣レベル3・身体強化レベル2・精力強化レベル1・生活・鑑定・スキル取得速度UP』
「……何か増えてるし」
朝起きたらスキルが増えていた。
隣のベッドには抱き合うようにして寝ているドルチェとアイラ。
俺は昨夜2人かがりで攻められまくった後、いろんな体液の染みこんだヒンヤリするもう1つのベッドで1人寂しく寝る事になったので少し寝不足だ。
アイラは結局この宿屋に泊まる事になった。何でも孤児院で「今日は泊まっていっぱい甘えてこい」とダリアに言われてたそうだ。
下の階に1人部屋を借りたが、当然のようにこの部屋に入り浸っていた。
昨夜あれだけ2人に搾り取られたのに、朝起きて隣のベッドで全裸で寝ている彼女達を見てムラムラしている自分に「俺ってこんなに性欲強かったかな?」と疑問に思いステータスを調べてみたら見事にスキルが増えていたのだ。
「最初『精神強化』だと思って、心が打たれ強くなったのかな? って思ったら『精力強化』だもんなぁ。……喜んで良いのか判断に迷うな」
あのバードンさんですら持っていないスキルだ。
今更ながらに神様から貰った『スキル取得速度UP』の凄まじさに思わず溜息が漏れてしまった。
ハーレム物の小説とかでは偶にこうしたエッチ系のスキルが登場したりしていたが、まさか自分が実際に取得する事になるとは思わなかった。
女の子の方から求められる事が多かったが、それでもノリノリでエッチしまくっていた数日間を思い出す。
今思い返すと、やればやるほど性欲が増してのめり込んでる感じだった気がする。
それは女の子達にも言える事かもしれない。
エミリーやドルチェ、それに新たにアイラまでもが覚え始めた快楽にひたすら溺れているみたいだ。
まるで誰かに「ハーレムを作れ」「沢山の女を孕ませろ」と言われている気分がしたので、一度心を落ち着かせようと水を一杯飲む。
「まさか……神様の狙いって……!?」
「シュンにぃ、おはよう。……難しい顔、してる?」
俺が朝っぱらから考え込んでいると、起きたばかりのドルチェが小首を傾げて俺を見ていた。
「あ、おはよう。今日は昨日話した通りここの迷宮に行ってみるつもりだけど、体調はどう?」
「……大丈夫。ベッドに運んでくれたの……シュンにぃ? ありがと……」
ドルチェの顔色を見ると、クタクタになって寝てしまった2人を綺麗なベッドでゆっくり寝かせてあげたのは正解だったようだ。
昨日と違って疲れが残っていないみたいなので、これなら迷宮に入っても大丈夫だろう。
特にアイラはダリア達から預かっている形だからなおさら疲れを翌日に残すわけにはいかなかった。そのアイラはまだ気持ち良さそうに寝ている。
まだ朝食には早い時間なのでもう少し寝かせておいてあげよう。
昨日怒りが少しだけ収まってきたシルビア達と話し合った結果「明日には帰るんだからそいつ等の事は放っておこう」と言う話になった。
アイラも「聞けば聞くほど頭にくるね!」と怒っていたが、迷宮探索に熱意を向けてくれるなら結果的にはこの世界の役に立ってくれるかもしれない。
もし、彼らが暴走してしまったのなら俺達が止める覚悟だ。
ラスボスが『同類』なんて事態にはなって欲しくないのだが……。
「シュンにぃ……また難しい顔……してる」
いつの間にか目の前に来ていたドルチェが心配そうに俺の目を覗き込む。
「ごめんごめん、大丈夫だよ」
おでこにキスをして頭を撫でてあげると、やっと安心したのか隣に座って寄り掛かってきた。
「今日はドルチェに一日でも早く『槌スキル』を取得して貰いたいから、ドルチェが戦闘の中心になると思うけどいけそう?」
「……頑張る」
鼻息を荒くして気合を入れているドルチェ。
その向かいのベッドではアイラがモゾモゾと動き出していた。
戦乙女様のお目覚めだ。
「それにしても、その人達に会ったのがソルじゃなくて良かったよ!」
俺達は今、迷宮行きの乗合馬車に乗っていた。
前を行く馬車にはシルビアのPTとダリア達が乗り込んでいる。
6人乗りなので、残った俺達3人は次の馬車だ。
もう1PT馬車の待合所に居たが、4人PTなので別の馬車で行くらしく一緒には乗らなかった。
昨日の一件があったので、今日は迷宮の外では全員一緒に行動する事で話がまとまっていた。
もしまた絡まれたとしてもこちらの人数が多ければ向こうもそうそう無茶はして来れないはずだ。
「ソルっていまいち掴み所が無いんだけど、どんな人……精霊なの?」
「アタシもそんなに親しくないから良く分からないけど、一言で言うと……日本のアニメで見た……何だっけ? あ、『ツンデレ』って感じ!」
言葉が見つかったアイラが何故か自慢げにうんうん頷いている。
そんなアイラにドルチェが「つんでれ……?」と聞き返す。意味が分かっていないみたいだ。
「うん、ツンデレ! 本当はリメイアで一番北にある雪に覆われた街に行きたがってるんだけど、でも、カーラ様の傍に居たいから王都から離れないみたい!」
「それって、アイラの妄想なんじゃ?」
「ち、違うよ! あれは絶対にそうだよッ! カーラ様を遠くから見つめるあの目は絶対にカーラ様に恋してる目だよ!」
どうみてもアイラの妄想にしか思えないけど、アイラに指摘された時のソルの怒り様を見るとあながち間違いでもないのだろうか?
「それよりも、アタシはバードンって人が気になる! ダリア達のご主人様だったんだよね?」
「バードンさんかぁ~。アイラの真似をするわけじゃないけど、一言で言うと『ダリアみたいな人達を量産している人』かな?」
俺の説明にドルチェが「ブフッ」と噴き出した。あまり面識の無いドルチェに伝わったみたいなので間違ってはいないはずだ。
「育成マニアみたいな人だね。もちろんバードンさん自身もかなりの使い手みたいだけど、それ以上に孤児奴隷を積極的に買って期間いっぱいまで育てて自立させてるらしいよ。それが評価されてるのか、わざわざ国王に呼ばれて専属探索者になったりしてる」
「へぇ~、いつか会ってみたいな! 専属って事はしばらくはダーレンに居るんでしょ? ダリア達も会いたいだろうし、絶対に行くね! シュンもいるし……」
最後の方は小声になってしまったが、アイラが遊びにでも良いからダーレンに来てくれるのは大歓迎だ。
エミリーを紹介したら修羅場になる可能性もゼロじゃないけど、きっと大丈夫な……はず。
ドルチェが「……面白くなりそう」とニヤニヤしてたので頭にチョップ。
その後も和気藹々と話してるうちに1時間ほどで王都ファーガンが管理する迷宮にたどり着いた。
シルビアやダリア達が待っていてくれたのですぐに駆け寄る。
「どうやら30階層まで突破しているみたいだな。アイラ、我々はとりあえず10階層から潜ってみよう」
「ワタシ達は昨日の続きをしたいから1階層からやり直しだ。今日中に10階層にたどり着くぞ」
皆それぞれ気合が入っている。俺達も負けていられない。
ドルチェのスキルの事もあるが、あと1レベル上がれば『身体強化』を上げる事が出来るので最低でもそれだけはクリアしておきたい。
ドルチェとお互いの装備を確認し合って準備完了だ。
「それじゃ……行こうか、ドルチェ!」
「うん……シュンにぃ」
読んでくださりありがとうございました。
次回は久しぶりの迷宮探索です。




